【映画#119】「鬼龍院花子の生涯」『おかえり横道世之介』より
こんにちは、三太です。
5月最終週となりました。
今週のはじめは大きく天気が崩れるようなので、気をつけていきたいと思います。
実は今週から勤務校に教育実習生が来ます。
自分が三年間担任をした元生徒で、その点かなり楽しみにしています。
良い実習になるように精一杯サポートしていきたいと思っている今日この頃です。
では、今日は『おかえり横道世之介』に出てきた「鬼龍院花子の生涯」を見ていきます。
当初は『おかえり横道世之介』に出てくる映画は7作としていたのですが、前回紹介した「吉原炎上」の記事で「鬼龍院花子の生涯」と「陽暉楼」も映画としてカウントすることにしたため、全体としては9作となりました。
そのため、9作のうちの2作目として今回見ていきます。
基本情報
監督:五社英雄
出演者:鬼龍院政五郎(仲代達也)
松惠(夏目雅子)
花子(高杉かほり)
歌(岩下志麻)
上映時間:2時間25分
公開:1982年
あらすじ
大正から昭和にかけて、土佐・高知で繰り広げられる侠客一家の物語。
タイトルにある花子よりも、その父政五郎、そして義姉の松惠がメインで描かれます。
政五郎は一代で鬼龍院一家を興したヤクザの親分。
家には女房の歌に加え、妾二人を囲っています。
そんな家に養女として貰われてきたのが松惠です。
物語を駆動するのは一つにはヤクザ者同士の抗争です。
その中で政五郎が奪ってきた女、つるとの間にできた子どもが花子です。
もう一つは鬼龍院一家の女たちの戦いです。
それらが物語を推し進め、鬼龍院一家は最後のときを迎えるのでした。
映画の始まりは花子の死から始まり、過去の回想につながる仕掛けになっており、終わりには花子の死に戻ってきます。
典型的な額縁構造となっています。
設定
・ヤクザ者
・女同士の争い
・額縁構造
感想
酒と性、そして暴力とが匂い立つような映画でした。
そういう意味で言うと吉田修一さんの小説(例えば『長崎乱楽坂』のような)を映像として見ているような感じもありました。
映画の終盤、松惠が放つ「なめたらいかんぜよ」がかっこよすぎでした。
松惠は政五郎の実の子どもではないですが、実の子どもの花子以上に侠客としての器があったように思います。
政五郎は親分ということで女性への対応をはじめ、本当にやりたい放題です。
ただこの鬼政は怖いだけじゃなく、人間味があるところが人を惹きつけるんだと思います。
松惠の願いを聞き入れ、学校に通わせたり、花子ができたことを跳んで喜んだり、敵対関係にあった土佐電鉄のストライキの首謀者に感化されたり。
声も大きく、教養もない感じもするのですが、人間的魅力で周りを惹きつけます。
むしろ政五郎以上に侠客らしいのが、妻の歌です。
立ち居振る舞いや松惠への接し方が怖すぎます。
明言はされないのですが、この歌も悩んでいたことが映像を通して伝わってきます。(妾のことや、子どものこと)
そういったあたりの映画としての見せ方がいいなと思いました。
途中、闘犬を行うくだりがあります。
土佐ならではだなと思いましたし、今ではなかなか見られないものだと思うので珍しく感じました。
土佐をゆく男浴衣に覗く龍
その他
・ウィキペディアより
→宮尾登美子原作。宮尾登美子最初の映像化作品。
→本作で松惠を演じた夏目雅子は17歳のときにヴィットリオ・デ・シーカ監督の映画「ひまわり」を見て衝撃を受け、ソフィア・ローレンに憧れ本格的に女優を目指すようになった。
『おかえり横道世之介』内の「鬼龍院花子の生涯」登場シーン
「鬼龍院花子の生涯」が出てくるのは、「吉原炎上」と同じく、物語の序盤、世之介がパチンコに通っているシーンです。
映画名が全て出るわけではなく、タイトルの一部として出てきます。
五社英雄監督の代表作として出されています。
ここで「知らない?・・・」の会話をしているのは世之介です。
世之介の映画への造詣の深さが窺えます。
世之介に吉田修一さんが乗り移っていますね。
吉田修一作品とのつながり
・ヤクザの盛衰を描くという点では、『長崎乱楽坂』や『国宝』とつながる部分がある。
以上で、「鬼龍院花子の生涯」については終わります。
「なめたらいかんぜよ」の元祖を知ることができ良かったです。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。