映画感想『君たちはどう生きるか』
*この文章は2023年7月にAmebloで投稿したものを加筆修正しています
*ネタバレがあります
ムスメは「面白かった!」と言っていた。
難しい! とワタシは思った。
きっと、ワタシみたいに脳が衰えていると理解が追いつかないのだろう。
冒頭、火事のシーンが恐ろしい。
火の粉の色、押し寄せる熱風、叫びと混乱。
そこから場面転換して、一見のどかな、街をゆく人々の姿。
明確な時代設定は説明されないが、戦争といったワードは出てくるので、戦時下というのは分かる。
一見、過去の時代設定のようだけれど、おや、と思う箇所もあって、この作品が問いかけるのは、いまに迫る不穏な足音、という気もする。
好きな雰囲気だ、と思う。
宮崎駿監督作品は、もう少し描いても良さそうなのに、敢えて避けたように感じる場所がある。
『となりのトトロ』のさつきとメイのお母さんのことだったり、『風立ちぬ』で主人公が尾行されるくだりだったり。
今回はさらにそれが加速している印象だった。
ジブリ作品の圧倒的に美しい色調とか、
美味しそうな食べ物とか、
可愛らしいキャラクタは登場するが、
それは一種のオブラートで、
今回もやっぱり、見る側の知識や考え方を試されている気分。
テーマに関してももちろんのこと、
木々をこんなふうにきちんと見たことがあるか、
周りの人間をよく見ているか、
何が起ころうとしているか真剣に考えているか、といったことも。
ストーリー展開も面白いパターンだと思う。
見る側の期待として、追い詰められた主人公のもとに現れる動物には、癒しや手助けをしてほしい。
それなのに、全然違う。
事前情報がない状態で見ているから先が読めないし、いろいろと、背景や細部がわからない。
一つのシーンに、二重三重に意味が隠されている感じがする。
展開は現実とかけ離れているのに、それらが常に生々しくて、ギクリとする。
次々と世界の変わる、スピードはゆるやかだけど作りの凝ったアトラクションに乗せられて、必死に考えているうちに終わるみたいな気分。
たくさんのなぞなぞと、宿題をもらったような気持ちになる。
一回で解けて終わってしまったらつまらない、ということにしておこうと思う。
ちなみに、マンガ版に登場する「コペル君」は出てきません。
ムスメも事前情報なく映画を見ていたので、途中まで、「コペル君いつ出てくるんだろう?」と思っていたそうです。
…合掌。