あらゆる”物語”のおともに_『御伽草子の精神史』島内景二【読書感想】
著者、島内景二。
1988年、初版発行。1991年、新装第一刷発行。
昔話でも有名な《浦島太郎》の中で、乙姫はどうして浦島太郎に玉手箱を渡したんだと思う? みたいな話から始まる(もっときちんとした文章です)。
昔のお話ってそういうもの、説教臭くてよくあるパターン、現代だとちょっと理解しにくい、みたいに雑に捉えていたことを反省する。
もう、歌舞伎を含めて、あらゆる物語を見るヒント満載の本だった。
御伽草子とは、広義には室町時代から江戸時代初期にかけて創作されたすべての物語草子のこと、と本書では説明されている。
この本では狭義の御伽草子として、広義の御伽草子の中から8篇を取り上げる。
8篇は、鉢かづき、御曹子島渡り、七草草紙、さざれいし、二十四孝、一寸法師、浦島太郎、酒呑童子。
これらについて、主に”如意宝”と”話型”というキーワードで見ていくことで、文学の中に当時から今も流れる普遍的な性格、伝えようとしてきたものが見えてくるのではないか、というものである。
”如意宝”は物語の中で主人公が獲得する神アイテム、”話型”は展開パターン、というところだろうか。
主人公が未熟な状態から完全へと移行する中で現れる、四天王(酒呑童子)、四季が同時に存在する部屋(浦島太郎)、古くは『源氏物語』で光源氏が建てる四季の屋敷、さらに4の倍数『八犬伝』の意味だとか。
目と目で睨み合うのは、宝の威力比べの意味を持つ、というくだりでは、わたしは歌舞伎の市川宗家の芸「睨み」とか、『妹背山婦女庭訓』の天智帝、『合邦』の俊徳丸を思い浮かべたり。
姫が恋と家の板挟みになる”話型”もあって、まさに時姫と八重垣姫!と思ったり。
歌舞伎や浄瑠璃よりも大きな枠で捉えた”物語”のパターン、当時の宗教の考え方といったもの。
これは自分の好きな歌舞伎だけを考えて予習していたら、なかなか目に入ってこない。
この本に出会ったことで、これから歌舞伎に限らず、さまざまな物語に「そうだったのか!」を見つけられそうな気がする。
お読みいただき、ありがとうございました。