ヒーローはどこにいる? 映画『ピンポン』(2002年公開)/アニメ『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)
ヒーローはきっと、努力した人の前にしか現れない。
そんな気がする。
天才少年「ペコ」、ストイックな元いじめられっ子「スマイル」、卓球の権化「ドラゴン」。
ペコは自分のために、スマイルは自分以外のために、ドラゴンは周囲が期待する自分の姿のために卓球をしている。
他の登場人物も、それぞれ違う思いや背景を持っている。
生い立ちも環境も違う者たちが、卓球というひとつのルールの前で向かい合う。
映画『ピンポン』を初めて見たのはDVD。
知人から、「原作もいいが、映画もいい。ARATA(井浦新)がカッコいいから観て」と強引にDVDを貸された。
もう20年も前のことだ。
クールなスマイルのキャラクタと、ARATAの物静かで存在感のある芝居がぴたりとはまっていた。
高校の卓球部だけど俳優は全員完全に成人。
窪塚洋介はじめ強烈な配役だ。
CGによる派手な試合シーンもあり、ともすれば現実味ゼロになりそうだが、江ノ島や鎌倉の落ち着いた風景によって全体にほどよい懐かしさが出ている。
2014年にテレビ放送された『ピンポン THE ANIMATION』では、登場人物の背負ったもの、見ているものがより深く描かれている。
映画でもキーワードとなっていた「ヒーロー」見参の瞬間が、より鮮やかに感じられる。
実写映画では中国から来た孔(こん)は途中敗退で出番が終わってしまうが、アニメではその後も詳しく描かれ、ドラゴンと対照的な孔の環境や性質がストーリーの厚みに繋がっている。
映画ではあまり触れられないが、アニメでは高校生活を終えたその後も描かれる。
タイトルは『ピンポン』ではあるが、スポーツにかける情熱や激闘で終わらず、与えられた能力、環境のなかでそれぞれがどう生きるか、という話になっている。
映画でもアニメでも、登場人物それぞれが抱くヒーローについて、全部は描かれない。
でも感じるのは、ヒーローだって努力しない人間の前には現れない、ということ。
そんなことを思いながら、卓球の世界選手権の中継を見ていると、どの選手も尊く、眩しく感じられる。