春のような温かさがいつもある学校に… 「すごいね。よかったね」いや、そういえる君がすごいんだ 〜心の宝物73
🌷ぜったいにのれるようになるよ
山に囲まれた小さな学校
3年生の運動会のメイン種目は一輪車によるパフォーマンス。当日に向けて練習にも熱が入ります。低学年時には、学校の一輪車を使うことができなかったため(心の宝物66に既述)、急ピッチで習得を目指す子には大きなプレッシャーがかかります。
まず乗ることができるように。毎日、懸命の練習が続きます。
彼もそんな一人でした。
休み時間には、真っ先に外に出て練習しています。
おうちの方にお願いして、自分用の一輪車を買ってもらい、平日も休日も、時間があれば練習しているとのこと。
当日にかける決意と、不安の大きさが伝わります。
何とか成功してほしい。傍らで、練習の手伝いをしながら、念じる日々でした。
🌷すごいね。よかったね
彼は、運動に関しては器用な方ではありませんでした。一輪車の練習スペースでは、他の子が、平行に配置された二つの柵から手を放し始めています。
しかし、彼は、支柱をしっかりと握りしめ、ぐっと漕ぐと下半身だけが前へ行って、のけぞるようにバランスを崩します。腕力で態勢を戻す。また漕ぐ、またバランスを崩す。そんな試行錯誤を必死で繰り返していました。
柵から卒業した子は、私や上級生が手をひいたり肩を貸したりして、長い距離に挑みます。ある子が私の肩から手を放し、数メートル自力で漕いだ時のことです。
「○○くん、すごいね!ひとりで乗れるようになってよかったね」
柵のところへ戻ってきたその子に、彼が笑顔で声を掛けました。
皮肉でも何でもなく、共に頑張る仲間の成功を、わがことのように喜ぶ気持ちがストレートに伝わる素敵な笑顔でした。
自分も早く乗れるようになりたいだろうに、置いていかれている自覚も焦りもきっとあるだろうに。
すごいのは君だよ。同じ状況におかれて、君のような行動を選択できる人がどれほどいるだろう。私には自信がないよ。一輪車に乗れていなくても、自分を誇ってほしい。
優しく温かな心と声を誰かに届けられる君を尊敬する。
そんな思いでお伝えしました。
かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。
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