社会課題に向き合う会社のデザイナーが、ダンスと共に世界に伝えたいこと#02
前回に引き続き、ROUND.3から、LIFULL ALT-RHYTHM21-22シーズンの
楽曲ジャケットについてアートディレクターの森がお伝えしていきます。
ぜひ前回「社会課題に向き合う会社のデザイナーが、ダンスと共に世界に伝えたいこと#01」も併せてご覧ください!
ROUND.3 Silence
「Burden (feat. TAKUMA THE GREAT)」
LIFULLの実現したい未来「多様性を認め合える社会基盤を」
ジャケットで表現したこと
日食の闇の中に見える光。
息苦しく醜い争いのある世界で
異なる価値観が重なり新しい価値が生まれることを表現。
担当デザイナーより(森 × 岡野)
森:ROUND.1のジャケットでも書きましたが、曲も作りながら、ダンスも作りながらという感じでジャケットも作っていくんですが、「3曲目も暗めだなぁ・・・」とちょっとドキドキした記憶があります。
岡野:いや本当そうでした。曲調が激しめで重たくて怖くて、正直なところアルトリとはいえ、当時はLIFULLのクリエイティブのイメージからかけ離れているように感じましたね。
森:”when life gives you lemons, make lemonade”という歌詞があって、意味としては”災転じて福となす”に近しい意味なんですが、本当にレモンをだそうかとも考えましたね。結果、りんごが出てきたんで、あの時は「レモンにしなくてよかった・・・」とほっとしました(笑)
岡野:危なかったです(笑)。個人的にレモンのモチーフが好きなので、描いてみたかった気持ちもあったのですが、曲のテーマや雰囲気により合っている他のモチーフを選ぶことにしました。
森:重荷とか、葛藤がテーマにありましたが、どうやってその苦しさや怒りの先にポジティブなイメージを描くかは悩みましたね。
岡野:日食をモチーフにして描くことは早めに決まったのですが、砂漠の日食、荒野の道の先の日食、重力が歪んだ世界の日食など様々な比喩表現を探求して、どのようにテーマを描くかを決めました。最終的には要素を削り、光が主体となる日食そのものだけを描きました。圧倒的質量の闇から溢れる鮮やかなアルトリカラーの輝きは、希望や未来をストレートに感じさせると思います。
森:パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことはありますか?
岡野:パフォーマンスも楽曲と同じように、やはり怒りや葛藤を感じさせる本当に重苦しいものでしたね(笑)。闇が全て晴れて幸せになる、みたいな綺麗事ではなく、もがきながらも歩み続け、その苦しみの先にあるわずかな希望を泥臭く掴みにいくようなダンス表現は、ジャケットで描いた風景と通じる部分が確かにあると感じました。
ROUND.3 Silenceはこちらから
ROUND.4 Mirror
「Canvas (feat. Aimée Blackschleger)」
LIFULLの実現したい未来「豊かな地域のための強いつながりを」
ジャケットで表現したこと
人は人生の中であらゆる人や出来事と出会い、影響を受け、変わり続ける。
これまでの自分からはみ出したり、様々に揺れ動きながら、自分らしさを見出す。その全ての自分を愛し、慈しむイメージを表現。
担当デザイナーより(森 × 谷口)
森:これもいい曲....。過去や現在を含めた自分への愛というテーマでしたが、なかなか1枚にまとめるのは難しかったですね。
谷口:広い意味での「愛」を表現するのに適したモチーフは何なのか、そのアイデア出しに一番苦労したような気がします。人物を使わずに表現できないか、モチーフによっては意味が出過ぎるのではないか…など迷った末、抽象化した人物の形を重ねることで表現できないか?と森さんに提案いただきました。
森:”肌の色”や”性別”を特定しない描き方も気をつけていましたよね。
谷口:そうですね、肌や髪の色、フォルムを工夫することで、人だと判るけど特定の人に見えない抽象的なものを目指しました。
ここまでのジャケットでも、特定の人物や属性をフィーチャーすることはせず、ましてや差別的にうつってしまうような表現になっていないかは細心の注意を払っていました。途中段階ではブラウンやベージュのような配色もあったのですが、肌色と認識されそうな色は徹底的に除き色数を絞ることで、全体の調和が生まれてぐっとテーマに近づいたように感じます。
森:Canvasという曲のタイトルとMirrorというパフォーマンスのタイトルの間でどちらを大切にしたらいいんだろうという悩みがありましたね。
谷口:テーマの「Mirror」と楽曲がどう結びついているのか、表現するならどちらに軸足を置くべきかが難しく、悩みましたね。「Canvas」という曲名の通りアート要素を組み込むべきか、歌詞にある「翼」「光」等の内容も拾うべきか、はたまた鏡を使うべきか…アイデア出しの際に方向性が決まらず悩みました。最終的には今の形になり、このテーマを通して伝えたいメッセージをシンプルに表現できたんじゃないかと思っています。
森:パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?
谷口:初見では、思ったよりMirror(鏡)をしっかり使ったパフォーマンスだったことに驚きました。開催日がクリスマスだったことからパフォーマンスにもその要素が組み込まれていたと思うのですが、そのことも知らなかったためちょっと焦りました。ROUND.1~3は少し重い雰囲気のパフォーマンスだったため、このROUND.4では前向きな印象になるよう制作時も意識していました。実際のパフォーマンスも軽やかで笑顔が見え、温もりを感じるような表現になっており安心しました。終盤ダンサーが入り乱れるシーンはジャケットのデザインとも少し重なって見えたのが嬉しかったポイントです。
ROUND.4 Mirrorはこちらから
ROUND.5:TIME
「Tum Tadda (feat. YURI)」
LIFULLの実現したい未来「自分らしく生きられる選択肢を」
ジャケットで表現したこと
自分らしさ、自分が好きなものを愛し、
何も恐れず、堂々とオープンにするようなポジティブな様子を
個性が現れるような持ち物を無造作に広げたようなイメージで表現。
担当デザイナーより(森 × 大信田)
森:基本的に、ROUND当日の2週間前にジャケットは納品するんですが
我々の制作が開始するタイミングではパフォーマンスでみたようなストーリーは伝えられてなかったので、これは結構歌詞や曲調に沿って「スキなものをスキって堂々とパワフルに開放する」みたいなイメージで作りましたね。
大信田:そうですね。歌詞や曲調から自分らしさの象徴をオープンマインドなイメージで表せたらなと森さんと話す内に固まってきて、最初はクラッカーから飛び出るように表してみたり、机に広げるようにやってみたりと色々試行錯誤しましたね。
森:散らばっているものを選ぶのも迷いましたね。選ぶときに気をつけたことありますか?
大信田:だいぶ迷いましたね(笑)。そこが一番大変だったかもしれないです。見た目上で言うと影の入り方がなるべく極端ではないもの(のちに補正が可能な程度のもの)であったり、粒度的に塊感の出せるもの、細かいものなどのバランスをなるべく気をつけていました。意味合い的なことでいうと最初はハイヒールや口紅も使う素材の選択肢の中に入れていたのですが、安心して個性をオープンにできる、いろんな価値観を爆発させたポジティブな様子をテーマにしたいと言う気持ちから性別が特定しすぎるものや、趣味趣向に偏りがありすぎるようなものは下げましたね。音楽を聴きながら靴を履いて色んな場所に遊びにいくのかな、であったり、その日あった楽しいことをノートに綴ったりするのかな、などモノ一つひとつに自分なりの解釈とストーリーを考えてみたりしてモノの選定はとても楽しかったです。
森:もはや奇跡だなって思ってますが、当日パフォーマンスで$さんが着ていた服もタートルネックで、スニーカーも白っぽくて、、、、これは大信田さんの予知能力ですか?
大信田:予知能力……ないです!(笑) タートルネックのニットは元はデニムでしたよね。アルトリのジャケットを作る上でターコイズブルーとオレンジの組み合わせは遠目で見てわかるようにしたい気持ちはあり、色の配分など完成したジャケットを見直すとええやん〜〜ってとても感じますね(ほんとチェックのフロー&力を貸してくれた先輩が偉大)
森:パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?
大信田:こんな風に昇華されるのか、、、すごい、、、!!がまずは感想としてあり、印象的だったベルをジャケットにも入れたかったなあとちょっと思いましたね。個人的にですが、、作るときのイメージにKiLiさんの表情や動きが合っていてちょっとでも通じるところがあったのかな、と少し嬉しくなりました。
ROUND.5 TIMEはこちらから
ROUND.6 ritual
「 DANCE!!!」
LIFULLの実現したい未来「多様性を認めあえる社会基盤を」
ジャケットで表現したこと
多様な人々が出会い、認め合い、共に舞うダンスフロア。
そこに誘う、闇の中で輝き続けるネオンサインを表現。
担当デザイナーより(森 × 岡野)
森:これも岡野くんですね、何作品もありがとうございます。
ritural(儀式)のイメージとは若干コンセプトにもズレを感じますが簡単に経緯伺ってもいいですか?
岡野:アルトリの量さん、淳さん、SPダンサーの柿崎麻莉子さん、そしてダンサーの皆さんがパフォーマンス当日の直前まで練り上げて完成した作品だと聞いています。ジャケット納品後からROUND.6当日までの1、2週間の間にもパフォーマンスが進化し続けた結果、違和感が生まれたのだと思います。
森:制作時にはテーマが確定していなかったこともあり、具体性のある表現は避けて文字だけにしましたがそれがよかったですね
岡野:本当に良かったです。楽曲名はDANCE!!!、曲中ではDANCE!!!と連呼される不思議な楽曲。DANCE!!!という文字だけの強い表現が潔くてストレートに伝わると思いました。そして文字だけだからこそ、その文字を追求しました。ネオン管で文字を描くために、ネオン管の配管・構造、曲がる角度による光の増減度合い、汚れ、ムラ、留め具のサビなど、ひたすら細部の表現にこだわり抜き、リアリティのある強いタイポグラフィを描くことができました!
森:ritural=儀式とダンスフロアは遠いようにも思えますが、光に吸い寄せられ、音に体や心が揺さぶられ、動き出してしまうという本能的なものを感じる作品になった気がします。パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?
岡野:個人的な見解ですが、太古の踊りや儀式を、現代人が現代的な音楽で再定義した、架空の現代の儀式に遭遇したように思いました。単なるエスニックで民族的、土着的な踊りではなく、現代的な雰囲気の振り付けや楽曲、ジャケット、衣装などがそこに刺激をもたらして、これまでにない新しい表現が生まれている。ジャケットとテーマの違和感はrituralという作品の唯一無二の特異性を形作った要素の一つだと僕は思っています。
ROUND.6 rituralはこちらから
ROUND.7 HOPE
「Mask(feat. Shun Ikegai)」
LIFULLの実現したい未来「多様性を認めあえる社会基盤を」
ジャケットで表現したこと
暗闇の中から見えた希望の光を"雨上がりの空"で表現。
担当デザイナーより(森 × 小泉)
森:めちゃめちゃかっこいい曲。。。歌詞もちょっと意味深で。だからこそ難しかったなぁという記憶があります。Maskというタイトルと、パフォーマンスのなかの雨をどう解釈して表現しようか悩みましたね。
小泉:初めて音源を聴いた時から、暗さと、そこに光が差し込むような両面の印象が浮かび上がってくるような曲でした。抽象的で芸術的な歌詞からひとつの絵として成立させる工程がとても難しかったですね。ダンサーのパフォーマンスと全てが融合して一つの作品になるというところが表現の難しさでもあるし、面白さでもあるなと思いました。
森:雨の暗さと、雨上がりへの期待感というところで写真選び大変苦労されたと思います。この汚れ具合が絶妙。
小泉:今は暗がりにいるけれど確かに希望が見えている というようなことを表現したかったんですよね。あんまりきれいな空だとそれが表現できないと思ったのであえて雨水の濁った印象を残しました。
森:雨がモチーフとして入りそうだぞっというのは知っていたんですが、パフォーマンスの時の衣装とかメイクとかがどうなるかって我々も当日まで知らないので、レインコートや顔に水を付けたりしているのを見て、リンクできたことに地味に感動してました。。。パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?
小泉:他のROUNDもそうですがそういった、偶然のリンクってとてもグッときますよね。我々の解釈はまちがってなかったー!ってなったりして、喜びを感じます。
ROUND.7 HOPEはこちらから
まとめ
本noteでは、ROUND.3~7のジャケットについてお話しさせていただきました!今回は、岡野に加え、谷口・大信田・小泉の新しいメンバーにも参加してもらいました。
人が変わっても、さすがインハウスのデザイナー。
それぞれが楽曲に向き合うことはもちろん、
アルトリらしく、LIFULLらしい作品に仕上げてくれました。
#03ではROUND.8~12までの全ジャケットの制作秘話をご紹介していきます。ぜひご覧ください!
#03はこちら
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採用について
LIFULLでは、LIFULL ALT-RHYTHMに関わるデザインをはじめ、ブランドデザイン、コミュニケーションデザイン、サービスデザインなど、幅広い領域でデザイナーを募集しています。少しでも興味を持っていただけたら、カジュアル面談からでも!ぜひご連絡ください!お待ちしております!
森 瑶子
株式会社LIFULL
クリエイティブ本部 デザイン部
コミュニケーションデザインユニット
コミュニケーションデザイングループ
2011年新卒入社。デザイナーとして、LIFULL HOME’Sのキャラクター「ホームズくん」のデザイン、LIFULLのリブランディング、EarthCuisine #1、LIFULL ALT-RHYTHMなどを担当。時短で働く2児の母です。
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