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社会課題に向き合う会社のデザイナーが、ダンスと共に世界に伝えたいこと第2弾-#01-

こんにちは。LIFULLのアートディレクターの森です。

このnoteでは昨シーズン同様、全3回で「LIFULL ALT-RHYHTM (ライフル アルトリズム)」の楽曲ジャケット制作における背景と、各ジャケットの”発想”と”表現”をアートディレクターの森と、各担当デザイナー10名(藤田、伊藤、小泉、後藤、関根、瓜田、谷口、牧山、長谷部、望月)の対話形式で、紹介したいと思います。

昨シーズンから始まっている本PJの概要は前回記事よりご覧ください。

改めてLIFULL ALT-RHYTHM
(ライフルアルトリズム)とは

プロダンスリーグ「D.LEAGUE(ディーリーグ)」に所属する「LIFULL ALT-RHYTHM(ライフル アルトリズム)」は、多様な個性・表現を通して、ファンや観客だけでなく、パフォーマンスを支える”あらゆる人”のために、活動するダンスチームです。

21-22シーズンは新規参入チームとして、様々なジャンルを組み合わせた新しいダンスと多様性や社会課題をテーマにしたショーケースで確かな存在感を示すものの、ストリートダンス主流の舞台において、勝つためのダンスを模索し続けるシーズンになりました。

しかし22-23シーズンは1対1の対戦形式になり、同様のテーマを掲げながらも、勝ちにこだわり、独自の世界観と奥深いメッセージ性で”アルトリらしいダンス”を披露し続けています。

LIFULL ALT-RHYTHM(22-23シーズン)

ラウンドごとのオリジナル楽曲と
オリジナルジャケット

今シーズンも各ラウンドではチームの音楽プロデューサー 今井 悠さんが手がけるオリジナル楽曲が使用され、それら全11曲のジャケットはLIFULLのデザイナーが制作を担当させていただきました。

ジャケットのデザインについても昨シーズンと変わらず、

・パフォーマンスの表現するテーマ
・曲の持つ世界観
・アルトリらしさ
・LIFULLが実現したい未来像

これら4つを一つの絵にしていきます。

アルトリらしさ

特にアルトリらしさを作るにあたっては、
以下をルールとして作っています。

・チームカラーであるオレンジとブルーを基調とすること
・LIFULL FONTを使うこと
・テイストを決めないこと
・あらゆる人を想い、誰一人取り残さず、傷つけないデザインを目指すこと

"アルトリらしさ"のための最低限のルール

曲とテーマに向き合い、アルトリらしくあるように作る。
シンプルにいえばそれだけですが、この一枚を仕上げるのには、
・テーマについて学び、考え、
・アイデアを広げ
・客観的な視点を持って
・表現を選び
・全てのバランスを考えながら一枚にまとめていく
という、あらゆるデザインに必要な過程全てが盛り込まれています。

ここからは各ラウンドのジャケットを通して、アルトリらしさや、ジャケット一枚に込めたメッセージをお伝えできればと思います。


ROUND.1 TGIF

「KNOCK KNOCK KNOCK (feat.YURI)」

LIFULLの実現したい未来「豊かな地域のための強いつながりを」

再生はこちら

ジャケットで表現したこと

人々が集まり、酒を飲み交わし、新しい出会いや会話に楽しさと刺激を感じるイメージ。
夜、弾けて遊ぶ楽しさ。フワッとして幻想的にも感じるハイテンションさを

ポップなカラーと装飾で表現。


担当デザイナーより( 森 瑶子 × 藤田 早紀 )

森:まず一言お伝えしたいんですが、ホントに曲が最高。作りながら何度も聞いたし、今井さんから曲のラフをもらった時点で、相手が強豪KADOKAWA DREAMSさんとわかりつつも、すでに勝った気持ちになってました。無意識に体が動いてしまうようなリズムとYURIさんの力強く歌い上げる声に楽しい気持ちになりっぱなしでした。

藤田:最高ですね!イントロが流れた瞬間にワクワクしちゃう曲なので、どんなデザインにしようかすぐイメージが湧いてきて心踊りました。
余談ですが、楽しげなデザインを作る時、作る側も無意識に笑顔になりませんか?このグラフィックも同じで、終始笑顔で取り組みました。

森:今シーズンは作品によって制作途中の動画も見せてもらえることがあり、かなりお酒やグラスの表現が多かったのでモチーフも選びやすかったですね。

藤田:お酒が主役のデザインという方向性はすぐに決まりましたね。具体的には、人々が出会い混ざり合うように、オレンジとブルーの2色が混ざり合うグラデーションカクテルをメインモチーフに選びました。

森:コロナ禍でなかなか人と会ったり、お酒を飲むことができない中で、思い出すあの時間と空間の楽しさを、この一枚の中で存分に表現してもらったと思ってますが、藤田さんがイラストレーションの表現で気をつけた部分などありますか?

藤田:お酒の場って、グラスがキラキラ輝いたり、気持ちがフワフワしたり、少しドキドキするような場面もあったり、普段とは違う特別な雰囲気がありますよね。
そんな高揚感を表現するため、フワフワ、シュワシュワ、パチパチ、と音が聞こえてくるようなモチーフをたくさん詰め込みました。
魅力たっぷりのこちらのカクテル、きっと美味しいはずです。

森:ショーケースも最高でしたね。見るたびに発見がありましたし、テーマの通り、久しぶりに親しかった友人に会えたような、一人一人の個性を改めて見せてくれるような作品で感動しました。パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?

藤田:キラキラ、フワフワ、ドキドキなパフォーマンスにお酒を飲んだ時のような高揚感を感じ、あっという間の2分間でした。ジャケットも動画にしっかり表示いただいており、画面に向かってちまちま作っていたデザインがダンスを通じて作品の一部になっているのだな、と胸が熱くなったのを覚えています。
これはファンとしてですが、calinさんのKADOKAWA DREAMSさんへのリスペクトの込もったコメントにも感動しましたね!


ROUND.1 TGIFはこちらから 


ROUND.2 WIND

「culture (feat. TAKUMA THE GREAT) 」

LIFULLの実現したい未来「多様性のある公平な社会を」

再生はこちら

ジャケットで表現したこと

全く異なるもの同士が、衝突したり反発したりしながらも、
時間をかけて乗り越え、入り混じっていくさまを、
力強くゆったりとしたグラデーションで表現。


担当デザイナーより( 森 瑶子 × 伊藤 栞 )

森:まさにアルトリ!というテーマだったなぁと思います。全く同じ人というのは世界には存在しないんですが、いつからか線を引き始めたことで感じてしまった “違い”をどう受けとるかということを考えさせられました。このグラデショーションの中に”違い”との接点が凝縮されているようでとてもいいなと思います。

伊藤:グラデーションというと、2つ以上の色の境界がなめらかに溶け合って見えるような美しさが特徴かなと思うのですが、そう見えているだけで、実際には溶け合ってもいるわけでもそれぞれの色が変わってしまっているわけでもないんですよね。
ジャケットでは、その点をより強調するためにドットを仕込んでみました。テーマにぴったりの表現になっていたら嬉しいです!

森:歌詞の中もまさにこのジャケットと同じように半分英語、半分中国語になっていて、そこでもこのテーマが表現されているところに感動しましたね。このグラデーションも相対する2色を使いながらも、ただのグラデーションでなくて、色の濃淡や動き、境界線の明瞭さがとても美しいし、意志を感じて良いなと思うのですが、伊藤さんが気をつけたことがあれば伺いたいです。

伊藤:全体として見ると1つの大きな動きになっていても、その中に様々な衝突や葛藤や対話がある…というような、マクロとミクロの視点は意識していました。
抽象的なビジュアルではあるのですが、ストーリー性や歴史的な時間の流れみたいなものも込められたらと思っていました!

森:新卒で初参加の伊藤さんにとっては、なかなか普段の業務とは離れたものだったと思いますが、率直にこの制作に関わっていかがでしたか?

伊藤:まず、「音」から世界観を想像して発想を広げていくという体験がすごく面白かったです!
あとはやはり、自由度が高かったり表現そのものやディテールに集中できたりと、普段の業務とは違う楽しさもありました。

森:ROUND.1からガラッと変わり、力強く衝突するようなダンスもあり、印象的なショーケースでしたね。照明や衣装からもメッセージを強く感じました。パフォーマンスと合わせてみたときに何か感じたことはありましたか?

伊藤:ジャケットはかなり色鮮やかな表現にまとめていたので、実際のパフォーマンスで無彩色の世界観を見た時、正直少し驚きました。作曲者やパフォーマーの方たちと違うイメージで制作しちゃったのかな?と一瞬心配になったんですが、別の見方をすると、同じテーマを全く違う表現で伝えているということ自体がすごくテーマにふさわしいような気もしていて。結果論かもしれないですが、こういったギャップも含め、色々と考えさせられるものがあって面白かったです!


ROUND.2 WINDはこちらから


ROUND.3 LOOP

「KaKa」

LIFULLの実現したい未来「自然環境と社会に調和を」

再生はこちらから

ジャケットで表現したこと

壮大な自然と、太古から続く時間。
その中にある人類の小さな光を表現。


担当デザイナーより( 森 瑶子 × 小泉 貴奈未 )

森:制作時の「2分15秒ヘッドスピンしている人がいるらしい」という前情報でかなり困惑しましたが、当日本当に回ってて拍手しか出なかったです。
「自然」x「回転」を感じるモチーフ探しには苦労しましたね。

小泉:内容いただいてまず最初に思ったのは、回り続けるダンサーさんの体調は大丈夫なんだろうか??ということでした(笑)
「自然と産業の共存共栄」「反時計回りのヘッドスピン」「曲調」などの情報を繋ぎ合わせて、回転の速さや時間の巻き戻りなどを感じるモチーフをたくさん探したので、渦巻きを見すぎて二人ともだんだん目がおかしくなりましたよね。

森:小泉さんは、昨シーズンのMaskから2作品目の制作になりましたが、前回と違って歌詞がない分、音から感じ取った印象をどう表現に落とすかが課題だったかなと思ってます。苦労したところなどはありますか?

小泉:Maskのときも歌詞の解釈が難しかったですが、今回も曲調から受ける印象と「自然環境」と「産業」という反比例するテーマを1枚の絵として表現するところに一番頭を使ったなと感じています。
産業の発展は環境の破壊を伴うけれど、それは、太古から続く"地球"という基盤の上で成り立っているものなので、「あくまで絵の中の主体は地球・自然環境であり、人類はその中で生かされている」ということを表現したいと思っていました。

森:アルトリのチームカラーのオレンジとブルーはこの2色でかなりいろんな表現ができるなぁと思っていますが、その中でもこのブルーがとても神秘的で静かさの中に力を感じるすごく良い色だなと思います。配色や見せ方で気をつけたところがあれば教えてください。

小泉:ちょっとソースはふわっとしてるのですけど、日本に住む人は海に囲まれているからか「青」を好む傾向が強く、「青」に自然を感じるという話を聞いたことがあって、今回のジャケットも、私の中にあるそのイメージが配色に影響しているように思います。
この絵の中では、ブルーは「自然環境」オレンジは「人類の発展」をあらわしていて、「自然環境」と「産業」が対比しているように、ブルーとオレンジも対比しているところが上手くリンクしたんじゃないかなと。
また、先の話にあった、あくまで「人類は地球の中で生かされている存在」ということを表現するために、オレンジの配色を控えめにしています。

森:毎度同じチームなのかと目を疑うぐらいショーケースの幅があり、特に今回は狂気すら感じるパフォーマンスでしたが、パフォーマンスと合わせてみた時に感じたことありますか?

小泉:曲だけを先んじて聞いた時、スピード感があってあっという間に感じたんです。でもパフォーマンスと合わせると、厚みがグッと増してすごくボリュームのある作品に仕上がっていて、ゾワッとしました。
本番のパフォーマンスではダンサーさんがステージの後方で本当にヘッドスピンし続けていて、プロの技を魅せていただいて、本当に素晴らしかったです。


ROUND.3 LOOPはこちらから


まとめ

本noteでは、全体方針とROUND1〜3のジャケットについてお話しさせていただきました!

悔しかった昨シーズンを越え、ようやく迎えた
22-23シーズンROUND.1はまさに社内も歓喜の一色。
そこからの3連勝も本当に嬉しかったです。

さらに、今シーズンは対戦形式になったことで、各チームのカラーがこれまで以上に濃く感じられるようになりました。
その中でも多様性や社会課題をテーマに、相手チームまでも思いやりながら戦う姿が「アルトリらしさ」としてリーグの中で定着していく様子、とても誇らしく思っていました。

ただそれはショーケースやラウンドの勝敗の結果だけでなく、
ダンサー一人ひとりの言葉や振る舞い、SNSやYoutubeで垣間見えるチームの雰囲気。それら全てが作り上げた「あらゆる人のために踊るダンスチーム」の像だと思います。
その一部に、微力ではありますが、デザイナーたちが作ったジャケットもなれたのではないでしょうか。
そうであれば嬉しいです。

これから、チャンピオンシップまでの間に、ROUND12までの全ジャケットの制作秘話をご紹介していきます!

#02ではROUND .4〜8までのジャケットをご紹介しますのでそちらも併せてご覧ください!

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森 瑶子

株式会社LIFULL
クリエイティブ本部 コミュニケーションデザインユニット
コミュニケーションデザイン2グループ

2011年新卒入社。LIFULL HOME’Sのキャラクター「ホームズくん」のデザイン、LIFULLのリブランディング、LIFULL HOME'Sのコミュニケーションデザイン、EarthCuisine #1、LIFULL ALT-RHYTHMなどを担当。

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