大自然を感じ、心の中に爽やかな風が吹くような小説を読みました。「ザ・ダルマ・バムズ」
あるとき、私はフィリピンの離島にいました。
原付を道路から脇に少し入った場所にとめ、数人で道路を背に、ゆるやかな傾斜を上がっていきます。
途中、何軒か民家があり、飼われている豚ちゃんの脇をすり抜けていくことも。
道をどんどん登っていき、途中で左の方に曲がっていくと、切り立った岩がいくつも並び、緑も生い茂っている場所へ抜けます。
大小さまざまな岩を乗り越えながら道なき道を進んでいきます。
私たちはどこに向かっているのでしょうか。
1人が以前見つけた小さな滝へ向かって。
岩に上がったり、下がったりと全身運動が続きます。
この体験はもう7年も前のことなので、記憶はあやふやだったのですが、以前行った時と時間が経ち、辺りの様子が変わっていたこともあり、結局、滝に辿りつくことはできなかったと思います。
行きとは異なるルートを開拓しながらバイクを停めた場所へ向かい、帰路につきました。
なぜ突然このことを書いたのかというと、ある本を読み、この時の充実感・爽快感・ワクワクが甦ったからです。
その本はこちら。
「ザ・ダルマ・バムズ」です。
1950年代のアメリカにビート・ジェネレーションと呼ばれる詩人たちがいました。そのフレーズをまさに使い始めた、その世代の象徴ともいえる人物がジャック・ケルアックです。オン・ザ・ロード(路上)という小説が有名ですね。
オン・ザ・ロードは実話をもとにした小説なのですが、ザ・ダルマ・バムズも同じです。ジャック・ケルアックの友であり、日本の初期ヒッピーと呼ばれるような人たちへ影響を与えたゲイリー・スナイダーという人物と出会い、友情、離別までを書いた自伝的小説です。1958年が初版ですので、まさに当時そのまま記憶が新しいうちに書かれたものでしょう。
本の中でジャックとゲイリー、もう1人と合計3人でカリフォルニア州にあるシエラ・ネバダ山脈のとある峰へ向かって登る場面があります。
その場面の描写が、
実際の息遣いが聞こえてくるような、初めて登ったジャックの感動がそのまま伝わってくるような
それはそれは素晴らしい内容だったのです。
そして、彼らと全く同じではないけれど、今私がここで心動かされているような体験を過去にしたことがあると思い、思い出したのが先に紹介したフィリピンでのプチ冒険だったのです。それまですっかり忘れていた体験です。
また、ユニークなタイトルのザ・ダルマ・バムズのダルマとは仏教の法のことであり、真理といった意味合いですね。一方でバムとは、スラングで浮浪者という意味だそうです。
並べると「真理 浮浪者たち」
なんとなく意味が分かるような分からないような。
禅やブッディズムに関する話が出てくるのですが、私たちもまさしく禅やブッディズムについて探究実践しており、それとジャックとゲイリーの2人が少なからず重なったというのも、この本の描写に心が大きく動かされたことに影響していそうです。
いずれにしても、こういう気持ちにさせてくれる小説ってすごいなぁ。
まだ名著「オン・ザ・ロード」は読んでいないのですが、読むのがますます楽しみになりました。
なお、ザ・ダルマ・バムズは絶版なので多少お高いですが、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。