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夜明けのすべて

公開2日目に観たのに良すぎて2回目を観て、色々考えながら書いてたらめっちゃ時間が経ってしまった今作。

とてもいい映画でした。

飾らない台詞にゆったり流れる時間、時折挟まれるユーモア、ほんのり心が温まるラスト。
主演2人の掛け合いが終始心地良く、職場の社員や元上司達の距離感が絶妙。
フィルム粒子が浮かぶ映像から、背中をさすってくれるように繰り返し流れる優しいBGMまで、2人に寄り添うような作品全体の空気感が個人的にツボでした。

あらすじ

PMSにより毎月生理前に怒りっぽくなってしまう藤沢。
新卒で入った会社もPMSが原因で辞めてしまい、現在は栗田科学という光学機器を作る小さな会社に勤務。
ある日新入社員の山添が社内でパニック発作を起こします。
藤沢は誰ともコミュニケーションを取ろうとせず無気力に仕事をする彼に良い印象を抱いていませんでしたが、彼もパニック障害と闘いながら日々を凌いでいる事を知り、以来彼を気にかけるように。
山添もまたPMSに苦しむ藤沢に徐々に心を開いていきます。
「自分が病気でも相手を助けることは出来る」
そのことに気付いた2人の間には恋とも友情とも異なる絆が芽生えていくのでした。的な。

登場人物

藤沢美沙
主人公。普段は職場の人にお菓子を差し入れたり気配りの出来る性格ですが、月経前症候群(PMS)により月に一度無性に怒りっぽくなり自分を抑えられなくなります。
美容院に行けない山添の髪を切ると言い出したり距離の詰め方が時々独特。
演じるのは上白石萌音。

山添孝俊
主人公。
パニック障害になって以来電車にも乗れなくなる等以前出来ていた当たり前のことが出来なくなり無気力に生きています。前の職場では上司や同僚にも恵まれ充実した日々を送っていました。
自分を気にかける藤沢のPMSに興味を抱き、彼女を助けるように。
演じるのは松村北斗。

栗田
2人が勤める会社、栗田科学の社長。
過去に弟を亡くし、自身もグループセラピーに通っています。
社員に決して無理強いはしない、穏やかで優しい性格。
演じるのは光石研。

辻本
山添の前職場の上司。病気を治して前の会社に戻りたいという彼の相談に乗っている心優しい先輩。
栗田とは仕事とセラピーを通じた知り合い。
演じるのは渋川清彦。

千尋
山添の恋人。仕事も出来るキャリアウーマン。
演じるのは芋生悠。

藤沢倫子
藤沢の母。
離れて暮らす娘を気にかけます。
序盤では車も運転出来ていましたが、5年後は歩行が困難となりリハビリに通っています。
演じるのはりょう。

このほかにも子育て中の転職エージェントの女性も登場しますが写真が無かった…

PMSとパニック障害について

共に大々的に取り上げられる事がないのでわざわざ映画で描く事か?と敬遠する人もいるかもしれません。いちお紹介。

まず #PMS (PreMenstrual Syndrome)こと #月経前症候群
生理前、心身に不調をきたす症状の事。
薬も色々出てますね。命の母とか。効くかは知りませんが。
医薬品が出てるってことは人によってはそれくらいの事。病気じゃないのに薬飲まないとやってけないという。
感情の起伏が激しかったり頭痛やダルさがあったり人によって症状は様々ですが、生活に支障をきたすレベルの人は全体の5.4%と言われています。
20〜49歳の女性の数が大体2500万人なので、約120万人はPMSという病気でもない症状に生活を壊されている事に。
また月経前に何らかの症状がある人は8割に上るという統計もあり、PMSを自覚しながらもそれに耐えて日常生活を送っている人もいるのが現状です。

そして #パニック障害
動悸が激しくなったり眩暈や吐き気を催したり、抑鬱状態に陥ってしまう、所謂パニック発作により行動が制限されてしまう病気。
パニック発作が続く人ではなく、パニック発作を恐れて自らを押さえ込んでしまっている状態って感じですね。
有名な人ですと #中川家 の剛さん、 #IKKO さんや #堂本剛 さんも過去に罹患していました。
僕の職場にもいましたので、身近にそんな人がいる人も多いのでは?
患者数は人口の約3%、375万人。
パニック発作自体は日本人の10人に1人、つまり1000万人以上は経験するそうです。

僕の仕事柄と経験上どちらも関わりがあるのでちょっち突っ込んで書いてみました。
要はこの映画の主人公達は決して遠いどこかにいるのではなく思ったより身近にいる事を知ってもらえたら。

キャストについて

主演の #上白石萌音 さん、この人が持つ穏やかな空気感、安定感は素晴らしかったです。声も素敵。女優ってこういう人だと思います。
#松村北斗 君は俳優一本で充分やってける気が。それくらいアイドルとはかけ離れたキャラでお見事でした。

職場の人達も本当に良い距離感。
中でも名バイプレーヤー #光石研#渋川清彦 が演じる栗田社長と辻本。
どちらも良き人生の先輩って感じですが、家族の自死という悲し過ぎる過去が。
だからなのか、彼らが笑うと少し寂しいようにも見えます。(気のせいかもしれませんが)
表情一つで人生を語れるって役者さんってすごいなと思いました。

感想とまとめ

こんなにも居心地が良かった2時間は久しぶりでした。
観終わった後に心がじんわりあったかくなるあの充実感は邦画では久しく味わってない気がする。

笑えるシーンが多いのはなんか嬉しかったし、終盤栗田科学が企画する移動式プラネタリウムの場面はとてもロマンチック。
文字通り天文学的な場所から放たれた光に皆が思いを馳せるラストは良すぎて目が潤むほど。

てな感じに劇映画として純粋に楽しめる要素が多く、題材の割に万人向けの作りなのは嬉しい驚きでした。

互いがどんな状況でも助け合うことはできるという人間の逞しさをひしひしと感じる、静かながら力強さがあるなと。

実際世の中みんな自分のことで精一杯と言いながら、身近な場所やSNSでも助け合う動画とかバズってますよね。
「優しい世界」とかいう言葉もあるし。
世の中が優しくない前提で使われているような気がして僕は絶対使いませんが笑

とはいえ苦しんでる人が置き去りにされやすい社会なのは確か。
スマホとイヤホンで自分の世界に入り込み、身近に苦しんでる人が居たとて気付かない。
会社でも関心はあるのに直接は関わらない。
本人を無自覚に追い込んでる事にも気付かない。

病院には同じ疾患を抱える人が悩みや苦しみを共有して励まし合う患者会というコミュニティがあるのに、外に出ればこれが現実です。

他者の痛みに気付かなくて人として立派に生きてると言えるんでしょうか。

苦しんでる人も自分からいけないパターンが多いですが、だからこそ自分を追い込んで欲しくない。

健康に過ごせてる人達は出来る範囲で周りに気を配れたら良いですよね。

それが出来たらもう少し過ごしやすくなるはず。
自分には出来ないじゃなくて、矮小な殻を破って他者と繋がる勇気があるかどうかなのかなと。

メット逆笑

原作小説との差異

鑑賞後に原作も読みましたが、主人公らが働く会社の設定が異なる為ラストは別物です。
また栗田社長と辻本は原作では絡みませんが、映画では絡みがある。
この2人が繋がってるという安心感もまた然り。
個人的原作ハイライトの藤沢がボヘミアンラプソディを観て感動そのままに山添君宅に押しかける場面は丸々カット。
その分介護や転職のシーンが追加された感じかな。
どちらもそれぞれの良さがありますが、星が地味に好きな僕は映画の方が好み。
夜明けについても映画の方が掘り下げられてる気がする。

医薬業界の片隅に身を置く自分としては、体調不良時は病院以外にも薬局とか漢方相談も選択肢に入れることをお勧めします。
薬で症状は和らいでも原因が消えない限りは再発する可能性もあるし。そんなら自分の体の状況を知って根治を目指してコツコツ治してった方が効果的。
何より自分の話を聞いてくれる人がいるって嬉しいもんですよ。
薬の知識だけじゃない薬剤師や登録販売者も多いので。

とりあえずこの映画に出会えて良かったなーとしみじみ思います。
ぜひご覧ください。
きっと何か得られる物があるはずです。

クソ長くてごめんなさいm(_ _)m

#町田その子
#三宅唱
#和田清人

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