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【後編】「テンペスト」起業家・入海健さんの反骨精神が生んだ最上級のヴィーガンフード

【入海 健(にゅうかい けん)】起業家。米豆麦造り(ことばづくり)株式会社 代表取締役。明治大学農学部農芸化学科卒業。テキサス大学心理学修士課程修了。会社勤めをしていたところから30歳で起業を決意。そのときに出会った大豆発酵食品をきっかけに「テンペスト」を開発。米豆麦を中心とした機能性食品の研究・開発を通して、予防医療を推進する活動に取り組む。

今回登場してくださるのは、起業家・入海健さん。
前編では入海さんがある発酵食品に出会い、ご自身で立ち上げるまでのストーリーをご紹介しました。

入海さんが独自開発した微生物を活用し大豆を丸ごと使って作られた「テンペスト」。後編では、たくさんの困難を乗り越えてきた入海さんとテンペストの歩み、そして入海さんが抱くテンペストへの想いをご紹介していきます。

3つのアルバイトを掛け持ちして事業のための資金づくり

入海さん後編5

法人を立ち上げたとき、入海さんの起業資金は200万円。
事業をしていくにはもちろんさまざまな出費が重なり、自分の生活もしていかなければならない。そうなると、だんだん通帳を見るのも嫌になってきたという入海さん。

早朝のコンビニバイト、昼は週2〜3で大学の実験助手、夜は週5で飲食店。夜2時に寝て、朝は5時に起きるという3時間睡眠の生活を丸1年継続していたのだそう。

同時並行で、必死になって事業の活動をしていた入海さんの周りには、いつしか大学のつながりやSNSを通じてたくさんの応援が集まるようになっていました。

「本気でやっていると、伝わる。」

そういって笑う入海さんの表情には、大変な経験を財産と感じているような、誇らしげな様子が伺えました。

「一度決めたなら、やるしかない。反骨精神と意地もありました。当時はとにかく必死で…あんまり記憶がありません(笑)」

「テンペストバーガー」出店の失敗が、次なる発展のきっかけに

入海さん後編3

「勢いで、計画性もなく、テンペストバーガーをやるためのお店を横浜に出してしまったんです。本当にやらかしてしまった。」

社員を雇っていたものの資金計画がまわらず人件費が払えない。自分がお店に入る。お母様にも手を借りる。店長をやっていると一瞬で終わってしまう毎日。

お店は1年半で閉店。その後はお客さんだった方がお店を買い取り、リニューアルしてさらに1年営業を継続したものの、結果としては失敗となってしまった出店。

けれど、出店をきっかけに入海さんには特別な出会いがありました。

それは、テンペストバーガーを気に入り毎日のようにお店に足を運んでくれていた、昭和大学医学部の門倉義幸先生とのご縁。入海さんと門倉先生は意気投合し、お店を営業していた間にも、門倉先生からいろんなご縁をつないでもらっていたそうです。

入海さん後編2

お店を受け渡してからは、テンペストの卸しでコンサルとして関わっていた入海さんですが、テンペストの事業化が思ったようにうまくいかず、法人の経済状況は苦しくなります。

「お店を閉めて、テンペストの事業化がうまくいかなくて。散々やったよな、もういいんじゃないか…と辞めようとしていた時に、門倉先生がまた助けてくれました。」

ご自身の患者さんが「研究に役立ててほしい」と病院へ寄付をくださっていたという門倉先生。オーガニックにも関心が高かったその患者さんの気持ちを、せっかくだから食品分野で研究することで生かしていきたい。それをきっかけに米豆麦造り株式会社と複数の大学とで共同研究契約を結びます。

そこからさらにいろんなご縁をつむぎ、多くの応援を受けながら現在も活動されています。

人のご縁を大切にされてきている入海さん。

お話を聞きながら、入海さんの必死さや何度も挑戦しようとする姿勢に、多くの応援が集まってきているのではないかと感じました。

事業化の経験から培った「一物全体」のテンペストへの想い

入海さん後編

(写真:テンペストに対して同じ価値観を持って集まっている、テンペスト仲間の皆さまと入海さん)

もともとは大学でバイオテクノロジーの最先端を学んでいた入海さんにとって、はじめテンペストのような発酵食品は「古臭い」と感じるほどだったそう。ですが、テンペストに関われば関わるほどに、自然食やオーガニック、有機農業など、その深さに気づいていったと話してくださいました。

一見効率は悪いかもしれないけれど、その土壌に住んでいる微生物やいろんな有機質なものをいっぱい入れながら育てていることで、病原菌に強かったり、変化に強いものを育てるのが有機農法。

「世の中にも共通しているところがあって、命あるものに無駄なものはないと思うんです。有機農業の世界に触れることで、僕自身、一人ひとりの価値観を大切にしたいって思うようになったんですよね。」

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(写真:千代田区にあるベーカリーカフェ「COLAZIONE VARIO(コラッツィオーネ ヴァリオ)」にて販売されている、テンペストを使用したテンペストバーガーバンズ)

たくさんのご縁をつむぎながら事業を発展させてきた入海さんの根底にある価値観は、テンペストを通じて広がる世界観とつながっているのだと感じます。

「命あるものに無駄なものはないというマクロビオティックでいわれる『一物全体』という価値観があります。その考えはすごく好きでテンペストもその考えを重視して開発したつもりです。」

そういって「テンペスト」の名前の由来を話してくださった入海さんの表情からは、テンペストへの強い想いと自信が伝わってきました。

テンペストが「日常食」になる日まで

入海さん後編4

(写真:目黒区にあるヴィーガン料理店「レンボーバード ランデヴー」で販売されているテンペストバーガー)

会社勤めされていたところから、30歳で起業して、たくさんの紆余曲折を経て「テンペスト」を世の中に送り出してきた入海さん。

「いろんな人の日常食になって食べてもらえたら。肉の代わりではなく、肉食の代わりにしてもらえたらいいと思っています。」

少量で作っていることからやや値段が高いというテンペストですが、たくさんの人に知ってもらい日常食として取り入れてもらうことで、生産規模を上げて価格を下げていくのが次のステップだと話してくださいました。

今の状況に満足することなく次なるステージを見据えている姿勢から、どこまでも自分らしく生きようとする入海さんの「反骨精神」が伝わってきます。

たくさんのご縁を大事にしながら、自分の目指すものにまっすぐ向かっていくこと。テンペスト開発の背景には、そんな入海さんのストーリーがありました。

素敵なお話をいただいた入海さん、ありがとうございました。

次回もお楽しみに。


■米豆麦造り株式会社HP
 http://soilist.co.jp/

取材協力:
■レインボーバード ランデヴー
 〒153-0052 目黒区祐天寺1-1-1 リベルタ祐天寺1階
 TEL : 03-3791-5470
 http://www.ls-adventure.com/

※この記事は、LIFESTYLE More(web版)からの転載です。

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