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ウィークエンド世界食堂|イさんの韓国料理
2024年11月30日(土)、大阪府豊中市のカフェ・サパナにて「ウィークエンド世界食堂」を開催しました。今回のシェフは、お子さんたちの留学をきっかけに来日したイさん。29名の方が参加され、今回も異国の家庭料理を通した、普段着の国際交流を、みなさんに楽しんでいただきました。
シェフについて
●イ ヒャンラン|이향란 李香蘭
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忠清南道(チュンチョンナムド)のアルプスと言われる青陽郡(チョンヤンぐん)出身。ハングルや韓国料理の講師、カフェ・サパナのランチでシェフを担当している。韓国では、公立中学校・高校の国語教師をしていたが、子どもの留学をきっかけに来日。好きなことは料理。料理は私たちに喜びを与え、健康を守ってくれる基本であり、万病に勝たせてくれる薬のように考えており、とても大切なもの。料理をつくるときには、いつも大切なお客様を迎えるような気持ちで準備している。
韓国について
中国大陸から続く朝鮮半島の南半分で、広さは日本の約4分の1。農業が盛んで、米やさまざまな野菜がつくられている。三方を海に囲まれているため、漁業も盛ん。四季がはっきりしており、生産される食材は日本とよく似ている。大きく9つの道(日本での県に近い)に分かれ、産業や風土、料理に違いがある。焼肉のイメージがあるが、魚介類、豆腐もよく食べ、たくさんの野菜、穀類を食べる。キムチや塩辛、味噌漬け、醤油漬けなど保存食が常に用意され、乾物も多く使われる。(参考:絵本世界の食事3『韓国のごはん』)
メニューの打ち合わせ
打ち合わせをしたのは、まだ暑い盛りの8月でした。イさんは、いつも穏やかな笑顔を絶やさず、とても思慮深く、まじめな方です。カフェ・サパナのランチでも、長くシェフをされているベテランですが、11月の回にシェフをお願いすると決まってから、何度も参加者としてウィークエンド世界食堂に来てくださいました。他のシェフがどんな料理をつくっているかを見て、自分の回ではどんな料理を出すのがいいか、ずっと悩まれていたようでした。
そんなイさんが、悩んだ末にメイン料理として提案してくださったのはスユク(ゆで豚)。とてもシンプルなお料理でちょっと意外な感じがしました。イさんが説明してくれます。「開催日は韓国ではちょうどキムジャン(キムチを漬ける行事)の時期にあたります。そのキムジャンの後にみんなで食べるのがスユクなんです」。それを聞いて、これ以上ぴったりなメニューはないと思いました。漬けたて(浅漬け)のキムチはもちろん、ほかに韓国で特別な時に食べる料理も加えることになりました。そしてテーマは「キムチを漬けるときにみんなで食べる料理」に決まりました。
調理の様子
イさんのお料理はとにかく丁寧で手間と時間がかかります。キッチン担当の飯田さんと早朝から準備に入りましたが、それでもどんどん時間がすぎていきます。
韓国のお料理も見た目の美しさがとても大事です。開始時間が迫る中、ジョンで使う椎茸に飾り包丁を入れようとしたイさんに、今日は残念だけれど、あきらめましょう、とお願いする場面もありました。
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会場の様子
壁には、イさんからの提案で、お孫さんたちが1歳のお祝い「トルチャンチ」で着た韓服を飾りました。また、飯田さんが以前韓国で買ってきたという韓国の仮面劇「タルチュム」のお面も飾りました。
参加者の方は、地元の豊中市の方が3分の2を占め、池田市、宝塚市、猪名川市など近隣市からも足を運んでいただきました。リピーターの方が多かったのも印象的でした。
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料理の説明と参加者の感想
ウィークエンド世界食堂では、毎回、料理やシェフ、母国についての簡単な紹介を載せたメニューをみなさんにお渡ししています。加えて、みなさんにお料理を食べていただきながら、イさんから直接、お料理について説明してもらいました。
※>>以下はメニューより、「」内はイさんからの説明。以下同様。
ーキムチをつくる日にみんなで食べる料理ー
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スユク(ゆで豚肉)と豆腐|수육과 두부
>>晩秋から初冬にかけてのキムチを漬ける行事「キムジャン」のあとに食べる定番料理。漬け込んでいる間に鍋をかけておくと出来上がる。漬けたてのキムチと相性がいい。
「キムジャンは大仕事なので、みんなとっても疲れます。その疲労を回復するためのご馳走がスユクです。豆腐はみんな入れるわけではないですが、私は必ず入れます。豚のスープの味が染みて、美味しくなりますので」
※>>以下はメニューより、「」内はイさんからの説明。以下同様。
漬けたてキムチ|겉절이
>>キムジャンでは、1日目に白菜を塩漬けし、2日目に薬味(ヤンニョム)をはさみ混み、漬ける。キムチ用の冷蔵庫で温度を調整することで1年中食べられるようにする。
「このキムチは浅漬けですが、本来のキムジャンのキムチは株で漬けて、熟成させるものです。今では、どの家にもキムチ用の冷蔵庫がありますが、昔は、土の中に埋めた壺で保存していました」
チャプチェ|잡채
>>韓国では誕生日やお祝いごとなど、特別な日に食べる料理。
「チャプチェは、混ぜるという意味のチャプと、野菜という意味のチェからできている言葉です。王朝時代からある古い料理ですが、もともとは野菜だけでつくられていました。春雨が入るようになったのは近年ですが、今では、春雨なしのチャプチェなど想像できなくなりました」
チヂミの盛り合わせ|모듬전
>>丸い肉団子のチヂミはトングランテン。材料の形を生かした一口サイズのチヂミはジョンと呼ばれる。ジョンにはマッコリを合わせるのが定番。
「チヂミといえば、粉と具材を混ぜて丸く焼いたものが一般的ですが、このチヂミは法事やお正月につくる特別な料理です。手がかかって大変な料理なので、お嫁さんはみんな憂鬱になります(笑)。最近は出来合いのものを買ってくる人もいます」
サツマイモご飯|고구마 밥
>>韓国でも日本と同じく、サツマイモはみんなが大好きな秋の味覚。
「サツマイモは日本からやってきました。韓国語では『コグマ』といいます。焼き芋にしたり、煮て食べたりすることが多いですが、秋には、炊き込みご飯にして食べます」
キノコの味噌スープ|버섯 된장국
>>韓国ではスユクのゆで汁をスープに使う。味噌を入れてゆでるので味噌スープに。
「スユクは豚を1時間くらい煮ますので、もう煮汁のほうが美味しいくらいです(笑)。韓国では、一晩外に置いておくと脂が固まるので、それを取り除いてスープに使います」
かぼちゃと小豆のデザート粥|단호박죽
>>韓国には白粥だけではなく、様々な種類の粥がある。今回はもち米粉を使い小豆と甘さを加えてデザートに。
「韓国かぼちゃは、とても大きくて、甘くないです。今回使っている南京かぼちゃは、韓国かぼちゃと区別して『甘いかぼちゃ』と呼んだりします。」
参加者のみなさんとの交流
今回、参加者からの質問で多かったのは、やはりキムチについて。たとえば、それほど辛くないのに、香りがよくて、色鮮やかなのはなぜ?という質問には「風味の良い韓国の唐辛子を使っています。色のためのは(辛くない唐辛子である)パプリカパウダーを追加しています」といったコツを紹介してくれました。また、こんなに美味しいなら、自分でもつくってみたいと、つくり方の質問もありました(イベント終了後にイさんから、欲しい方に渡してくださいと詳細なレシピを頂きました。参加者でご希望の方は、こちらのメッセージよりお知らせください)。
13:00の回には、イさんの娘さんと、壁に飾った韓服を着たお孫さん(今でではもう小学生と中学生)も参加されており、韓国での1歳のお祝い「トルチャンチ」での、子どもの将来を占う「選び取り」のことや、子どもの韓服の特徴などお話してくださいました。
参加者の方からのメッセージや感想
「とてもおいしくて、やさしいお味のお料理、ありがとうございました。私は特にキムジャンの時に食べる特別なお料理ということで、スユクに興味がありました。とてもおいしかった!それと最後にいただいたかぼちゃと小豆のデザートは身体中にエネルギーがわきおこる気がしました」
「キムチがとてもおいしく、この秘密はなんだろうと思いました。ご飯をたべながら、つくった方のお話を聞けるという、そしてその国の文化のお話まで、とても豊かな企画だと思いました。イさん、とてもおいしくいただきました!」
「食欲をそそる美しい色彩と美味しいお料理の数々。ほとんど初めて口にするものばかり、心よりご馳走さまでした。朝早くからの仕込み準備ご苦労さまでした。みな様の心のこもったお料理最高でした。今回で終了はとても残念ですが、今までありがとうございました」
「いつもありがとうございます。家庭料理って奥深いなーというか、文化の違いをおいしいごはんでたいけんできるのは素晴らしいことだなと毎回感心しています」
「韓国のスペシャル料理を初めて食べておいしかったです。韓国ドラマのチヂミは今までテレビで観てましたが、これが本場の上品なチヂミと知り、うれしかったです。ごちそうさまでした」
「チャプチェが日本で食べる味とは少しちがい、とても美味しかったです。キムチがみずみずしく、とてもおいしかったです。また、韓国に行きたくなりました。娘が大学生の時、釜山に1年半留学していましたので、特に韓国は身近に感じています。日韓関係がもっと良くなることをいつも願っています。ありがとうございました」
終わりに
今回が最終回のウィークエンド世界食堂も盛況のうちに終了しました。お隣ということで、交流も深く、なじみのある料理も多い韓国ですが、その料理をつくってくれたイさんから、その料理を食べる意味だったり、暮らしとのつながりだったり、実際に味わいながら聞くことで、また少し、韓国という国への理解が深まり、そこで暮らす人々、あるいは日本で暮らす人々との距離が縮まったのではないかと思います。Life on the tableでは、これからも、こういった「食べて、知る」機会を増やしていきたいと思っています。
おしらせ
2024年5月から全6回行ってきた「ウィークエンド世界食堂」は今回で一旦終了することになりました。
カフェ・サパナでの平日ランチや1dayレストラン、またLife on the tableが企画する食のイベントでこれからも食を通した国際交流をお楽しみください!
イベントについては、カフェ・サパナやLife on the tableのSNSにてお知らせします。ぜひフォローしてください!
基本情報
ウィークエンド世界食堂|イさんの韓国料理
日時:2024年10月26日(土)11:30の部/13:00の部
会場:カフェ・サパナ
主催:カフェ・サパナ(渉外・受付:筒井百合子、キッチン:飯田美千代)
企画協力:Life on the table (全体コーディネート・広報:宮浦宜子)