誰もが探究的な学びのつくり手になれる
2021年12月24日(金)、京都府舞鶴市の小・中学校の先生方向けの研修をオンラインでさせてもらいました。
テーマは「探究的な学びをいかに推進するかー隠岐島前高校の実践をヒントにー」。探究的な学びを理解することにおさまらず、現場でのつくり手になることをみすえながら、90分の研修を宮野さん(隠岐島前高校コーディネーター)と2人でおこないました。
今回はその様子をダイジェストでお届けします。「探究」と聞くとつい身構え、漠然とした不安感を感じることもありますが、そんな人にこそ読んでもらいたい記事です。
「探究的な学び」について探究的に学んでいきましょう!
グランドルールは「安心して緊張する」
いよいよはじまりました。「ぼくら自身も学ばせてもらう気持ちで参加しています。」とお伝えしつつ、最初にこだわったのはグランドルールの設定です。
深呼吸するなど、それぞれのペースでリラックスしてもらった後、「安心して緊張する」という本日のグランドルールをお伝えしました。「安心と緊張は、一見すると矛盾しているように感じるんですが、実は学びが深まるのは安心しながら緊張しているときなんです。不安感や緊張感を否定せず、むしろこれを活用しながら学びを一緒に深めていきましょう!」と呼びかけました。
期待していることを言葉にする
よりよく学ぶには、期待していることや持ち帰りたいことをクリアにしておくことも大切です。今回はオンラインだったので、チャットも活用しながらそれぞれの参加動機を確認していき、一緒に探究していく雰囲気を少しずつ醸成していきました。
(例)
・学びと探究的な学びの違いは何か?
・生徒が探究に向かいたくなる課題設定とは?
・探究的な学びを学校全体でおこなっていくための体制づくりとは?
「そもそも」を哲学対話する
宮野さんから隠岐島前高校の事例を簡潔に紹介してもらい(分かりやすかった!)、質疑応答の時間をとった後、「そもそも」を考える哲学対話の時間をとりました。
この日のお題は「『探究』を『探究』という言葉を使わずに定義してみよう!」。「なにげなく使っている言葉ほど『そもそも』について考えることを忘れがちなんですが、誰かの言葉を鵜呑みにせず、自分なりの言葉で定義できるようになると軸がしっかりするので、試しにやってみましょう。」と一緒に考える時間をとりました。
これをするときは「試しに」というのを大切にしています。つい「正しさ」にこだわってしまうのは人間の性ですが、だからこそそれを横に置き、試行錯誤を楽しみたいと思っているからです。(この研修でも「試行錯誤こそ探究なんだ」という発言が参加者から出てきました。)
この時間から、参加者同士での学びあいも活発になっていきました。
授業設計演習
今回のもうひとつの目的である「探究的な学びのつくり手になる」ために、後半からは授業設計演習にはいりました。A〜Cの3つのチームに分かれ、20分という限られた時間で実際に授業を設計してみる時間です。
「探究的な学びってこういうことをすることなんだ、と生徒に伝わるような50分の授業を設計してみてください。限られた時間なので、完璧に設計しようというよりは、お互いに意見を出しあいながら、形にしていってもらえたらそれで大丈夫です。」とお伝えし、3つのブレイクアウトルームに分かれました。
探究的な学びには難しすぎず、易しすぎず、それこそ安心して緊張できる問いを設定することが大切だと思っています。今回もそれまでのやりとりを踏まえながら「これかな」「あれかな」と試行錯誤し、最終的に上の問いに着地しました。
問いはズレから生まれる
「50分で伝わる魔法のような授業って本当にあるのか」「いやいや、探究のスタートラインに立てるような授業なら設計できるだろう」と活発に意見を出しあっているうちに20分が経ち、いよいよ共有の時間です。
・問いを立てたあとの仮説ー検証のサイクルを回すことを大切にしたいと思いました。あーでもない、こーどもないと試行錯誤することを経験として積み重ね、これが探究なんだと伝わってほしいです。
・もっと調べたくなるような問いの前段階をつくってあげたいです。固定観念がひっくり返ったときに問いが生まれると気づいたので、そうした発見の時間を大切にしたいです。
・これまで逆算で考えていたが、生徒の身近にある「?」をもっと大切にしながら授業を設計しようと思うようになりました。
といったおもしろいアイデアをどしどし共有してもらい、「誰もが探究的な学びのつくり手になれるんだ」と確信に近いような手応えを得ました。
「ぼくたちも子どもたちもすでに無意識で探究してるんですね。探究は遠いところにあると思っていたけど、実は近くにあるんだと実感できました。」といった気づきの声も飛び出し、90分の研修は盛況のうちに終わりました。
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いかがだったでしょうか?「探究はなんだか難しそう」と感じることもありますが、それこそが遠ざけてしまっていることもあります。「探究は実は近くにあるんだ」という声のように、ざっくばらんにやりとりしながらほぐしていくことで、探究的な学びにちょっとでも親しみを感じてもらえたら嬉しいです!