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右脳も左脳も伴走者には必要だ。五感で感じ、関わりの中で「本物」を目指したい。

「伴走」をテーマにした連載の第三弾!

今回は島根県立宍道高校の高橋恭子先生(専門は美術)と対話しながら、学びの現場における伴走について理解を深めていきました!

同校から「しまね探究フェスタ」に参加した高校生が印象に残っており、その彼らと日常を共にしている先生から話を聞き、学ばせてもらいたいと思ったのが、今回の声かけのきっかけでした。 

先生が現場で大切にしていることやその背景をひもときつつ、後半は先生の学びあいや校内研修に、話が向かっていきました。

今回も一緒に学んでいきましょう!

高橋恭子先生(以下、高橋):私の中では、伴走は「共に走る」というよりも「関わりing」という、beingに近い感じなんですよね。色んな生徒や先生、地域の人たちが一緒に学びあい、わくわくするような感覚を、関わりの中でつくっていきたいんです。

澤正輝(以下、澤):なにやらこだわりがありそうですね。

高橋:見ていたい、聞いていたいというのはもちろんあるんですけど、触り心地というか、香りや匂いといった五感で感じたことを大切にしたいんですよね。

みんな主観で生きているじゃないですか。そうしたときに、見るだけ、聞くだけではわからない何かに「関わりing」したいんです。

澤:その見るだけ、聞くだけでは分からないものに、恭子先生はどうしてこだわってるんですか?

高橋:おそらくですけど、高校生だった息子が脳の手術で修羅場をくぐり、生きて帰ってきたけど、障がいが残り、そのリハビリに付き合った経験が影響していると思います。言葉も学力も全部なくなってしまいました。

「時計」と言われても、その概念がないから分からない。空(くう)を見ながら人の気配を感じる日々でしたけど、お互いの存在を感じながら生きていることに「あ、り、が、と、う」と言い合いました。

「ゴールに向かって一緒にがんばる、走る」というより、同じ空間に「いた」。そして一緒に悲しみ、一緒に苦しんだ。そのとき伴走の原点を知ったような気がします。

澤:「伴走の原風景」についてあれこれ考えていたことを思い出しました。例えば、子どもたちが学校に出かけるときに、お母さんやおじいちゃんが「いってらっしゃい!」って背中を見守ってくれるのって、ひとつの原風景ですよね。ぼくはそう感じています。

高橋:やっぱり愛情ですね。

澤:愛情だと思いますよ。1年前に「伴走者とはどのような存在なのか?」を言葉にしようと思い、書いたのがこれでした。

最近、「共に在り、共に学び、共に創る」存在と置き換えるようになったけど、根っこにあるのは愛情です。

高橋:だからこそ私は、見えない、聞こえない何かに「関わりing」しようとしてるんですね。

澤:素朴な疑問なんですけど、学校の先生方は、生徒や学生が成長したり、変化したりすることは嬉しいものなんですか?

高橋:子どもたちがよくなることを願いつつ、想定外の変化を好まない人もいますよね。

澤:先生、いや、大人と置き換えてもいいかもしれないけど、自分の手の届く範囲や抱えられる範囲をこえて成長や変化しようとしたときに、無意識的に抑えようとしちゃうことってありますよね。

自分の器をこえるかもしれない相手にも愛情を集中的に注げるのか。学びに関わる人は、常にこれを問われている気がしています。

高橋:特に中堅以上は意識的にしないといけないですね。

教員の学びあいって大切だと思います。島根県内にも澤さんや豊田さん、吉賀高校の中村先生など、ふと思ったときに話を聞いてみたい、相談してみたいと思う人が何人もいます。

宍道高校内でも「しまね探究フェスタ」を一緒に見たり、発表会でファシリテーションする機会をつくりながら、先生方と試行錯誤を続けています。手を出し過ぎたり、出さな過ぎたり、色々あります。隠岐島前高校の校内研修も参考にさせてもらいました。

世代や立場、学校や地域をこえて、学びあい、伴走しあっていきたいですよね。

澤:島前高校の校内研修ではぼくもたくさん学ばせてもらいました。当たり前ですが、教科ごと、先生ごとにこだわりがあり、プライドがある。それをリスペクトしつつ、開きあい、混ざりあうプロセスはとてもエキサイティングでした。校内研修に可能性を感じています。

高橋:宍道高校では「探究」「ICT」「多様性」を研修の柱にしています。失敗してなんぼ、叩かれてなんぼだから、どんどんやっていこうと思います。間接的にでも、伴走してもらえてると感じられる人がいるのは大きいですよね。

高橋:間接的に伴走してもらったなと感じるエピソードはありますか?

澤:ぼくはいま30代後半なんですけど、だんだん年下から学ぶことが増えてきました。

ひとつ例を出すと、アウトプットすることにどちらかといえば躊躇があったんです。サボってきたんですが、ある日出会った20代の若者から「アウトプットは資産だ。」と聞き、はじめは戸惑いつつ、「確かにそれがいまの感覚だ。」と感じるようになり、修正していきました。

直接的に伴走してもらったわけではないけど、新しい感性をインストールするきっかけになる出会いでした。

高橋:教員の学びあいにもつながりそうですね。

澤:海外に目を向けると、台湾の大臣は、35歳以下の若者を「リバースメンター」として招き、一緒に働きながら、新しい知性を吸収していると言います。この仕組みは日本の学校にも応用できそうですよね!

【高橋恭子先生より一言】 

澤さんの生の言葉で私の内なるものが引き出されていくプロセスを体感し、ご自身の考えやエピソードも聞き、そこから学んだことをさらに自分の中で深めた貴重な体験でした。「ちょっとアートなCreativeな関わりing 」=愛の伴走ものがたり(with Sawa)でした。



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