伴走者にはアンラーンが必要だ。
伴走者は、リセットする
廣田拓也(以下、廣田):いきなり本題ですが、澤さんはどうして伴走者にアンラーンが必要だと思ったんですか?
澤正輝(以下、澤):相手ごとにアプローチを変える必要があるからです。さらにいえば同じ相手でも今日と明日では違うので、アプローチも柔軟に変えていく必要があると思っています。誤った理解で関わってしまわないように、すでにフレッシュでありたいです。
廣田さんはいかがですか?
廣田:伴走する前提として、相手が変容することがあるんです。相手が変わり続けるなら、自分も変わり続けないといけない。
もう一つは、同じ業界の会社であっても変容は同じではないので、アプローチも変えないと通用しないんですよね。100社あれば100通りある。であれば都度ごとに経験をリセットしないと、仕事を進められないと思っています。
とはいえ、仕事ごとに「よし、これを忘れよう!」としてるかといえば、そうでもない。当たり前のこととしてやっている気はしています。
澤:当たり前になる以前に、リセットしなかった時期もあったんですか?
廣田:長くなればなるほど、パターン認識が増え、脳が自動的にそうしてしまうことは増えていく気はします。だから、経験を積めば積むほどアンラーンは必要になるんでしょうね。
澤:相手からいただいた資料やその人の表情を見れば、すでに知っているパターンに当てはめ、その後の展開もある程度は見えてしまう。経験のなせる技ではあるけど、罠だったりもしますよね。
廣田:会社のメンバーが嫌な顔をしている時は、だいたいそういう時ですね笑。「それ、廣田さんの経験値ですよね。経験値が必要な時はそれを引き出すので、今は出さなくていいです。」ってメンバーから指摘されることが今でもあります。自分ひとりではなかなか気づけないですよね。
澤:「それ、経験値ですよ。リセットしてくださいね。」というシグナルを送ってもらえる自分であり続けるのはとても大事ですよね!
廣田:そこ、とても大事ですよね!アンラーンは一人では完結できないですよね。
伴走者は、越境する
澤:そうあり続けるために、何か工夫していることはあるんですか?
廣田:今、教育業界に越境してるじゃないですか。そうすると、通用するものもあればしないものもあるんです。小出しにしながら、これは受け取ってもらえた、これはなかなか受け取ってもらえない、という経験をしているんです。
こうしたことをやり続けながら、自分は全てを知っている感から抜け出ないといけない気がしています。なので、数年ごとに違う業界に越境するようにして、その感覚を得続けるようにしてるんですよね。
澤:分かります。ぼくの場合、伴走者は「プロの素人」であり続けるのが大事だと思っているんです。素人過ぎてもダメだけど、プロ過ぎてもダメ。どちらも関係性が安定し過ぎてしまう。
「プロの素人」であり続けるために、業界をまたいだ複業を意識的にするようにしているんです。
廣田:アウェー感を感じ続けるって大事ですよね。
パターン認識って、観察とは違うじゃないですか。脳の働きですよね。本当はその度ごとに相手を観察しないといけないのに、経験を積めば積むほどショートカットしてしまう。その点でも、アウェーに出ることは大切なんでしょうね。
伴走者は、解きほぐす
──話を聞きながら、相手がラーンしていることを理解することが、伴走者がアンラーンするためには必要だと感じました。そのために何か意識していることはありますか?
澤:ある日、「『信頼』の反対語は『安心』だ」と言ってきた生徒がいたんです。これ、辞書的に言えば違いますよね。そう訂正することもできたけど、それこそリセットして、どうしてそう考えるのかを詳しく聞いていったんです。
そしたらどうやら、信頼できる人は尊敬している人のことであり、目標にしたい人のことだったんです。一方、安心できる人は居心地の良い人のことで、どちらかと言えばもっと学び、もっと挑んでいきたいから、今は信頼にこだわりたいと話してくれました。
これ、詳しく聞かないと分からないですよ。
廣田:分からない、分からない。
澤:急いで結論を出そうとせず、一緒に解きほぐしてうちに、「それなら確かに『信頼』と『安心』は違うね!」って理解することができました。学ばせてもらいましたね。
廣田:おもしろいよねぇ。
澤:廣田さんはどうですか?
廣田:相手が学んできたことに敬意を払うことが大事な気がしています。
「あいつらはどうして高圧的なんだ。これを変えていかないといけない。」といったケースが例えばあったとします。
こうした時に、「背景には学びがあったんだ。事業を推進するためには高圧的にやることも必要だと学んだ背景があったんだ。」と考えるようにしてるんです。
時代や環境によっては正しかったとしても、今はボトルネックになっていることってありますよね。それを解きほぐすには、「これは学んできたことだったんだ!」と理解しつつ、「でも次はどうしよう?」とその人が思えない限り、どうこうできない気がするんです。
そうなっていくためには敬意を払うことが大事なんだと思います。
澤:「変える」というよりは「変われるように解きほぐす」って感覚が大切ですよね。成功体験として守りたいこともあれば、それがゆえに身動きがとりづらくなっていることもあるだろうから、敬意を払いつつ、変わっていく準備を一緒に整えていきたいですよね。
伴走者は、相互に変容する
──「解きほぐしつつ、伴走者も解きほぐされるというのはあるものですか?
澤:あると思います。その関係性になれると、「するーされる」をこえた、創造的な関係性と言えますよね。
「解」ぐしあい、「祝」ぐしあうという関係性が好きなんです。お互いの考えていることや感じていることをなめらかにしつつ、この関係性そのものを喜びあう。そうなれると、ラーンとアンラーンの循環はもはやデフォルトになっていると思います。
廣田:仕事の例で言えば、答えを持ってきてほしい方には伴走できないですね。
「ぼくも分からないです」って言える関係性になっていないと、伴走はできない気がします。なので、相互の話は確かにあると思いますね。
伴走者は、変化を楽しむ
澤:今日、これだけは伺いたかったんです。廣田さん、変化するのは楽しいですか?
廣田:楽しいですね。
澤:やっぱりそうですよね。
廣田:前提としている考えが違うんだっていう経験をこないだしました。
「変化を楽しむくらいじゃないと!」とある人に言ったんです。そしたら、「いやいや!変化は怖いです。どうしたらそう思えるんですか?」って聞かれたんですよね。
ぼくにとって変化は「状態」なんです。そもそもコントロールできるものじゃないから、それを受け入れて、いかにゲームメイクするかを考えるしかない。
それで楽しむようにしてるんですけど、どうやら違う考えもあるんですね。
澤:まさにそうだと思うんです。
変化を「状態」と考えたら、吸ったら吐いて、吐いたら吸うのと同じで「そういうもの」ですよね。でも、変化はするものであり、させられるものだと考えている人にとっては、「変化を楽しもう!」と言われてもしんどいと思うんです。
そうした考えに近づける「コツ」はあったりするんですか?
廣田:時間をかけるしかないと思います。年齢や生い立ちが色濃く影響しているからです。
澤:「かかる」ではなく「かける」。価値観が解きほぐされるだけの時間が必要ってことですね。
廣田:もう一つ。アンラーンは「捨てる」ではないんですよね。「手放す」だけで「捨てる」わけではない。手から放しただけだから、必要ならまたつかめばいい。
澤:同感です。ぼくは「脱ぐ」って動詞をよく当てます。脱ぎたければ脱げばいいし、着たくなったら着ればいい。ラーンとアンラーンの関係性って、それくらいなめらかなものですよね。
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ここまで読んでもらいありがとうございました!ラーニング・ジャーニー伴走編はこれからも続きます。また次回にどうぞご期待ください!
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【2月21日追記】
読者の皆さん、ありがとうございます!!!