雄獅少年2を観た
2024年公開!と言いながら全然公開日が出ないまま12月目前、もう2024年終わっちゃうんだけど……と心配していたところに「12月14日公開!」と発表されたのが12月初頭。2週間後と驚いていたところに「7日から先行上映」の情報。なるほど、これが中国スピードというやつか。
先行上映というのは試写会とも違い、普通に劇場で上映されている。作品にもよるのだろうが、上映館もそこそこの数であり決して少なくはない。強いて言えば日に1回のみの上映であることと、おそらくチケットが少し安いことだろうか。この先行上映システムはよくわからないので研究の余地がある。
公開日直後にテストがあるのでそれが終わってから……と思っていたのだが、先行上映を知り「それならテスト前に行っちゃお〜」ということで、急遽チケットを取った。立地のせいか先行上映のせいかわからないが、私の他に3人ほどしかおらずほぼ貸切状態だった。
さて、待ちに待った続編である。そしてこれを機に言うが、私が滞在しているのは今作の舞台となっている上海である。舞台になった街で大好きな作品を観る。これほどの幸せはない。以下は鑑賞後の感想を思うままに書いたテンションのおかしな駄文である。
前作の決勝戦前、阿娟は上海へ出稼ぎへ行く途中だった。今作は上海へ渡ってしばらく経ったところから始まる。なんと阿猫と阿狗も上海に来ている。この3人が揃っているだけでもう嬉しい。獅子舞を続けているのも嬉しい。そして3人とも(とはいえ阿狗は相変わらずなのだが)逞しく成長しており、本編が始まってしばらくは「あら〜大きくなったわねえ〜見違えたわあ〜」と親戚のおばちゃんのような気持ちであった。阿猫ちょっとかっこよくなってないか?なぜかこの時点でもう泣いていた。年々涙腺が弱くなるのは勘弁してほしい。
もちろん前作に引き続き獅子舞スポーツコメディムービーなのだが、今作は予告編を観る限り唐突な格闘技ムービーである。なぜボクシング?格闘技?と思っていたが、とあるきっかけで阿娟が廃れた中国伝統武術の道場の再興に協力することになるのである。
ここで前作もとい獅子舞に関するおさらいだが、中国の獅子舞には北方と南方の2つの流派がある。阿娟たちの故郷は広東省、つまり彼らの獅子舞は広東醒獅と呼ばれ、武術的色彩が濃いのが特徴である。
そう、武術の要素がある。これが中国伝統武術の道場の師範の娘の目に留まる。獅子舞で培った武術のセンスが活かされるのである。獅子舞と武術、そう繋がるか!と舌を巻いた。それにしても中国伝統文化を阿娟に背負わせすぎである……笑
今作の舞台は上海。前作で出稼ぎをする姿が描かれた広州よりも大きな都市だ。ゆえに阿娟たちの状況はより困難である。阿猫と阿狗も上海に出稼ぎに来たのだかなかなか仕事が見つからない。阿娟の2段ベッド生活は終わり、小さいけれど1つ部屋を与えられている点で前より生活環境は改善されているように見えたが、数日間6畳あるかないかと思われるその小さな部屋で3人で暮らすのは大変だ。そして阿猫と阿狗の仕事が決まる前に追い出されてしまうし、阿娟までも職を失ってしまう。
そうして路頭に迷っていたところに、道場再興への協力の話が出る。大きな大会に出て、中国伝統武術を世間にもっと広めること、賞金は折半だが8割をもらえる約束である。賞金は阿娟にとっても切望しているものである。彼の父親は奇跡的に復活したが、まだまだ医療費がかかるし、大きな都市の病院でしか治療ができない。
ここでまた現代中国社会を知る一端になるのが保険である。阿娟の父親は医療保険に入っていないことが医者との会話からわかる。労働中の怪我なのだから労災がおりてもいいのでは?と思うが、怪我によって仕事を辞めてしばらく経つ。そしておそらく出稼ぎ労働者には十分な医療保険すら保障されていないのだろう。推測に過ぎないが、大方合っているのではないかと思っている。
莫大な医療費が必要なのに職も住居も失った……となればとりあえずは寝る場所と食事はあるという点で道場に協力することにする阿娟。もちろん阿猫と阿狗も一緒だ。とはいえ道場も資金難のため、屋台で料理を売って生計を立てる。ここで阿猫と阿狗が振る舞う広東料理が大受けしてとりあえず商売は軌道に乗る。きっと2人も出稼ぎへ行き、飲食店の厨房で働いたりしてたんだろうな……と想像してしまう。
ところで阿娟が出場する大会であるが、これが例えば“中国伝統武術大会”というような類ではなく、“格闘技大会”というわりとざっくりとした感じなのである。対戦相手のジャンルはブラジリアン柔術、ムエタイ、ボクシングと多種多様である。格闘技自由形、なんて無茶苦茶な大会なんだ……笑
そして対戦相手のキャラクターがとにかく濃い。ブラジル人とタイ人のキャラの癖が強すぎる。そして彼らのセリフはちゃんとポルトガル語とタイ語である。前作がヒットした分、また上海という国際都市が舞台なこともあり、今作は国際色も豊かだ。キャラクターの濃さで言えば、武術の師匠もなかなかである。上海人なので時折上海語のセリフが混ざる。前作はところどころ広東語も聞こえてきたり、粤語の挿入歌もあったり、地域色をしっかり出していたところを今作も引き継いでいる。
なんと言っても今作の見どころは試合のシーン。前作も獅子舞のアニメーションが素晴らしかったが、さらに磨きがかかっている。格闘技という動きの多い題材をアニメーションで扱うのはすごい。思わず手に汗を握って観た。
前作からの成長を感じる部分と変わらず安心する部分があり、なんだか嬉しくなった。挿入歌や主題歌も新しくなったが、前作の曲の旋律がところどころで劇伴に混ざっていて涙を誘う。冒頭の水墨画アニメーションも健在だ。
成長といえば、中国語字幕で内容を理解できるレベルに自分の語学レベルも上がったことが感じられて嬉しい。そうは言っても上手く理解できてない部分もあるので、また観に行くつもりである。