眠れない夜のはなし
梅雨はいつの間にか明けて8月に入り、いよいよ夏本番といったところだろうか。寝苦しく眠れない夜が増えてきた。
眠れないとき、羊を数えろという話は昔から聞く。根拠はよくわからないが数えてみることにした。
羊が1匹、羊が2匹…だめだ、モフモフで暑苦しい。あれ、羊を数える単位って匹で合ってる?頭じゃない?ついでに牧畜犬のバーニーズマウンテンが1匹。バーニーズマウンテン?あの犬、そんなコーヒー豆みたいな名前だったかな。(あとで調べてみたら合っていた)
羊のモフモフが暑苦しいので代わりに山羊を数えよう。『アルプスの少女ハイジ』に出てくる山羊飼いのペーターになった気分でちょっと楽しくなってしまった。そういえばヨーゼフもバーニーズマウンテンだったか。まだ眠れない。
別の動物にしてみよう。馬はどうだろう。競馬場のようなところを想像して走ってくる馬を数える。馬が1頭、馬が2頭…馬が10頭…ってあれ、君を見るのは2回目だな?ぐるぐる走り続ける10頭しかいない馬を延々と数え続けることになりそうなのでやめた。
じゃあキリンは?キリンが1頭、キリンが2頭…キリンが20頭。キリンの密林の完成だ。
もう好きな動物を数えてみよう。猫が1匹、猫が2匹、猫が3匹…だめだ、可愛さに悶絶して眠れない。
ハリネズミが1匹、ハリネズミが2匹…ハリネズミが30匹。うわあ、トゲトゲの針山地獄だ。
動物を数え始めてどれくらい経っただろう。未だに眠れる気配はない。
こうなったら、眠そうな顔や雰囲気の動物を数えてみるか。つられて眠くなりそうだ。眠そうな動物…あ、ナマケモノ。
早速数えてみよう。単位はとりあえず匹でいいか。ナマケモノが1匹…1匹…なかなか動かない。そうだ、こいつは動きが遅いんだった。長い木の枝をイメージしてそこにナマケモノを引っ掛けていきながら数えよう。
ナマケモノが1匹、ナマケモノが2匹…あれ、これなんか可愛くない?ナマケモノフックとか商品化したら売れるんじゃない?ナマケモノって動きが遅いし眠そうだけど、よくよく見たら可愛い顔してるじゃん。
このあたりでアホらしくなってきた。何をそんな真剣に考えているのか。しょーもないこと考えてないでさっさと寝よう。
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私はどうやらそのまま眠ったらしい。きっと途中からは夢の中で数えていたに違いない。気づいたら朝だった。
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眠ろうとして、何も考えないように、頭の中を空っぽにしようとすることがどうやら苦手らしい。だったらいっそのこと、脳みそフル回転してなんでもいいからなるべくくだらないことをいろいろ考えて、ひたすら頭を使ってみたら、だんだん疲れてきて眠たくなるようだ。
ポイントは、なるべく楽しくて、クスっと笑っちゃうほどくだらなくて、心底どうでもいいことを考えること。
これが、私の、眠れない夜の対処法だ。