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浦河町とインド人:データ編
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今回のイベント企画に至った理由
今年から北海道浦河町役場の方々にお願いをして、インド人居住者について学ぶ機会を設けた。
ちょうど私が浦河町の町長さんにおはなしをうかがったのが、浦河町のインド人居住者が100名に迫る2017年頃。今では300名近くのインド人が浦河町に住んでいるとのことで、いよいよ浦河町の力になれることはないかと、考え始めた。
まずは、地元神戸インド人を含め、多くの方に浦河町の実態を知って頂こうと公益財団法人 兵庫県国際交流協会に神戸市と浦河町の交流に関する企画を提出したところ、「是非、多くの方に知って頂く機会にしてください」とのことで、ご支援を頂くことになった。
浦河町はリトルインディア 西葛西よりもインド人比率が高い!
現在、浦河町の軽種馬農家は160戸(令和2年2月1日付)。中央競馬で走る馬の8割は日高産地で、浦河町内には3,000頭が育てられている。さすがに、人よりも馬が多い…という状況ではないが、それでも浦河町の人口は約1万人なので、やはり馬が多い環境であることは間違いない。その浦河町民約1万人のうち、外国人は約400名(令和5年3月付)で人口の約3.6%(28名に1名)を占めている。この外国人比率は、北海道の大都市、札幌市よりも多い比率になる。その外国人のうち、インド人が約300名(2022年時点:283名)なので、浦河町総人口の約3%をインド人が占めていることとなり、実は、最新のリトルインディアと名高い西葛西よりも、インド人比率はずっと高い。
そのインド人居住者の増え方も爆発的だ。約10年前の2014年は、インド人は0名だった。それが、3年後の2017年には100名になり、さらに3年後の2020年には200名を超えている。3年毎に100名ずつ増えている状況だ。
浦河町のインド人は何者か?
では、このインド人は一体「何者」なのか。在留資格別にみると、町内在住の外国人のうち77%が技能ビザ。12%が家族滞在ビザで日本で暮らしている。インド人居住者も多分に漏れず、この技能ビザで浦河町へ渡ってきている。彼らは、馬の調教・飼育の経験が10年以上あるプロ集団だ。
冒頭説明した通り、浦河町は、軽種馬産業の町である。しかしながら、最近は騎乗員や牧場作業等に従事する人が不足し、人材確保のため外国人労働者を受け入れたところ、インド人が採用された…というわけだ。インド人にとっても、インド本国での1年分の給与が、日本の1か月分の給与に相当するとのことで、雇用者・被雇用者にとってもWin-Winという状況にある。
一方、意図的にインドから人を呼び寄せたわけではないため、浦河町は対応に追われているところもある。技能ビザ取得者は、その経験を活かすことを最優先としているため、日本語ができなくても発給される。したがって、日本語はおろか、英語すらままならないインド人も浦河町へやってくる。そういった点でも、2000年問題で大量に西葛西にやってきたインド人ITエンジニアとは状況がかなり異なることがわかるだろう。
さらに、1~5年で帰国することが多い技能ビザ取得者だが、技能ビザは家族帯同が可能であるため、家族を浦河町に呼び寄せたところ、その住みやすさや医療環境の良さから移住をのぞむインド人も増えてきているとのこと。
なかには、浦河町で出産を迎えるインド人妊婦者もあらわれ、ヒンディー語の母子手帳まで準備されている。2023年6月時点でも5名のインド人妊婦がいる。いわば、家族帯同でやってきたインド人女性は、さらにコミュニケーションが難しくなる。理解できる言語は、ヒンディー語やマールワーリー語が中心となってくる。そうなると、日常生活を送るにあたっても、色々と不安やストレスが重なり、家に閉じこもりがちになるのが気になっているとのことだった。そこで、地域住民との橋渡しを担っているのが浦河町地域おこし協力隊である。