喫茶室 ラブラド・レッセンス①到着
札幌駅から快速エアポートに乗って小樽へ向かう。10月の3連休、車内にもたくさんの人がいた。窓から見える北海道の景色。初めて降りる駅、初めて歩く道、初めて乗る電車、初めて見る景色。隣には会いたかった彼女がいて、2人ともまるでこれが普通のような顔をしていつものお出かけみたいに揺れる電車にもたれおしゃべりをする。
日々のこともくだらないことも何でも話して、内緒の話はこそこそと声を顰め、目を合わせてくすくす笑う。まだ電車に乗っているだけなのにすごく楽しい。そんなことをしている間に急に窓の外に海が広がった。
海だ!
海だね。なんだろ日本海かな。
北海道の海だ。すごい。
ものすごい方向音痴なので、今自分が日本地図のどこにいてどこに向かう電車に乗っているのかは言葉では分かっても物理的な位置は全然分からない。Google mapで見てみると石狩湾のようだ。電車はかなり長い間海沿いを走る。そもそも小樽が港町だ。そんなことも考えず、友に会う!カフェに行く!の精神で北海道にやってきた。
電車の窓からずっと海が見えている。天気も良く、真っ青な空に筆を走らせたような薄い雲、穏やかな青い海が続く。この電車が通勤電車ならぎゅうぎゅうの満員電車でも、全然座れなくても仕事嫌いでも毎朝乗れそうな気がした。
40分ほどすると小樽に着き、みんなぞろぞろと降りていく。駅の雰囲気がレトロで可愛い。
あのLeTAOはこれからきてるんだって。
と彼女が言う。へー、と返す。
彼女は私がチーズケーキが好きだと言ったことを覚えていてくれて、LeTAOのチーズケーキをホールで送ってくれたことがあった。嬉し過ぎて誰にも分けてあげたくなくて丸ごと全部一人で食べた(食い意地が張ってるにも程がある)あのLeTAO!そうかおたるのルタオか。そう思うと何だかかわいい。
エスカレーターを降りて改札を抜ける。
小樽に着いた!
北海道の空気。札幌では荷物のことで頭も体もいっぱいで温度とか空気とか感じる余裕が無かったけど、今は身ひとつ。大きく息を吸い込んだ。
バスに乗って第一ゴムっていうところまで行くんだって。そこからすぐみたいだよ。
行き方を調べていてくれるようで本当におんぶに抱っこだ。道内といっても私でいう県内とはまるで違う。
彼女の住むところから札幌だって300km近くあるだろう。私で考えたら300kmはちょうど東京くらいだ。東京なんて全く分からないし何の電車に乗ったらどこに着くのかさえ分からない。そのぐらいの距離感の場所を案内してくれるというのだから本当に感謝しかない。
バス乗り場という所に目指す場所の乗り場が無く、そこに立っていた案内のおじさんに聞く。道の向こうにある16番のバス停にそのバスが来ると教えてくれた。2人で歩道橋を渡ってそのバス停に向かう。
バスが来るまで15分ほど。
バス停横の長崎屋というスーパー?の前で
そっちにも長崎屋ってある?と彼女は言った
長崎屋?聞いたことない
と答えたけれど、後で調べたらドン・キホーテの系列なのかな。ドン・キホーテならある!
日陰でバスを待っていたら少し寒くなったので、ひなたに座り直しておしゃべりをしながらまたバスを待つ。
良い天気。
私雨女なんだよね、でも今日晴れて良かった、と彼女が笑う。
私も休みの日は雨が多いけど、晴れて良かった、と私も笑う。
そのうちにバスが来た。観光地だけれど私たちが向かう方には観光客らしき人は全くおらず、普段の行き来かなというひとがちらほら。目的のバス停で降りると、普通の町並み。車通りもほとんどなく観光地でもない。
Google mapを頼りに目的のカフェを目指す。普通の町過ぎて目標になるものもなくしばしうろうろ。
こっちじゃない?と通り過ぎて戻ったりしながらやっと目に入ったのがインスタで何度も見ていたあの椅子と暖簾。
ついに来れた。
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