雨降りの休日 私は大きなユーカリの木の枝が覆い隠すようにある青いドアの前に立っていた 使い込まれた銅色の小さなノブを掴み、ゆっくりとドアを開くとドアはきぃと小さな音を立てた 頭の上ではカランカランとどこか懐かしいような音が響く 正面のレジの向こうに立っていた女の子が「いらっしゃいませ」と優しく笑った 奥の席にはふんわりとしたリネンのスカートを履き臙脂色のカーディガンを羽織った女性がひとり本を読みながらコーヒーを飲んでいて、その手前には若いカップルが座っており何か楽しそうに話
3日目は帰るだけの日 朝の苦手な娘たちをとにかく起こす。まだ達成していないものがある。それは海鮮。 ホテルの朝食はバイキング方式で朝から新鮮な海鮮が食べられるとのこと。でもね、おひとり様2800円。 朝ごはんで。でももうここでしか食べる場所が無い。 よし。ここで存分に食べて帰ろう! 朝食を食べたらすぐにホテルを出ないと飛行機に間に合わない。とりあえず順番に朝のシャワーを浴びて着替える。荷物も後は最低限のものだけ詰めてすぐ出られるように。帰るだけだから、と3人とも化粧すらやめ
あの子は尾崎世界観は好きじゃないと言ったけれど今の私は尾崎世界観に夢中だ。 色んなところで耳にするから曲は知ってはいたけれどどんなバンドなのかとか曲を作ってる尾崎世界観がどんな人なのかとか全然知らなかった。 絶賛体調不良の中ひとり参戦の夏フェスでなんとなく足を止めて見たクリープハイプはちょうどMCをしていた。「こんな汗だくんなってまるでやってるみたいだよなぁ」と金髪の世界観は気怠げに言い、その後HE IS MINEを歌った。その時は自分に酔った気持ち悪い感じの人なのかなと
小樽から札幌に戻ってくる電車は日曜の夕方ということもあってか前の日よりも混んでいた。出発のかなり前から乗ったので向かい合わせの4人がけの椅子に座ることができた。私の隣にはカップルの彼女らしき女の子が座った。 観光地を存分に楽しんだためか娘たちも隣の女の子もすぐに寝てしまい、それぞれが俯いたり傾いたりしながら電車に揺られている様子はなんだか可愛らしかった。札幌駅に着いても隣の女の子は眠っていたので「ごめんなさい降りますね」と声を掛けると驚いたように目覚めて辺りを見回し、女の子
お腹が空いたを繰り返す娘②、目に入ったおむすびやさんに寄る。前の日にもおにぎりなのかおむすびなのかって話をしたような気がする。めいめいに食べたいおにぎりを選ぶ。 特に食べる場所も無いので通りにある大きな木の下のレンガに座ってもぐもぐ( 'ω')ŧ‹"ŧ‹" おにぎりを食べ終わると、口が乾いた!と本能のままに訴える娘② 仕方がないので大きな木の目の前にあった喫茶店に入る。2階の席に座ってしばし休憩。 喫茶店を出て商店街へ。ガラスのお店や調香できる香水屋さんなどをのぞいたり。
2日目の朝は初日の疲れもありスロースタート。ホテルにはコンビニが隣接していてロビーと繋がっているため、軽い朝食と温かいコーヒーを買って出かける準備をしながら食べた。11時には出たいねと目標を決め支度をし、フロントに鍵を預けていざ出発。2日目も爽やかな青空だ。 昨夜歩いた狸小路を抜けて行ってみようとアーケードを歩く。 北海道ガチャ多くない?と娘②が言う。確かにアーケードのあちこちにガシャポンがいくつも並んでいる。どこでやっても同じなのは分かっているけれど、記念にやってみよう
ホテルのロビーでソファに座っていると自然と瞼が落ちてくる。眠い。しばらくそこでうとうとしていると同じホテルに泊まるであろう大家族が入ってきて急に賑やかになった。チェックイン待ちの子どもたちは楽しそうでそれをみているおじいちゃんも楽しそうだった。時計を見るとあと少しで22時。 娘たちに今どんな感じか伺うと 「電車混み混みだから今からバスに乗る!」と返ってきた。今からバスならまだしばらく来なさそうだ。どうしようか。少し外でも歩いてみるかな。 ホテルのエントランスにはハロウィンの
いつも隣県に向かうバイパスから見える海岸が気になっていた。休みの日、たまたまそっち方面に連れて行ってもらったので「あの海岸に行ってみたい」とわがままを言い、帰りに寄ってもらった。最近整備された場所で広い駐車場に車を止めると新しく作られた高い堤防がすぐそこにある。 海岸は私がいつも行く海の延長線で、この砂浜をずっと歩いて行ったらいつもの海に着くんだと思いながら砂浜に降りた。砂浜は広く、聳え立つ崖もない。目の前の海は同じ太平洋なのになにかが少しずつ違う。知らない海だ。 ふいに
小樽から電車に乗ってまた札幌に戻る。その間に日が暮れていたのだけれどあまり記憶に無い。海側の席でもなく彼女の隣に座って電車に揺られていたのだと思う。 思い出した。 娘たちの安否を確認しなきゃとLINEを送ったら、娘①娘②ともに今日中にチケット代やらなんやらを振り込んで欲しいと、まるで身勝手な要望を送ってきて、私はそれに翻弄されていたのだった。 彼女に札幌駅の近くにファミマかセブンは無いかと調べてもらい、駅に着くなりコンビニ目がけてあちこち歩いた。なんの情緒もない母娘のバタ
お店を出る時、彼女が今から小樽の堺町通りに行こうと言ってくれた。ここからどうやって行ったらいい?と彼に聞くと、テーブル席に座っていた女の子も一緒になって教えてくれた。 お礼を言って店を出ると言われたように歩き出す。 あ、ここが第一ゴムなんだね。会社の名前がバス停になってるんだ。やってるのかな。とか言いながら。 15分くらい歩くと聞いたけれど私には方角も方向も分からない。彼女は何となく分かるよ!と言いながらも交差点にある交番で聞いてみる?と言った。交番の前にはパトカーがラン
お昼時なのもあって食事っぽいものも食べたいし、スイーツも食べたい。迷わずとも両方入る気がする。 そう思って机に広げたメニューを見比べる。 どれも食べたいし色んなものを飲んでみたい。 結局迷って迷って決めたのは 王道ピザトースト ブランドの暮色(深煎り) スパイスジンジャーラテ マロンミルクティーラミス(ミルクティーとティラミスをくっつけたらしい) 紅茶のバスクチーズケーキ ピザトースターは2つ頼もうと思ったら、2人で分けるくらいで良いと思う、と彼が言ったのでそれもそうか、
昨日は一日曇り空だった。今朝は朝から雨。 秋に来て青空が少ないように思う。 昨日の夕暮れ時は隙間からさす太陽の光が一面に広がる雲を真っ赤に染めていた。 近くの歩道橋に登り帰宅するであろう車の流れと刻々と変化していく空をぼんやりと眺める。 今こうやって続いていることが、この先もずっと続いていくとは限らない。当たり前で平凡な日々が、明日も明後日も来年も再来年も送れるなんて保障はどこにもない。私たちは日々流れている。 空に見える雲が不思議な形をしてして 龍の顔のようなものと人の顔
暖簾の前に立つ。緊張。 ずっと来たいと思っていて全然来れなかったお店。 相互フォローとはいえ、お店をはじめてお店のアカウントもあるし、フォロワーさんもたくさんだし、私のことなんて、誰?みたいな反応だったらどうしよう。 私が勝手に恋焦がれている完全な片想いかもしれない。一応今週末に北海道に行くので、行けたらいいな、とはインスタのDMで送っていた。それに対してはタイミングが合えばお待ちしてるねー、と返信はあった。 どうしよう、ドキドキする。まるで推しに合う前みたいな気分だ。 彼
札幌駅から快速エアポートに乗って小樽へ向かう。10月の3連休、車内にもたくさんの人がいた。窓から見える北海道の景色。初めて降りる駅、初めて歩く道、初めて乗る電車、初めて見る景色。隣には会いたかった彼女がいて、2人ともまるでこれが普通のような顔をしていつものお出かけみたいに揺れる電車にもたれおしゃべりをする。 日々のこともくだらないことも何でも話して、内緒の話はこそこそと声を顰め、目を合わせてくすくす笑う。まだ電車に乗っているだけなのにすごく楽しい。そんなことをしている間に急
小樽のカフェに行くにあたって。会いたい人に会うにあたって。何か手土産のようなものを。と考える。 ふと思いついたのは、apollocoffeeworksのコーヒーはどうだろう?だった。 apolloさんは看護学校に行く前、クラフト関係の趣味を一生懸命やってた頃によくお世話になった 。それももう10年以上前の話。apolloさんは古い倉庫を全て自分でリノベーションしてapollocoffeeworksというカフェにした。興味のある方はこちらから。 なんでも自分でやってしまう素
飛行機が着陸しアナウンスが入るとみんな立ち上がり、頭の上にある荷物を降ろし始める。狭いし後で良いよねと、ひと通り波が過ぎるまで待っていた。通路を挟んで隣の女の子も何やらクリアケースにアクスタのようなものを入れている。完全に仲間だ。 こんな風に飛行機に乗ってはるばる遠征に来るんだね。推しがあるって良いね。私もこうやって無事飛行機にも乗れたし、関東関西以北以南の観光兼ライブ参戦もありだなと思う。 CAさん達にお礼を言いながら飛行機を降り、通路を歩く。預けた荷物を引き取るまでに少