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零したくないもの

最近のこころ綻ぶ瞬間たち

夏の空
入道雲
夕焼け
夏の草木
温もった川水から逃れてひと所に集まる水鳥と亀
木漏れ日を日傘に浴びるふたりの老女

護国神社の朝日
早起き

葉に透ける陽射し
露草のつぼみ
mol-74のおと
おはようございますのいろんな顔
学校休んだひと
氷水で素麺をしめるときの温度
百日紅の花と青空

通り雨
閉店後の灯り
木陰で汗を拭うひと
“今日会わない?”とか“このあと暇?”
日の出
本を開くひと
本を選ぶひと
言葉に満たされていくひと
わたしに向かって振られるてのひら
“思いもよらないのが咲くから嬉しいよね〜”
“ちょっと来て、牛乳飲む?”
川の音、蛍のひかり、自然のなか
風に揺れるレースのカーテン
やわらかい
“いつも土曜日だね”
“1本あげますよ”
無理も無駄もない笑顔

雨に降られる無防備なひと、うれしそうだとなお好い
水やりしたら元気になる梅の木、従順で可愛らしい
自転車漕ぎながら唇だけで歌う、ハンブレだああってなる
もう温かい夏の朝の空気、ほんとうに夜更けは気温下がっているのかな

どのくらい零してしまっているんだろうか

零して“しまって”いるのか
無意識のうちに意図して零しているのか
零しているから掬える瞬間なんてほんとうにあるのか
全部掬っていたいのに



近ごろのわたしは言葉が止まらない
不安になる
不安なときによく喋る
出しても出しても止まらない言葉たちの排水に溺れそうになる

一体わたしが何に怯えているのか わからない
わたしの檸檬爆弾が爆発する日を待っている
きらきらした瞬間たちを
きらきらしたまま心にしまえなくなりそうで
必死に拾い集めていて
“掬う”なんて言葉は幻想でしかないのかもしれない

そんなことばかり考えて
勝手に溺れゆく私を水面から眺めるわたしはわたしを嘲笑っている
冷たい水が心地いいような気もして目を瞑る、受け入れる
溺れゆくわたしもまた私を嘲笑っているのかもしれない
もっと穏やかにもっともっと攻撃的に

こういうさまに耐えられないから人は毎日働くんだろうか

こういう思いは独り占めする私なのだけれど
誰にも見えるように残しておくよさも最近知ったから残してみたりする

全部ぜんぶ夏のせい

決めた
この夏は『檸檬』、読み返そう



わたしの檸檬爆弾は爆発しきれるのか
あるいはこれまで通り違和感を与えながら受容されるのか
一日もはやく穏やかな水面を取り戻したい
夏の課題

0722

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