
虚構を抱える
ひとつパズルのピースが見つかると
いくつか続けて見つかって
気付かぬうちに思わぬところが繋がって
自分というパズルが広がる
完成する絵の輪郭がすこしだけ捉えられるようになる
信じるものを
間違っているかもしれないと疑っているとき
答えが見つかるまでのあいだずうっと不安で 焦って ぐらぐらして
得体の知れない何かに怒ってしまう
怒る自分を受け入れられなくて 心と思考とが乖離していく
そんな時間が長くあって
奥深くがなんだか忙しなかった
だけれどやっと 心に凪を取り戻した
正しくはまだ取り戻してはいなくて
このまま少しずつ凪いでいく見通しがたったくらいのことだけれど
パズルのピースが幾つか続けて見つかった
正しい場所にパチっとはまった
目が覚める
ご飯を食べて
仕事をする
本を読んで
ときどき散歩に出かけて
空を仰ぐ
そろそろあの子の誕生日だなんて思う
そして眠って
また目を覚ます
やっぱり人はひとりでは生きてゆかれない
溺れそうになっているときは
いつも誰かに救われている
そういえばあの子どうしてるかなとか
あのとき嬉しかったなとか
あの場所は今でも桜が見られるだろうかとか
あいたいな、と思う
ひとりで居ても 誰かと居る
そう思えるとき わたしはとてもしあわせで
やっぱりひとりで生きるには皆、抱えるものが重すぎるのだと思う
少し前に観た映画の主人公が あなたに似ていると言われた
必死で自分を保とうとして 次第に現実を捉えられなくなっていく
確かに。
儀助の見ていた虚構はどこまでも虚構だと思う
でもその虚構は儀助にとっての現実で ありのままで 絶対で。
そんな世界をひとりで背負うにはあまりに重い
わたしも
重い荷物を 分け合って共に持ちあえるような
そんな人たちと過ごせるといい
ひとりとひとりの荷物を半分こずつにして
結局背負う量は変わらないのだけれど
それでも全部を分けあえる
そうやって人々と関わりを紡いでいたいと思う
そうしたらいつしか自分の荷物は誰かが代わりに持ってくれていて
わたしはその誰かの荷物の少しずつをたくさん大切に持っている
そんな日が来るといい
自分の荷物を分けられなくては 誰かの荷物も持ってやれないのだと思う
わたしはまだ 他人に荷物持ちを頼めない
きっと ほんとうにたくさんの人が手を差し伸べてくれて
そのことにやっとの思いで勇気づけられて
物語の、、虚構世界の住人に荷物持ちを頼んでいる
現実の住人 目の前の人たちを 信じられる人間になりたい
信じてみたい人たちがいる そんな自分をみつけてしまったから
そしてわたしも
この人にだったら半分を委ねてみようかと思われるような
そんな人でいたいと思う
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