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1年が経って 最近考えていること

月桃という場所を開いて1年が経った
この場所はたくさんの思いもよらない出会いを私にもたらしてくれた

誰かと空間を共にしていながら それぞれの本を開き それぞれの世界に没す
時折言葉を交わし お喋りに花ひらいたりする
大人と子どもが交わる場であって 人と書物が交わる場でもある
それぞれの人が わくわくした心持ちであたらしい世界を覗く
そんな、図書室らしい空間
ゆったりと しっとりと 時が流れている

この場所に顔を出してくれる老若男女みなさまのおかげだな
その言葉に尽きると、いつも思う

月桃と共に1年を過ごし
最近のいろいろと併せて つい今観終えた映画が私に筆を執せた
だから頭の中を整理してみようと思う

すこし前、母校の高校一年生に“働くということ”について話した
その感想が返ってきて 読みながら都度感心し、私の方が思いを巡らすことになった
生徒の感想は大きくわけると3つ
・「働くこと」についての考え方が変わった
・図書館という場所の在り方を知ることができた
・自分で考えることを大切にしたいと思った
多くの感想文が自分なりの言葉を紡いでくれていて 鳥肌が立つほどに嬉しかった

そして考える
一体私は、何を伝えたかったのか

確かに、間違いなく、必死で話した
どうしても伝えたかった
「あなたのままで大丈夫だから、よく考え、自分を信じられる大人になってほしい」

それじゃあ私は、どのくらいわたしを信じているのだろうか

AIなのか、情報なのか、統計なのか、アルゴリズムなのか
よくわからないけれど
この時代を生きる私たちの思考、思想はあらゆるネットアカウントに委ねられる
このしがらみから少しでも逃れたくて いろいろのものを避けてきた
そんな私の各アカウントの情報が 近ごろついに偏りはじめたように思う
もしかするとほんとうに世間も私と同じ方を向いているのかもしれないけれど
それはそれで怖いわけです
私の思考がマジョリティになってしまったら それはそれでよろしくない気がする

そんないろいろがあって
iPhoneが提示してくる「あなたへのおすすめ」に私の何かを操作されているようで
怖いと思うようになった
そうした頃に更新の時期も相まって 音楽のサブスクをやめた

私は思っていたよりも多く
選ばされた音楽を 消費的に聴いていたという事実が
すこしばかりショックだったりした
CDの民としてしばらくは過ごしてみようと思う

そして、帰宅後はスマホの電源を切るようにした
どうしてもやめられないあのリール動画が私を蝕んでいくのが嫌だった
どうしてもやめられない自分を嫌になりそうだった

だから最近の私は、家にいるあいだネット回線と繋がることができない
時折調べものが出来ず困るけれど、それでも信じられないほど快適だった
わたしの時間を わたしが過ごしているという実感がある

私たちの世代は この麻薬的なSNSの先駆けに青春時代があって
まだ誰もが使い方に慣れずにいたから
避けようもなく中毒になってしまった人口の多い世代だと勝手に思っている
例外なく私もそのひとりで 気を抜くとすぐに中毒状態に戻ってしまう
やめられない止まらない SNS徘徊

もしもそんな弱った私のSNSにふと
「日本人はもっと日本を誇りに思え」とか「日本は素晴らしい」とか
「日本も戦争はもう目の前だ」とか
そんな動画がたくさん流れてきたら 私はころっと過激愛国主義者になるだろう

だから
「あなたへのおすすめ」映画が
冷戦下の東ドイツを舞台に、若者たちの国家権力との闘いだったことが
なんだか恐ろしくなった
私は今、反政府として立ち上がれと煽動されているんじゃないか
これは私が選んでいるのではなくて 何か大きな力が働いていたりするんじゃないか
と、いろいろのことを信じられなくなった世界線に漂っている感じがする
ネットの全部が嘘に見える、嘘ではないか、カモフラージュのような

昨日
虚と実、なんていつまでも語れそうな言葉にも触れたのだけれど
近ごろの私はその境界が曖昧になっていて
自分が今どちらの世界を覗いているのかほんとうにわからないことがある
だから
間違いなく“実”だと信じられるから
ネット丸ごとから離れる時間を設けている

それは 月桃という場所で過ごす時間も同じように
間違いなく 紛れもなく 嘘も含めた“ ほんとう ”だけがそこにある
目の前にいる人、本、言葉たちを絶対だと信じられる

そう思うとやっぱり
私があの日高校生に投げかけた
「自分を信じられる大人になってほしい」という願いは
わたし自身への願いだったのかもしれない
そんなふうに思う

自分を信じられる大人でいたい

そして、そういったことをきちんと ゆっくり考えるために
わたしは次の1年もまた
図書室月桃という場所を開き続けようと
そんなことを思う夜です


やっといろいろのことを書けた
まだ考えあぐねている足跡でしかないけれど
死に際まで考えているような内容なので
今ここで残しておこうと、このまま公開する

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