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第4回。報われない努力はあるのか?小説「運転者」の導き。

「努力って報われないなって思いました」

2022年2月10日、国民の、いや、世界の期待を一身に背負った羽生結弦選手が、滅多に見せない涙と共に松岡修造さんにそう語った夜
私は今回ご紹介する喜多川泰さん作「運転者」を読み始めたところでした。
読み始めてすぐ、羽生君が語っていた報われない努力についての話が出てきて、「おっ?」と思ったのを覚えています。

最初に言います。
この本は小説、という形式をとった、自己啓発本なのだと思います。
自己啓発本が苦手な人には不向きかもしれません。

そして実は私は自己啓発本や~術、みたいな本はあまり好きではありません。
が、この本は楽しく読めました。
小説だからかな。

・人生が上手くいかないと常日頃思っている
・自分は運のない人間だと思う
・前向きで明るい気持ちで日々を過ごしたい
そんな方には一度読んでみて頂きたい本です。

また、今の自分の人生にそこそこ満足している私は
「そうそう!私もそう思う!」と
この本に共感する場面が結構多かったです。
Kindleで読んでいたので、珍しく沢山ハイライトマーカーを引きました。
(マーカーを引いた文章だけ、後から取り出して読むことが出来るのです)

が、先程この感想文を書くためにKindleを開いたら
ライブラリからこの本が消えていました。。。
実はこの本、amazon primeで無料だったので内容を知らずに何気に読み始めたのですが
先日、prime解約したんですよね。
そしたらKindleのライブラリから本も消えてしまったみたいで。

あ~しまった~
この感想文書いてから解約すれば良かった
なので、今回は記憶の糸を手繰り寄せながらのレビューとなり
あらすじや読みどころなども大雑把な内容となると思います。
が、もしノーデータでこの本読んでみたい方は
ここでストップか、目次より、まとめにジャンプして下さいね。

あらすじ

主人公は保険の営業マンの修一。
妻と中学生の一人娘との3人暮らし。
不登校の娘、そして実家で一人暮らしの母など心配の種が尽きない中
ある日大口契約を一気に失い、収入の面でも大きなピンチを迎えます。
そんな中、偶然乗った不思議なタクシー。
御任瀬卓志(おまかせたくし)という変わった名前の運転手は「お代はもう頂いているから」と代金も受け取らず、修一を「今行くべき場所」へと勝手に連れて行きます。

最初はいら立ち、始終不機嫌な修一ですが
自分はお客様の「運」を「転じ」させる「運転手」なのだという語る卓志から話を聞くうちに
少しずつ自分を変えようと努力するようになります。

でも、いくら努力しても事態はなかなか好転しない
焦る修一に卓志が「何故、僕があなたの前に現れたか考えたことがあるか」と問いかけます。

不思議なタクシー運転手の卓志は何故修一の前に現れたのか
既にもらっている、という料金(正式にはポイントなんですが)は
一体どこから発生したものなのか

その全てを知った修一が歩み出す
「運」を「転じ」させる人生とは・・・。

内容は、ざっくり言うとこんなカンジです。
では次に、「この考え方は素敵だな」と思ったシーンと感想をいくつかご紹介します。

印象に残ったシーン

運はポイント制
努力で人は幸せになれない
運がいい人と悪い人というのは存在する、という修一に卓志が解説した時の言葉です。

私達が日常で、損得感情を抜きにして誰かの為、または社会の為に起こした行動は、例えその場で何の利益も生まなくてもポイントとして人生で貯まっていくらしく
運とは、そのポイントと交換するものなのだそう。
貯まったポイントを小出しに使っていくか、沢山貯めて大きく使うかはその人次第。

実は私もこれに近い考え方を持っていて
人生って種まきと育成と刈り取りを同時に行っているようなものだな、なんて思うのです。
今日刈り入れている収穫は昨日までに自分が種を撒き育てたもの。
その収穫を使うタイミングや使い方は自分次第で
この使い方、がきっと新たな種になるんじゃないかと。
種や育成を「行い」そして刈り入れを「運」と置き換えれば、卓志の言うことはすごく理解出来る私です。

いつも上機嫌でいること
運を好転させるためにまず行うべきこととして卓志がアドバイスしたのがこれです。
いかにも機嫌が悪いという人に自ら近付きたいと思う人はいない
つまり、幸運に繋がるきっかけもその分遠ざけていることになる、と。

確かに。
でも、いつも機嫌よく、しかも上機嫌でいるってなかなか難しいですよね。
上っ面だけ笑顔で内心は怒りで燃え盛ってしても意味ないのだろうし。

私の場合ですが
腹が立つ時はひとまず怒ります。
でも、なるべく一人で怒るようにしています。
怒りを人にまき散らしたところで何も解決しないと
過去、散々まき散らしてきた結果、今は理解しているので。

でも、どうしても一人で怒っていると悶々としてしまいそうな場合は
私を良く知る友人に愚痴らせてもらいます。
私の場合は身近な人だけど
こうしたブログやSNSなどでさらけ出すのもたまには良いと思ってます。
他人を貶めたり傷つける言動でなければ、ですけど。

でも、どこでどうさらけ出そうと最終的には
「こんな怒りで私の時間と心を使うのはもったいないよね」と
自分に語りかけるようにしています。
(人生=時間×心、という考え方に行きついたから。この話は第2回のモモで書いています)
限りある時間と心だから、もっと自分が幸せになれる物事で満たしたいですもん。
この作業を繰り返しながら、いつしかゴキゲンの最上級、上機嫌で多くの時間を過ごせるようになれば良いな、と思っています。

本当のプラス思考
この下りが、これまで私にはなかった発想であり、かつすごく心に響きました。

目の前に起こった出来事をポジティブに捉えること
それも確かにプラス思考なんですけど
卓志との出会いで修一が辿り着くプラス思考は少し違いました。

自分に「プラス」になる、という考え方ではない。
その事象を未来の誰かにとっての「プラス」になるように考えていくこと
それが本当のプラス思考。

自分がこの世に生まれる前よりも
自分がこの世を去る時の方が
世界が良くなっている、と思えるような生き方を、と卓志が言います。

世界規模で考えると一見大袈裟なように思いますが
私達の日常の些細な出来事
そこで自分がどうしようか、と迷う時

自分の損得、という観点で考えたくなるけれど
どうすれば少しでも世の中が良くなるだろうか
どうすれば未来を生きる人々の生活を少しでも良くすることに繋がるだろうか、という観点を持てれば・・・

きっとこれまでにない新たな判断に出会え
新たな世界や喜びを知ることが出来るはず。
そして世界中の人がそんな風に考えられたら
戦争なんて、まず起きないんだと思います。
ウクライナ問題も・・・
地球として何が一番最善なのか、みんなで考えられたら良いのに。

壮大な視点
今、私達は先祖が命を繋いでくれたからここにいます。
自分の血縁だけでなく
過去の社会を作った全ての人々が、今の世の中を作ってくれたから。

更には人間だけでなく
自然界の力、そして宇宙の力を借りてここにいます。

そんな話が物語の後半に出てきます。
卓志が語るその世界観は果てしなく、文字を目で追うだけでも頭がクラクラしました。
そして

自分のことってつい主観的に
自分の内側からばかり眺めてしまうけど
時間も空間も、果てしなく広い世界から客観的に眺めてみると

私は生きている
と同時に
生かされているのだ、なんて思いが生まれます。

生かされているのだから大切に生きたい
他の人の命も同様に大切にしたい
だから日々、上機嫌で、本当のプラス思考で生きたい
そしてそれが
この世に誕生し、立ち去るまでの私達の本来の仕事。

読み終えて心に流れたこの感情。
すごく幸せで心地の良いものでした。
こんなファンタジー、現実に起きることはありませんが
私はもう、卓志が教えてくれた生きる意味を見失わずに
この先歩んでいける気がしています。

まとめ

さて、冒頭の羽生結弦選手の「努力って報われない」という話ですが

本の中で卓志も言っていますが
報われない努力はある、けどない、と
私も今は思います。

これまで沢山努力を重ねてきたのに4アクセルが成功しなかった
この件を羽生君の内側のみで考えれば
「努力って報われない」という結論になりますが
これを宇宙的な視点から本当のプラス思考で考えれば

この目標に向かって惜しまず努力する姿を見て
世界中の人々がどれ程胸を熱くし
どれ程美しいと思ったか。

私も頑張ろう、と勇気をもらえた人も多いでしょうし
あんな風に生きたい、と
憧れや尊敬の眼差しで後を追う若い人も出てくるでしょう。

そして
あと一歩のところで完成しなかった今回の4アクセルは世界中で研究され
やがていつか
誰かが(羽生君も含め)この前人未到の域に達する日が来るのでしょう。

そしたらまた
その成功が世界中に感動をもたらし
その時代を生きる人の希望になるのでしょうし
それを見た人がまた、新たな夢を描くのかもしれない

世界が少しだけ良くなる方向へ向かう道を
羽生君は示したのです。
その観点から思えば、彼の努力は無駄ではないと言えます。

生き方について
そして自分と世界、更には宇宙との繋がりについて
分かりやすいストーリーながら沢山考えさせてくれる本でした。
少しだけ今日より明日が良くなる世界を思って
私も残る人生、生きてみたいと思います。

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