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散文詩 『I was born』の精読①

教科書掲載作品の散文詩『I was born』についてお話します。
なお、本作品は著作権が失効しておりませんので引用などには細心の注意を払って紹介させていただきます。

詩は、次のように分類されます。
①文語体か、口語体か。
 文語体……書き言葉。口語では使われない文法、語彙を含む。
 口語体……話し言葉。今書いているわたくしの文章も口語体。
②叙事か、叙景か、叙情か。※「叙」は「述べる」意。
 叙事…事実や伝説をテーマに歌う。神話や讃美歌などにもある。
 叙景…景色をテーマに歌う。童謡『富士山』とか。
 叙情…気持ちをテーマにする。これが一番多い。

分類しましたが、「叙情詩」が一番多いです。ほぼこれです。
また注意が必要なのは、「叙景」でありながら「叙情」であるという高等なテクニックもあります。漢詩で雄大な自然を詠みながら、自分の不遇を嘆く、というのはよくある手法です。
詩は、人間の「心」「気持ち」から生まれるのですから、当然すべて「叙情詩」なのです。
①と②を組み合わせて、6種類の分類ができますが、飽くまで形式上の分類と思い、詩そのものの楽しさを味わいましょう。

では本題に。
『I was born』は吉野弘さん作で、末尾の表現を改稿したりもしていますが、現代詩の最高峰の一作品である評価は揺らぎません。

あらすじを紹介し、深いところは次回に譲りましょう。

①登場人物「僕」の年齢はHow old おいくつ(長嶋茂雄風)か?
「たしか 英語を習い始めて間もないころだ」
とありますから、中学生です。受け身を習っているので、多少学習が進んでいることがわかります。
ただし、昨今は英語教育が小学校から始まっておりますので、誤読を生む可能性はありますね。
しかしそうすると母の死と向き合うには早すぎる年齢になるので、作品の設定が壊れてしまいます。注意!

②父はなぜ「蜉蝣」の話をしたのか
「蜉蝣」が「妊娠中の母」に似ていたからである。
母の暗喩として、すぐに死んでしまう蜉蝣を選んだのは作者の妙。
儚い生き物のたとえとして「蜉蝣」は古来から挙げられるが、「妊娠」とか「生態」にここまで迫った描写も珍しい。
これが「蛍」だったら、生々しさは無かっただろう。

③どうして「父の話のそれからあとは もう覚えていない」のか
母の死の原因が、自分にあると気づいたから。
「痛みのように」とあるように、「僕」は大きなショックを受けていることがわかる。その後、父は何を話したのか。それはわからないが、「想像してみよう」という学習活動を設定することは有意義である。
答えがないぶん、自由に作文できるから、学習者の意欲をはかるにはよい。
可能性として、「だから、僕には元気で生きてほしい」「だから、父は僕を許せない」など学習者のバックグラウンドを引き出すには良い題材である。

今日はこれくらいで。
次の記事もよかったらご覧ください。
おつかれさまでした~

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