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非対称性をのりこえて(8/30)
みんなと同じ、が大好きだ。
流行りの音楽を聴いて、流行りの服を着て、
流行りの言葉を使えば、同じになれる。
群れになって泳ぐ魚のように過ごせば、
孤独を狙って忍び寄る憂鬱とおさらば。
みんなと違う、も結構好きだ。
一味違う趣味やこだわりのある生活で、
唯一無二、自分らしさの体得を目指す。
社会の流れに遡って泳げば、
見たこともない景色を独り占めできる。
思えばどっちも対称性。ピッタリ重なる線対称。
真逆を向いた点対称。点対称だとしても、
結局はもとの形に戻る。みんなと同じ。
対称性は安心だ。元となる形が一緒なら、
同化も異化も大して変わらない。
同じになったり別々になったりして、
個性と協調性という2軸でみんな過ごしている。
大学の学生支援課に行って突きつけられたのは、
みんなと違う、歪な形をしているという事実。
あらゆる他者と非対称性を持っている現実。
事務作業として診断書を受け取る。
紙越しに伝わる公務員の体温は冷たい。
非対称のものに向けられる冷ややかな視線。
非対称だと気づいても何もできない。
生まれ持った形を変えることもできなければ、
同じ形を持ったものを探すこともできない。
いたとしても、その人と2人きり。
2人きりはある意味独りぼっちよりも残酷だ。
だって、アシンメトリックな自分を忘れて、
その人と、だけの世界に閉じこもるから。
飾らずに言えば、非対称性は悲しい。
孤立を生み、依存を作り、自閉に変わる。
非対称性を乗り越えたい。そんな思い。
個性ある人になりなさい。
みんな違ってみんないい。
点対称なだけだから言えること。
気休めな言葉はもう要らない。
もっと根っこから見つめたい。
差別や格差や階層の違いとかの、
あらゆる非対称性を乗り越えて。