陰陽太極図とは何か?:陰と陽。調和への道。
■はじめに
良いこともあれば、悪いこともある・・・それは波のようにやってくる。
だなんて、よく言われます。あるいは、バランスが大事、だとかも。
ダイエットしたけど、リバウンドしたとか、これは極端なことをすると、バランスが真逆に向いて、極端に引き戻される結果です。
このようにバランスを取るというのは、なかなか難しい課題ですね。
そこで、本テーマにある老子道徳経から発展した東洋思想に陰陽理論があります。陰陽太極図がたいへん有名ですが、このシンボルの意味を理解しながら、どのように宇宙はバランスされているのか?根本原理を理解して、より良く調和して生きるためのバランス感覚を磨いてみましょう。
■老子の示唆した陰陽理論の根源
先ずは、陰陽理論、思想のはじまりをみてみましょう。老子道徳経の第42章に、陰陽に関する記述が登場します。以下が、その該当箇所の抜粋です
中国語ですが、陰陽の文字がしっかり在ります。
これを日本語に訳すと、
となります。
ここでは、先ほど説明したタオから一が生まれ、さらにそこから二や三が生まれ、そして万物が生み出されるという過程が示されています。
また、その万物は陰と陽を併せ持ち、中気をもって
調和を保っているという、陰陽の相互作用が説明されています。
この第42章こそが、老子の陰陽思想の核心を示す重要な箇所です。
老子が示唆する、この陰陽調和のバランスこそが、陰陽理論の根源となっています。
■陰陽太極図の構造
陰陽太極図は、宇宙万物の根源を視覚的に表したもので
一見シンプルですが、その中に宇宙の真理が凝縮されています。
老子以後、道家、道教の発展によって育まれてきた陰陽の理論のシンボル。
この図を用いて、タオ、無極、太極、中気、陰陽について解説していきます。
陰陽太極図は、円の中にS字型の線で分けられた二つの部分で構成されています。
円:(太極):宇宙全体、または一つの存在を表します。
S字型の線(中気):陰と陽を分ける線です。陰陽は常に相互に作用し、互いにバランスしながら転換していくことを表しています。
黒い部分(陰): 静的なものを表します。夜、冬、女性などが例として挙げられます。
白い部分(陽): 熱動的なものを表します。昼、夏、男性などが例として挙げられます。
陰の部分にある陽の要素(小さな白い丸):陰の中に現れる陽、潜在的な 可能性: 陰の中に現れる陽は、まだ目覚めていない潜在的な可能性や創造性を表します。変化の始まり: 陰の中に陽が現れることは、変化の始まりや新しいサイクルの始まりを意味します。
陽の部分に陰の要素(黒い丸):休息と回復: 陽の中に現れる陰は、活動的な状態の後に訪れる休息や回復を意味します。陰転陽化: 極端な陽の状態から、陰の状態へと転換していく過程を表します。
相克と相生: 陰と陽は対立する存在でありながら、互いに影響を与え合い、生成し、抑制し合います。
変化と発展: 万物は常に変化しており、絶対的な陰や陽は存在しません。陰の中に陽の要素が生まれ、陽の中に陰の要素が生まれることで、新たなものが生み出され、発展していきます。
バランスの動的状態: 宇宙のすべては、陰と陽のバランスによって成り立っています。しかし、このバランスは常に変化しており、静的なものではありません。
■陰陽の相互作用の例
季節: 冬(陰)の終わりには、春の息吹(陽)が見られます。夏(陽)の終わりには、秋の涼しさ(陰)が感じられます。
人間: 人は、喜怒哀楽といった様々な感情を経験します。喜び(陽)の中に悲しみ(陰)が、悲しみ(陰)の中に喜び(陽)が見られることがあります。
自然: 夜空には星(陽)が輝き、海には月(陰)が映ります。
陰陽太極図における陰の部分に白い丸、陽の部分に黒い丸が含まれることは、宇宙の万物が常に変化し、陰と陽が相互に作用しながら、新たなものを生み出していることを示しています。この概念は、東洋思想の根底をなす考え方であり、私たちの日常生活にも深く関わっています。
■各概念の、さらなる解説
タオ(道)
意味: 宇宙の根源的な原理、万物の法則。
太陰太極図における表現: 円全体がタオを表します。すべての存在は、このタオから生じ、そしてこのタオへと還っていきます。
無極
意味: 形のない、何もない、混沌とした状態。
太陰太極図における表現: 円全体がまだ分かれていない状態、つまりS字型の線が現れる前の状態が無極です。
太極
意味: 無極から生じた一つの極。混沌から秩序への動きを表します。
太陰太極図における表現: 円がS字型の線によって陰と陽に分かれた状態が太極です。
中気
意味: 陰と陽の境界線、両者のバランスが取れた状態。
太陰太極図における表現: S字型の線が陰と陽を分けている部分、つまり白と黒が接している部分が中気です。中気は、陰と陽の相互作用によって常に変化し、新しいものが生み出される場所です。
陰陽
意味: 宇宙の万物を構成する二つの対立する力。
太陰太極図における表現: 黒い部分が陰、白い部分が陽を表します。陰と陽は、常に相互に作用し、互いに転換していきます。
各概念の関係性
無極→太極→陰陽: 無極の状態から、太極が生じ、さらに陰陽に分かれていきます。
陰陽は互いに転換: 陰は極まると陽に、陽は極まると陰に転換します。この繰り返しが、宇宙の万物の変化を生み出します。
中気は陰陽のバランス: 中気は、陰と陽のバランスが保たれている状態です。中気が安定しているとき、万物は調和のとれた状態になります。
■朝起きて夜寝るという生活を陰陽~陰陽五行で表現してみると?
老子のタオ(道)の働きについて、無極から太極、陰陽へ至り、さらに陰陽五行へ移行するプロセスを、生活の例を通じて説明します。
1. 無極から太極へ
無極(無の状態)
無極は、まだ何も生じていない無限の可能性の状態です。
これを寝ている間、深い眠りの状態に例えられます。
この時、意識は無く、完全に静止している状態です。
太極(陰陽の源)
太極は無極から生まれ、陰と陽の二つの相反する力を含む統一体です。
これは、目覚め始める瞬間に例えられます。
まだ完全に意識がはっきりしていないものの、徐々に目覚める兆候が現れる状態です。
2. 陰陽へ至る
陽(動)
朝起きると、意識が目覚め、動の世界が始まります。
これが陽の時間帯です。
この間、私たちは活動的になり、仕事や家事、運動などの動的な活動を行います。
陰(静)
夜になると、活動を終え、休息の時間が訪れます。
これが陰の時間帯です。
私たちはリラックスし、静かな時間を過ごし、やがて再び眠りに入ります。
3. 陰陽五行へ移行
陰陽の相互作用がさらに進むと、
五行(木、火、土、金、水)のエネルギーが現れます。
これらのエネルギーは、生活の様々な側面で見ることができます。
木(成長と発展)
朝の目覚めとともに、新しい一日の始まりと成長のエネルギーを感じます。
仕事や学習、新しいプロジェクトの開始などがこれに該当します。
火(頂点と活力)
日中のピーク時には、エネルギーが最も高まり、活発に活動します。
会議やスポーツ、創造的な活動などがここに含まれます。
土(バランスと安定)
午後になると、エネルギーは少し落ち着き、バランスと安定の時間が訪れます。昼食を摂ったり、短い休憩を取る時間です。
金(収束と成熟)
夕方になると、活動は収束し、成果を確認し、まとめる時間です。
仕事の終わりや帰宅準備がこれに該当します。
水(休息と再生)
夜には、休息の時間が訪れます。
リラックスして、再び無極の状態へ戻るための準備をします。
睡眠は、エネルギーの再生とリフレッシュを象徴します。
生活の中で、無極から太極、陰陽、そして五行へと至るプロセスは、日々のリズムと深く関連しています。
朝の目覚めから夜の眠りまで、私たちはこの自然のサイクルを通じてエネルギーのバランスを保ち、成長と再生を繰り返しています。これが老子のタオの働きであり、自然の道に従った生活の一例です。
■陰陽五行とは
物質は五つの要素(木・火・土・金・水)の生成と循環によって成り立ちます。五行は相生相剋の関係にあり、お互いに生み出し合い抑制し合っています。この微妙なバランスが、自然界の調和を生み出しているのだと考えられています。
陰陽五行は、それらの思想体系から、さらに医学、占術、暦法など
様々な分野に応用されるのだといいます。
ここは、私も勉強中なのですが、奥深いですね。
日本では陰陽師が有名ですね。陰陽師はまさしく、これらの理論を実践化し、様々な術師として活躍していたといいます。
■おわりに
以上の概念は、存在の根本的な性質や宇宙の本質についての哲学的探求であり形而上学的(目には見えない概念的なことを深く考えること)とされます。しかし、論とか概念とかを超えて、何らかの科学的根拠とも結びつけられ発展した例も多く在ります。
単なる哲学的探究から、実在的・我々の生きる世界での現象までに結びつけて行くことができるのが、老子の哲学だと直感しています。
その実例として日本の物理学者の湯川秀樹氏が、素粒子の発見の根本に老荘の思想哲学からヒントを得て発展させたという事実があります。
科学以外、その他の様々な分野の学問についても発展していく可能性に満ちた考え方なのです。
さて今回は老子の陰陽理論の原初から、陰陽理論のシンボルとその例までを説明してみました。
お読みいただき、ありがとうございます!
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