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「認知症に寄り添う暮らし」(4)

4.認知症の方が安心できる環境づくり

家族の方が認知症になった時、安心できる環境を作ることは、ご家族にとっても大切です。
最近の出来事を覚えられなくなるものの、
朝起きる、新聞を読む、食事するという日常生活のリズムは保たれることが多いです。
そこで、食事や入浴、睡眠などの時間をできる限り毎日同じにし、規則正しい生活を心がけましょう。繰り返しの穏やかな毎日が、記憶や認知機能の低下が進んだ方にとっても安心感を与えます。

慣れた家で済み続けることもご本人の不安を少なくします。
ただ、モノが多すぎる、床に物が置いてある、敷物が何重にも敷かれているなことは店頭の危険があります。
また、高齢者の方は電気や照明を安全のために使う習慣がないために夜は電気を暗いまま歩いたりすることがあります。足元やトイレまでの動線は明るい照明を心がけましょう。
わからなくなって生きているという不安、だれにも頼れないと孤独は一層認知の混乱を引き寄せますので、
『○○がなくなった、見つからない』と困っているときは一緒に探すそぶりをみせて、それが大きな問題ではないと穏やかに伝えてください。
例えば、代わりのものを準備する、この次からここに置きましょうなど目に見えるところで一緒に管理するもの一法です。

認知が低下して記憶が乏しくなっていても、感情はあります。
私はよく敵味方と説明するのですが、
施設に長く入居して言葉が話せない方でも、知っている顔を見ると表情が和らぎます。自分の味方を認識をするのでしょう。
対して、デイサービスで相性の合わないスタッフのことを敵認定して、徹底的に拒否することもあります。


客観的な思考の低下も認知の低下で起こります

私の個人的な考えでは、敵認定された方が悪いわけではなくゼロヒャクの客観的な視点が難しくなっているのですから、メンバーチェンジするなど気の合わない人は関係を遠ざけた方が認知症の方の精神状態にとっては良いと思っています(私たちだれでもそうかもしれません)
残された思考や記憶の領域を不愉快なものを占領させないことです。

だれでも自分は価値ある存在と思いたい

ご家族、特に娘さんや息子さんの『しっかりして!まだまだボケて居る年ではないでしょう』など、一見励ましに聞こえる言葉が不安や孤独を周りに相談させにくくしている高齢の患者さんを診てきました。
こういう患者さんはたいてい地位も能力もかつてはあった方です。
80歳代後半になっても、周りの人からはしっかりしているなどとおだてられ地域の活動に参加してめいいっぱいがんばっています。
でも、自分では以前のようではないとわかっているものです。
それをなかなか言えない、弱音がはけないまま認知が低下していくと、サポートが入った時には遅かったと感じたこともありました。
偉いお父さんお母さんの現在の姿を、直接会うこと一緒に行動することでわかっていただきたいと思います。
また、高齢者の能力は平均的に低下するわけではなく、その方の中で高低差があります。当然のことです。
残された良いところに配慮して、拒否なくサポートができるように心がけたいものです。

穏やかで優しく声がけ、手を握るなどのスキンシップを通じて、家族の愛情や存在感を伝えることが不安が多く自信を失っている高齢者にとって大きな支えとなります。

1.認知症と診断されたら:まず知っておきたいこと

2.家族が支える認知症ケアのコツ

3.施設での安心できる暮らしを目指して
(施設での対応として、失語症や難聴の方への支援策を紹介)

4.認知症の方が安心できる環境づくり
5.認知症とともに生きる社会を目指して



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