夢を見た。
後ろを振り返ると、10メートル後ろでレオナルド・ディカプリオがすごい形相で追いかけて来るのが見えた。そこでは、彼はカイルという名前だった。
ーなんで追いかけられているの?
誰かに聞きたいけど、聞く暇もない。
分かっているのは、捕まったら死を覚悟しなければならないということ。
私のすぐ後ろには、30歳くらいの頃の弟のイツキが、前のめりになって走っている。
回転ドアに入り込み、早く回そうと、顔をしかめながらがんがんガラスを叩く。
回転ドアを出ると、そこはアメリカのワシントンDCにあるウィラードホテルのロビーだった。
白い壁が輝いていた。歴史を感じさせる木製のレセプションと棚の装飾も光を反射してなんとも言えない美しさを放っている。
降り注ぐ日差しの中、ロビーの赤い絨毯の上を駆け抜けて、同じく赤い絨毯がしきつめられた小階段を駆けあがる。
ベルボーイとレセプショニストの、まるで私たちの存在に気が付かないかのようなゆっくりとした優雅な仕事の様子が目に映る。
階段を上がり、廊下を走ると、右側にある大きなボールルームの扉を開けて中に入る。
ボールルームだと思って入った部屋は、窓の無い小さなホテルの一室だった。薄いピンク色の光に包まれる。銀色のミラーボールがゆっくりと回っていて、反射したほのかな光が壁に漂っている。
目の前で猿がボールの上に載ってバランスをとっている。チュチュを着ていて、誕生日に被るような三角形の帽子をかぶっていた。手にはバランスをとるための棒を持っている。
子象が猿の後ろにいる。傍で黄緑色のカメレオンが自転車に乗っていた。他にもいくつか動物がいる。その後ろには、白い小さめのメリーゴーランドがあった。最大5人くらいなら乗れるだろうか。白くて洗練されたデザインの馬の彫刻が回転している。メリーゴーランドも薄いピンク色で装飾がなされていた。天井から色々な形のペーパークラフトがぶら下げられてた。
部屋を眺め、咄嗟に左に行くことを選択し、走る。部屋の端に現れた白いドアの金色のノブを回す。
ドアを押して開けると、小さくてカラフルなタイルが敷き詰められた風呂だらけの部屋だった。目にまぶしいくらい、鮮烈な色のタイル。どの風呂も、四角いフレームに嵌っていて、風呂と床はいずれもタイルが敷き詰められていて境目が分からない。右には青と水色系の色の風呂があった。風呂の底まで綺麗にタイルが敷き詰められている。普通の家にありそうな足を伸ばせる理想的な大きさ。その向こうには、黄色系の色でまとめられた低くて丸い風呂が設置されていた。その向こうにももう一つ、赤とピンク系の風呂。壁の左側は、バスルーム用に壁で囲まれたエリアの向こうに、2つ程風呂が設置されていた。緑と黄緑と、黄色系の風呂。
私たちの立つドアの真向かいには、遠くに次のドアが見える。
風呂の間を駆け抜けて、次のドアに手を伸ばす。イツキが、「早くっ。」とせかす。
ドアを開けると、更に真っ直ぐに伸びる廊下だった。
真っ赤な絨毯がずっと先まで敷いてある。周りは全面白い壁だった。
私は走っているし、風景は動いているのだけれど走っている気がしない。
一生懸命足を動かしていると思うのだけれど、体が思うように動かない感覚に苛立ちを覚える。
どこかのドアに入らなくては、と思う。
右斜め前に現れた白いドアのドアノブを急いで捻る。
ドアを押して中に入ると、右側に歯医者の診察台があった。
後ろで、「がっ」という音がした。その瞬間、イツキの首にカイルが掴みかかるのが見えた。
イツキは、カイルの腕を抑え、全体重をカイル側にかけた。二人揃って後ろに傾く。
カイルが診察台に倒れ掛かり、半身が診察台に乗る。イツキがカイルの腕に咬みついた。イツキは一瞬カイルが手を離した隙に診察台を回り込み、逆にカイルの首を絞める。本気で首を絞めていて、私は、このままでは殺してしまう、と恐怖に慄いた。おろおろするしか無い私は、頬に手を当て、そこに立って二人を見つめている。
「逃げてよ!」
言われるがまま、左後ろにあった次のドアを開ける。
とてつもない重圧感とストレスを感じていた。涙が出ている気がしたが、実体が無い。ここから出なくてはならない。
白い空間を走る。でも走っている感じがしない。走るという意思が足に伝わらない感覚。でも走っている。息があがっているけれど、でも呼吸は苦しくない。
振り返ると、いつの間にかイツキが後ろにいた。
更に数十メートル走ったところで、"Hey!"と言われた。後ろを向くと、イツキは、自分の顔部分に手をかける。その手が、顔からフェイスマスクをはがした。下から出てきた顔はカイルだった。
恐怖が体を駆け抜ける。必死に走ると、バルコニーに辿り着き、外に出てしまった。そこはたぶん5階か6階くらいだった。バルコニーには、先に続くドアが無かった。行き止まりだ。
バルコニーの前は正面には街路樹が並んでいて、下は普通の道路だった。
もうだめだ、と思った。バルコニーから咄嗟に飛び降りた。
何故か背中から落ちていた。すると、上からバケツの中の水をぶちまけるカイルが見えた。
体に水がかかった瞬間、「強酸だ」と感じた。左上半身に焼け付く感覚を覚えて叫ぶ。
「あー!!!!!!!!!!!」
熱いし、痛い。思い切り叫んだ。叫んで、叫んで、叫んだ。
「…れと、れと、」
暗闇で、ばたつかせていた手足を止める。隣で寝ていたハヤトが言う。
「れと、どうしたの?夢?」
顔が涙にまみれていた。私は、左上半身にかかった酸をどうしたらいいのか、と考えていた。もう後戻りできない何かが起こってしまった、と感じていた。
自分の左手を眺める。
指を動かしてみて、自分が現実に戻ったことをようやく理解した。
「うん…。悪夢だねー。…はは…。ごめん。」
「また?すごい叫んでたよ。大丈夫?」
時計を見ると、午前4時だった。背中をあげると、すごい量の汗をかいていた。パジャマを取り換えなくてはならない。
のろのろとベッドから起き上がり、ベッド際に座り込む。まだ震えている手を見つめる。いつになったら、ちゃんと眠れる夜が来るんだろう。
外から朝を知らせる鳥の声が聞こえている。
もう朝だ。
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こんにちは、LETOです。
noteは、夢の物語を書き起こすアウトレットとしていい場所だと思い、ずっと鮮明に頭に記憶している夢を書き出してみました。
昔、半年程、酷い不眠と悪夢に悩まされた時期があったんです。
眠れなくて辛くて夜中に涙が出る時期を数か月過ごしたら、今度は寝れる日は必ず悪夢を見て、酷い物語の主人公になってしまうという不思議な時期を過ごしました。内容は、いつもかなり切羽詰まったストレスのある内容。
この夢は、映画「インセプション」の印象を私の脳みそが処理する過程で発生したイメージなのだと思いますが、本当に、まるで映画の中にいるようでした。
飲んでいた薬の作用もあったのだと思いますが、これらの悪夢は異常でした。いくつかの内容は、未だに鮮明に思い出します。
どなたか、夢占いとか詳しい方、もしこの夢の意味が分かる方がいたら是非教えて頂けると嬉しいです。
あっ、ちなみに、弟はちょっと菅田将暉似です。私は齧歯類の顔をしています。
写真:Photo by Jr Korpa on Unsplash