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トラネコ図書館「Life after Life」何度でも人生がやり直せるのなら
生まれ落ちた瞬間から、全く同じ人生をやり直す、何度も何度も、何度も。前世の記憶が微かに残り、少しだけ変わっていく、そんなドラマを見ました。その原作本をご紹介します。
Life After Life (BBC 2022年制作)ドラマ
アーシュラは1910年深い雪の日に産声を上げることなく逝ってしまう。すると、また1910年の同じ日、同じ時刻に生まれ直し、今度は生き延びることができる。母の食事に添えられたのはスノードロップ。一度や二度ではない、何度も何度も、デジャブとしてほんの微かに前世の記憶を持ち続け、災いを避けていき直していくアーシュラ。自分の運命に抗って、進み、とまり、進み、失い、いき直していく。
こんな場面がある。弟が「もし、何度も生き直せるとしたら、完璧になるまでやり直すか?」と聞く。戦争に向かう大切な弟からの言葉に、アーシュラはこういう。「What if…」
スノードロップの花言葉は「希望」、その一方で、「あなたの死を望みます」という
死を象徴する花ともされる。スノードロップがモチーフになった物語は、何度もチャンスを与えられるアーシュラの幸せのありかを考えさせられた。
Life after life 原作
原作が読んでみたくなり、探してみたところ、翻訳されていました。
ライフ・アフター・ライフ
ケイト・アトキンソン (著), 青木 純子 (翻訳)
東京創元社 (2020/5/29)
Kindle版あり
アーシュラは臍の緒が首に巻きつき、産声もあげずに死亡した。しかし、もし死ななかったとしたら……。幾度も生まれ、様々な死を迎え、幾つもの別の生を生きる一人の女性。スペイン風邪で、溺れて、屋根から落ち、ロンドン大空襲で……、デジャヴュとは生き続けられなかった生のかすかな名残なのだろうか? 運命のすべてを受け入れる〈アモル・ファティ〉の考え方に正面から挑む、人生の分かれ道について考えさせられるコスタ賞受賞の傑作!
最初は何度も繰り返される悲劇に呆然としていましたが、話が進んでいくうちに、悲劇が起きようとしても、アーシュラ自身が選択し、強くなっていく場面が見られるようになっていきます。危険を避けるために、神経質で悪夢に悩まされるアーシュラが出会った精神科医の存在。そして、全てを受け止めてくれる優しい父親の存在。誰よりも愛している弟。本の中には辛い出来事がたくさんありますが、その中にある希望、そして、アーシュラが運命に抗っていく姿が印象的な一冊です。
What if、もしもあの時
このことについて、最近よく考えていたので、とても良いタイミングになりました。私自身は、人生は一本道だと思っています。分かれ道に見えても、分かれていないと。だから、もしもあの時選んだものが違うのなら、道はそちらだったのかもしれません。