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生きていても死んでいてもみんなそれぞれに寂しい。

「ルームロンダリング」
2018年と少し前の作品だがオダギリジョー好きな元不動産屋なので「好みだろう」と見てみた。

早速だか見どころの一つは不動産屋の悟郎(オダギリジョー)が着ているシャツではなかろうか。
これらは何柄と言うのか、とにかく素人には着こなせない柄を白シャツよりもさらりと着こなすセンス。
絶対に仲介してほしくない不動産屋、という感じだ。

悟郎は強引な地上げの相談をされるし、不法滞在の外国人に偽造カードを工面するなどの「不動産屋関係ないでしょう」という仕事にも手を出す働き者。
ほんと見習いたい。

そしてこの働き者の不動産屋、悟郎が他にもやっているヤバめのお仕事が「ルームロンダリング」請負人なのだ。

所謂「事故物件」というものは「事故」が起きたことをお客さんに伝えなければならない。が、どこまでもいつまでも伝え続ける訳ではなく「事故」が起きた後、一度 別の誰かがちょっとでも入居すれば、それ以降のお客さんには原則、事故の事実を告げることなくお部屋案内が出来るのだ。
その「ちょっとだけ住む人」を都合してお部屋の事故履歴をナシにする、それがルームロンダリング、らしい。

私が勤めていたのは田舎の不動産屋だったのでロンダリングなど出来ようもなかった。
10年前に出奔したうどん屋の奥さんのことを噂し続けるような土地なのだ 。住めばすぐ隣、に留まらず横や斜めやあちこちから「事故」を聞かされることになるだろう。
じゃんけん然り後だしほど揉めることはない。
やるだけ無駄、よりたちが悪い。

そして悟郎が請け負ったお部屋に住むのが姪の御子(池田エライザ)ちゃんだ。

相棒のあひるの照明器具と共に部屋を渡り歩く


この御子ちゃん、幼い頃にお父さんをなくし「迎えにくるからね」といなくなったお母さんの代わりに育ててくれたおばあちゃんとも18歳で死別して葬儀に現れた叔父さん、悟郎に世話されることになるという生い立ちで、人間が苦手で幽霊が見える、というクセありの女性だ。

悟郎も「家族」だと大事に思っている御子ちゃんを時に渋りながらも幽霊が居座っている事故物件に住まわせる辺りなかなかクセがある。
「悟郎が自分で住むわけにはいかんのか」と思うが、なんか事情でもあるんだろう。

クセある2人

私のような霊 界隈素人には、幽霊と人間は地続きな気がするが御子ちゃんは人間が苦手でも幽霊との同居は構わないらしく、たとえ生きてる間でも生活を共にするのは、しんどそうな相手とも平気に暮らす。

しんどそうな同居人

パンクロッカーの元住人幽霊。
隣人を「クレイマー」呼ばわりしているがロックしてんなら、隣人の言うことはクレームではなく正当な主張のような気がする。

一見、人懐こく明るい彼も
懐かしい地元の酒が飲めない、触ることも出来ない、と自分が死を選んだことを悔いる夜もある。
パンク霊が酒へと伸ばした手は空を切る。


可笑しみと哀しみが絶妙なパンク霊なのだ。

また別のお部屋にはコスプレ好きの殺されてしまった女性の幽霊がいる。
犯人はまだ捕まっておらず、隣人や見回りにきた警察官が「前に事件があったんで気を付けて」と忠告しに来ていたが、ロンダリング中の不動産屋にとってはおしゃべり親切な近隣住民などは都合が悪かろう。

パンク幽霊もコスプレ幽霊も心残りや願いがあり、それを「見える」御子ちゃんに解決してもらおうとする。

あまり乗り気でない御子ちゃんだがロンダリング中に出会う生きている人と死んでしまった人の力になったり力を借りたりする中で、ちょっとずつ変わりはじめる。
御子ちゃんと幽霊との生活はホラーだったりコメディだったりサスペンスだったり、時にほっこりもする。

彼は御子ちゃんの幼馴染みです。幽霊です。

暗示的な場面も多々あって
御子ちゃんのお母さんがお父さんに言った、あのセリフの意味は?
とか
お部屋前に花束が置かれているということは…
とか
映画を観た人と語り合いたい!と思わせる場面が多くある。
私は一人で観てしまったので誰かと答え合わせがしたい。


生きていても死んでいてもみんなそれぞれに寂しい。
一人でもいいけど誰かがいることで楽になれるのならその方がいい。

彼らと関わることで「人が苦手」な御子ちゃんは、何だがいい方向に向かっているようにも思うが、一般人なら「事故物件」など巡り会わない方がいいし、「事故物件」などない方がいい。
入居する方も嫌なら案内する方だって嫌だし、オーナーだってローン返済計画が無茶苦茶になってしまう。

もうすぐ春、異動の季節だ。
新しい町、新しいお部屋に哀しく愉快な元住人が居ないことを祈るばかりである。






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みつい
気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。

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