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出来ない、やったことない、では始まらないので

数日前の21時。
私はとても困っていた。

4歳の娘とテレビを見ていると出演している俳優が子どもの為に作ったというお弁当が紹介された。

キャラ弁である。
ご存知みんなのヒーロー、食パンマンだ。

娘はじっとそれを見た後、おずおずと
「お母さん、ああいうのつくれる?」
と聞いてきた。

春から通うようになった幼稚園は月水金がお弁当なのだ。
お米は詰めるか握る、そもそも食材をペタペタ触ることに苦手意識があったのでキャラ弁を作ることなどあるまいと思っていた。

しかし、4歳児の「おずおず」を初めて目にし「出来ないよ、材料もない」と言った私の心は大きく揺れ動いていた。

何とかならんのか。

子どもを寝かしつけ、スマホで「キャラ弁 食パンマン」で検索をする。

立派な作品が並ぶ。

一応ね、と作り方検索してみると必要なのは海苔とおかかのふりかけ、あとは器用な手先といった感じだ。
器用な手先以外は揃っている。

今は100均等で海苔をパシッと目や口の形にくりぬける装置があるそうなのだがモチロンそんなものはないので、やるとしたらキッチンバサミ一本勝負だ。

やってやろうか。

やったことはないが、立派に炭次郎のキャラ弁を作っているあの人だってはじめの一歩があったはずだ。

私は食パンマンをはじめの一歩にしようではないか。

次の日はいつもより早い6時起床を目指し、30分経っても食パンマンが出来なければ「通常弁当」に切り替える、と予定を立てた。
深追いはいけない。


実際作り始めると、食パンマンの四角さはラップの上から握って成型するのになかなか都合が良い。

やはりやってみなければ分からないこともある。

タイムリミットをなんとかクリアし娘にはお弁当に食パンマンを潜ませたことを黙って送り出した。

驚くがいい。


◇◇◇◇◇


帰ってくると娘は友達との遊びや先生とのエピソードを楽しげに語ってくれた。

もっと他にあったろう

と優しく誘導すると
「おべんとうが食パンマンだったね、スプーンでたべたよ」
と言い
「どうやって作ったの」と聞くので
「ラップで四角くしたよ」と答えると
「ふーん、そうやって作ったんだ」
と今ままで聞いたことのない低い声で呟いて、感想は終わった。

何か思ってた作り方と違ったんだろうか。



そして私は今再びとても困っている。
ドキンちゃんをリクエストされているのだ。

検索していないので私のあやふやな記憶だがあの子、顔、二色使いではなかったか?
だとしたら、出来るわけな

出来ない、やったことないでは始まらない。
私はもしかしたら来週早朝、ドキンちゃんを作っているかもしれない。

処女作「迫り来る顔面」


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