いいお酒を飲みに
お酒は飲むのもウンチクを聞くのも好きなのでサントリーの「山崎倶楽部」というものに登録していて不定期(個人の感覚です)にやってくるメールマガジンを夜、これまた飲みながらダラダラと読んだりしている。
そんなある夜。
メールマガジンを読んだ流れでなんの気無しに「山崎蒸留所(大阪)」の工場見学の予約ページを見ていた。人気と聞いているので予約の日にちの欄には定員に達し予約出来ません印の☓ばかりが並んでいる。
更になんの気無しにそれぞれの日にちをクリックして覗いてみると1時間毎の時間制で区切られた予約時間全てにやはり☓が並ぶ。
リズムに乗って次の日は?次の日は?と覗いていくと日にちには☓が出ているのに朝イチ10時からの時間に一枠だけ空きありの表示を見つけた。
見つけてしまった。
どうする?いく?と戸惑いながら気がつけば無事予約を終えていた。
試飲(有料)ができるらしい。
ウイスキーも買える(個数制限あり)らしい。
一週間後のその日までワクワクが続く。
当日、サントリー山崎蒸留所には電車で向かう。
乗り換えは無し。
人々の通勤時間に重なりやや混んでいる車内に座席の空きを見つけノロノロ移動しているとアッという間にスーツを着たおじさまが席を埋めてしまった。
そりゃそうだよ!
これから尊い勤労をしようって人こそどうぞ座って然るべきなのです。
私のようなただ、酒を求め電車に乗るものは目的の駅まで立っておきますね!
元気ー!
など思っていたのに目的の駅までの間、どんどん人が降りていく。
高槻駅に至っては
「ここがもう終点なのでは」
と思う程人が減り車両の隅に座るサラリーマンらしき人が1人いなければ私もとりあえず降りていたと思う。
そうしてソワソワしながら目的の山崎駅に到着。
さて、私は完璧な方向音痴なのでここから工場まで徒歩10分ほどとあったけど、どれだけかかるかな、と駅の出口を見上げると
安心して下さい
「こっちだよ」
の看板がございます。
それでも不安になるような小道へ誘われ、あの看板と自分を疑いそうになるとき
安心して下さい。
「こっちだよ」
の看板がございます。
絶対に迷わせない
というサントリー側の強い思いを感じながら歩くともう迷いようがない位、堂々とそびえ立つ山崎蒸留所が見えてきたのであとはそれを目指しずんずん歩いた。
歩いたら迷うことを見越した時間設定で家を出たので入館時間の30分以上早くに着いてしまった。
受付までも迷うかも、と思っていたのにそこにも「受付はこちら」と誘う看板があり一本道を迷うことなく建物にたどり着いた。
仕方がないので付近に落ちているどんぐりや名も知らない赤い実を興味がありそうな素振りで見回っているうちに段々と人が集まり自然と列を作っていたので共に並び開館を待つ。
入るとそこは夢の国。
まずはショップでお土産でも買うか。
年末に会う酒好きの面々。
実家の父、夫の父、妹、そしてもちろん私にも計4つ。
と思っていたのに個数制限でウイスキーは3個しか買えない。
誰かを諦めよう。
誰かを。
そしてなんか輝かしい場所を見て
いよいよ試飲。
1人6杯まで、と書いてあるけど6も飲んで陽気でいられるか自分とウイスキーの関係が正直まだ良くわからないのでまずは山崎と響を飲み比べてみることにする。
味の表現の仕方が全然わからないのでグラスにつけられたQRコードを読み込んでみる。
なるほど。
飲んでみると柔らかな感じがする山崎の方がタイプかもしれない。などと思いながらまわりを見渡す。
微笑みウイスキーを飲む人々。
静かだけど楽しそうに会話をしている。
大きなガラス窓の向こうには青い空。
外はすごく寒いのにここは暖かくて穏やか。
外へ向かう扉を空ける男性、と続き後ろでベビーカーを押す女性。
「わー、寒いねぇ」とベビーカーを覗き込み笑いかけている。
いいお酒、って色々あると思う。
希少なお酒。
思い出のお酒。
好みの味のもの。
高価なお酒。
毎日飲める価格の丁度いいお酒。
私がこの日ここで飲んだお酒もまたいいお酒だった。
追い立てられることはないけれど、時間も丁度一時間経つ頃なのでここで帰ることにした。
帰宅の途中セブンイレブンでお昼ご飯用に冷凍のたこ焼きを買った。
うちで温めて食べていると
ふわっ
と不意にウイスキーの香りが。
まさか、
余韻?
昔、ロマネ・コンティ(震えるほど高いワイン)を飲んだ、と言っていた人に
「いいですねぇ、お味どうでした?」
と聞いたことがある。
「美味しかった。けどそれより余韻。帰って風呂入って、寝て起きてもまだ余韻」
と言っていたのを話半分で聞いていたけど、まさか。
私もこれから今日飲んだウイスキーの感想を聞かれたら
「それより余韻。たこ焼き食べても余韻。ソースの向こうに余韻」
と言おうと思う。
残念なのはこれが山崎の余韻なのか響の余韻なのか分からないこと。
なのでまた行こうと思う。
酒に夢中で見学の方が大分疎かにっていたし。