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カラフトルリシジミとの邂逅

7月22日。

7月に道東を回るのは、
2020年の夏ぶりだろうか。

知床の朝は、とても涼しい。

北海道固有の生き物を撮る上で、
その比重がどうしても、
昆虫に傾く季節がある。

もちろん、夏だ。

僕にとって夏は、虫たちのシーズン。
とにかく種数が他の動物と桁違いなので、この季節は毎年、昆虫への解像度を上げて「虫の目」にならなくてはいけない。

今年の北海道の夏は気温もそれほど上がらず、とても過ごしやすいのは、気のせいではないだろう。車中泊をしながら、東へ東へと進みながら。

夜にシマフクロウを観ていた時、
風にほどよい湿度を感じて、明日は湿原を回ろう、そう思った。

深夜に出会ったシマフクロウ。

車を走らせ、いくつかの湖、池を回りながら、周辺に生息する生き物たちを撮影していく。

(なんだか前よりも街中にエゾシカがよく歩くようになった。車から眺めていて思う。)

朝から天気はコロコロと変わって、晴れ間が差したり小雨が降ったりしている。

虫たちは天候に敏感なので、その度に観察する場所を変え、視点を変え、レンズを変え。

なんとなく道端で出会う虫たちにも、
道東の色が伺える。

はじめてのトラハナムグリ

一眼レフカメラを持っていないときに、
トラハナムグリに出会ってしまう。

そんなこともある。

僕ははじめて観る昆虫だったのだけど、この時はフランスギクの花粉と蜜を食べるのに夢中で、僕のことは見向きもしていない様子。

慌ててカメラのあるところまで、
ハナムグリごとお花を摘んで向かったが…

あと少しというところで、
飛んで逃げられてしまった。

飛翔の速さはやはり、ハナムグリ特有。
前翅を開かず後ろ翅だけを伸ばし、ほぼ前動作無しに突然去っていった。

オオカメノキについた水滴。

出会いは突然、別れも突然、それが自然。
悲しくなんてないと言えば、嘘になる。
でもまたどこかで会えると思っている。

知床某所にて

いつのまにか太陽は傾き、
僕の時計は14時を差していた。

終わりよければ全てよしと言う言葉があるけども、森に関して言えば、終わりを間違えれば、死に直結してしまう。流石にこの場所に夜まではいられない。

普段はあまり時計を見ない僕も、
日暮れの時間は逐一チェック。

知床の羆の密度は、
世界をみても類を見ない個体密度だから適度に声を出し、クマスプレーを携えながらそなえなくてはいけない。

そんな時、イトトンボに紛れて青色とも紫色ともとれるような構造色の美しい翅をひらひらと輝かせるチョウに、僕は出会った。

カラフトルリシジミ(Vacciniina optilete daisetsuzana)

やっと、やっと出会えた。

氷河期の生き残りとも言われる、
カラフトルリシジミ。

体長は約2センチほど。
2021年に大雪山の麓でも撮影を試みたが、
出会うことすら、叶わなかった。

カラフトルリシジミは高山帯に生息するシジミチョウで、幼虫の食草も高山によく生えるガンコウランや、クロマメノキといった低木。

南米のビビッドなモルフォチョウもいいけれど、湿原に佇む青い蝶には、お淑やかさを感じる。

北海道で夏を過ごしていても、なかなか出会えるものではない。

翅の表と、裏、できれば両方が写っていた方が、「カラフトルリシジミ」であることがわかるので、この写真が撮れて、内心ほっとした。

シジミチョウは、裏と表の翅の模様でその種類を見分けるからだ。

もっと大きく撮りたい気持ちや、飛翔写真を撮りたい気持ちもあったけど、この写真を撮った後、この子はどこかへ行ってしまった。

蝶々は日差しが差したタイミングを狙って動き回るため、日が陰ると全くどこにいるか見当もつかない。ましてや、この小ささでは。

とはいえ一枚でも撮影できたことは、北海道固有の生き物に目がない僕にとって、とても嬉しいこと。

喜びを噛み締めながら、
帰路の湿原をあるいた。

撮影を終えると、虹が出迎えてくれた

つぎはガンコウランにつく、
幼虫をみてみたい。

北海道の夏の風を感じながら。

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