コントが始まる 9話 感想
終わりが近づいたからか笑いは少なく、ジーンと感動させる方向の回でした。
解散が近づいたことで「負け」とか「失敗」とかいう言葉に拘っている様子が春斗(菅田将暉)に見られました。
真壁先生(鈴木浩介)の庭でのバーベキューに呼ばれた時、先生の息子の太一くんから「夢って追いかけないほうがいいの? 失敗した後、大変そうだなぁと思って」と聞かれます。
春斗「俺たち、失敗なんてしてないよ。時間切れだよ」
瞬太(神木隆之介)「負けたってことが失敗したってことじゃないと思う。そんなこと言ったらさ、トップにいる人以外全員失敗ってことになっちゃうんじゃん」
太一「なんか難しいね。負けても失敗じゃないって」
この会話の流れは素敵だなと思いました。
特に瞬太の言うことはよくわかります。
失敗という言葉は失うという文字が入っていて、負けた上に何かを失った印象があります。
負けというのは失うと決まったわけでもなく、得ることもあると思います。
太一が歯医者に行き、真壁先生とともに退場。
歯医者は休みで「歯医者はいない」「敗者はいない」だと思いますが、こういう親父ギャグみたいなのはいらないなと個人的には思います。
バーベキューの火を見つめながら二人で語るシーンを演出したかったのかもしれませんが、不自然な感じがしました。
二人になって春斗は言います。
春斗「そうか。俺たちは負けたのかぁ。負けてねぇは言い訳だよな。若い子から見たらどう考えても負けなんだろうな」
すると瞬太はさっきは「負けたってことが失敗じゃないと思う」と負けたことは認めていたのに、言葉を翻します。
春斗が「負け」という言葉に拘って傷ついているように見えたからです。
瞬太「俺は勝ってるって思ってるけどね」と新たな視点を春斗に語ります。
今日のように先生に声掛けしてもらったことを例にあげ、「そういう人間関係を幾つ築けたかっていうのが人生の勝敗を決めるって思ってるから」
春斗「それはそうなんだけどなんか別の競技って感じがするんだよな」
瞬太は春斗を喜ばしたいと思っているので必死です。
でも春斗はなんかわかっているんだと思います。
私は個人的な考えですが、勝ち負けは他人との優劣ではなく、自分が決めた目標や願いが達成できたかどうかだと思います。
そしてそれは実現可能な目標や願いが叶った時は勝ち。叶わなかった時は負けなんじゃないかと思います。
例えば地区大会連続一回戦負けの弱小野球部が甲子園に行きたい!という願望を抱いて甲子園に行けなくても負けではないと思います。
勝ち負けのステージにあがってないのです。
地区大会で一勝か二勝と目標を定め努力して叶えば勝ち。叶わなければ負けと思います。
その時、甲子園に行ったチームと比べる必要はないです。
例えば大学受験で身内の上の子は第一志望に合格しましたが、下の子は目指した第一志望が不合格となり、第二志望の大学に進学しました。
彼は「第一志望を目指したことは意味があったと思う。目指さずに進学した大学で良いと思っていたら進学した大学にも落ちていたと思うから」と言いました。
目標が叶わず負けを認めた上で、得るものが大きかったと考えたと思います。
例えばタレントが東大受験を番組で挑戦し、一次のセンター試験も突破せず本試験を受けられずに東大落ちとか言いますが、それは勝ち負けのステージにあがってないので単なるお祭り騒ぎだと思います。
例えば有村架純と結婚したい!と願望があって、有村架純と二人で食事する関係性位あれば、有村架純が他の人と結婚するとき負けたと言えると思います。
ギリギリ知り合いで名前をやっと覚えて挨拶してもらえる位では負けとは言えず、顔も知られてなければ寝言になります🙃
勝ち負けのステージにあがって叶わなければ、心が痛かったり悲しく悔しい気持ちになると思います。
でも後からきっと得るものがあったと気づく時がくると思います。
実現不可能なラインの絵空事ばかり言って本気で負けなければ、傷つくこともない代わりに得るものもないと思います。
マクベスの目標はコント芸人としてある程度売れて食べて行けることだったでしょう。
実現可能なラインだったと思います。
彼らは勝ち負けのステージにあがって、潤平の問題もあるので時間切れというのも間違いではないです。
瞬太が言った「人間関係を幾つ築けたかが人生の勝敗を決める」というのは、勝ち負けを他者との優劣で考えた場合の視点です。
勝ち負けの視点を自分の目標でなく、他者との比較で考えた場合、心は落ち着かないと思います。
瞬太は語ります。
「誰でも良かったわけじゃないんだよね。その日から春斗は俺の命を救ったヒーローになっちゃったからさ。この人のために生きてみようかなって思えて、この人にもっともっと楽しんでもらいたなあって思うことに命を燃やそうって思えて」
「うちの兄と同じこと言ってるなあ」と春斗は言います。
春斗が言わなくても視聴者はバカじゃないので兄と同じと気づくんですが、ながら見の視聴者もいるので脚本家はちゃんと伝えたかったのでしょう。
瞬太「春斗に笑ってもらえる人生を選べてたら、それはそれで間違ってないなあって思える」と言います。
瞬太は人生の軸が春斗にあり、春斗の兄の軸は引きこもりの自分に唯一手を差し伸べてくれた友人にあります。
自分の人生の軸が他者にあるのは、危ない生き方だなぁと思います。
「大豆田とわ子と三人の元夫」では7話から登場した小鳥遊(オダギリジョー)がそういう人物でした。
小鳥遊はヤングケアラーで人生が無かった自分を救ってくれた恩人の社長のために生きています。
外資系ファンドで社長の手足となり「企業買収の悪魔」と呼ばれるほどになります。
とわ子(松たか子)と出会うことで解放されるのですが、とわ子にふられてしまいます。
人生の軸が他人にあるということは、自分の人生が生きられないだけでなく、自分の考えと違う方向に行かなければならなくなるリスクがあります。
自分の心をねじ曲げてしまう危険性があると思います。
瞬太は「世界をまたにかける冒険王に俺はなる」と期間を一年位と言いましたが、春斗のために旅に出るんだと思います。
(世界じゃなくて日本かも)
恐らく生き方が何も見つからない春斗のために、(本当は瞬太だって焼き鳥屋の正社員になる?というくらいにしか定まっていないけど)、瞬太の言う人間関係(人脈)を築く旅に出るんだと思います。
そうすれば春斗が好きなカードを選べるように、春斗の前にいろんなカードを見せてあげる手伝いができると考えているような気がします。
一方、潤平(仲野太賀)は唯一生き方が定まっていて、継げる家業があり、お互いに結婚したいと思っている恋人の奈津美(芳根京子)がいます。
マクベスで仲間と過ごした十年も青春の良き思い出となるでしょう。
あまりにも順風満帆すぎるので、厳しい父親二人を出しているんだと思います(笑)
奈津美の父(でんでん)とのシーンは潤平の礼儀正しい真面目さが出て、良いシーンでした。
ファミレスの店長(明日海りお)のカルロス話は何だったんでしょうね?
意味が無いなら無駄なシーンと思ったので、里穂子(有村架純)と「店長と部長」の名前でコンビを組んでカルロスネタで芸人デビューするのでは?なんて好き勝手に予想しましたが(笑)そんなこともなさそうで、カルロスを引っ張ったのはマジに謎です。
ファミレスの名前はメイクシラーズで、ローマ字読みだと「負け知らず」
冒頭のコントの落ちも春斗が瞬太に「あんたも立派な勝者だよ」と言われて嬉しさに感動する春斗となり、ネタを書く春斗の中で、あるいは脚本家の中で、「負け」というものへの反発とか拘りが強いのだとわかります。
里穂子はあれほど名前で読んで欲しいとアピールして、呼ばれて喜んでいたのに、結局マクベスのメンバーの最後の挨拶も中浜さん呼びで、良いシーンだったけど彼らとの間に壁を感じて、里穂子の気持ちになると哀しくなりました。
春斗は実業家の小林勇馬(浅香航大)と高校時代、けっこう喋る仲だったんですね。
潤平が奈津美のことで勇馬から距離をとる気持ちはわかりますが、潤平のために春斗まで勇馬を避けるのは極端だなと思ったし、ちょっとよくわからない行動です。
潤平は自分のために春斗が勇馬との間に距離をつくったことに負い目を感じ、今回仕事を断ったことにも責任を感じています。
なので勇馬との飲み会をセッティングして春斗を誘ったのは良かったと思います🙂
「春斗のこと喜ばせたかったんじゃない?」と瞬太は気づきますが、
「いや俺のためっていうか自分のためだろ」と春斗は気づきません。
作家としては致命的な鈍感さで、だから面白いコントが書けなかったのかなと思います。
そして自分のために献身的に想ってくれることが信じられないほど、春斗は自分に自信が持てないのだと思います。
奈津美がやっとマクベスのライブに行きたいと言ってくれて、潤平の気持ちになってとても嬉しかったです!♥️
1話からすっと感想を書いています。
最終回もまた楽しみに見て感想を書きたいと思います。
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