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この本との出会い⑥ 『ネガティブ・ケイパビリティ』 -答えの出ない事態に耐える力-

帚木蓬生著

日常はモヤモヤっとしたことで満ちています。

ある物事を自分の望む状態にしようと思っても、そうなることもあればできないこともあります。というか、できないことの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

私たちは常に、「正解を出さなければいけない」という思い込みに支配されていますし、そうすることを周囲から求められていることが多いように思います。

最たる例は、学校教育ですね。他国のことはよく分かりませんが、日本では受験勉強に主眼を置いた学習がなされているようですね。受験だけのことを考えたらそれでもいいのでしょうが、長い人生、そうそう簡単に正解を出し続けることはできません。

「これが正解だ!」と思って決断したことが、後々不具合を起こしたり、「ああ、なんでこんなことをしてしまったんだろう」と嘆いていたことが、翻って自分にとっては心地よい方向へ進むきっかけになったり、「番狂わせ」に悲しんだり喜んだり。何が正解だったのかは後になってから分かることなのかも、というよりは、そもそも正解ってどういうことなんだろうと考えてしまいます。

もちろん、千円しか持っていないときには千円以内で買い物をするとか、自分の足の大きさに合ったサイズの靴を選ぶとかいった場合など、社会通念上や物理的条件での正解はきちんとありますが....

私は答えの出ていない「宙吊り状態」でいることが得意ではありません。すぐに「解決しよう」という傾向にありますが、出した答えには責任を取らなければなりません。性急に出した答えに、後々切ない思いをすることが少なからずあります。

私に必要なのは、「ネガティブ・ケイパビリティ」なのです。

ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)負の能力もしくは陰性能力)とは、どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」をさします。
あるいは、「性急に証明は理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」を意味します。                   

出典:ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力|帚木蓬生|朝日新聞出版

この本の作者が勧めているのは、中途半端な知識や意味づけでせっかちに問題解決にあたるのではなく、宙ぶらりんの状態に耐える態度を身につけることです。浅い理解で「分かったつもり」で問題を「処理する」のではなく、論理を離れた、どのようにもきめられない宙吊り状態に耐え、問題を「抱えたまま」でいると、発展的な深い理解でその問題を「扱う」ことができるようになると述べています。

すぐにこの能力を身につけることはできそうにありませんが、モヤモヤした状態を楽しめるよう工夫をしていきます。




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