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100年後あなたもわたしもいない日に | 感想
とある田舎の本屋さんで発見しました。
装丁に惹かれた1冊。
自由闊達にして緩急自在の線を引く寺田マユミのイラスト。そして抽象と具体のあわいを妙と詠む土門蘭の短歌。
そんなふたりが出会って、歌集でもあり、画集でもある本ができました。
「トリミング」がテーマの短歌とイラストの本です。表紙も、このとおり。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/116181054/picture_pc_cc5b826f116cf124a3a553e92ff5366a.png?width=1200)
この仕掛け、素敵……!
表紙では、前の人の顔と奥の人の手しか見えなかったんですね。
本の中にも、トリミングされている箇所が多くあります。前のページから文字や絵が続き、切り取られ、世界観が造られています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/116182717/picture_pc_5b44a229927b1a8dd76f6772151c4879.png?width=1200)
その身ひとつで 空に呑まれる
雨が風船へと変わったり、孤独に佇む人が前を歩く想い人へ変わったり。
凝った装丁、余白の美しいイラストも素敵なのですが、ひとつひとつの短歌がテーマのとおり「日常の風景を切り取る」もので、いろんな世界を角度を変えて見せてもらえるものでした。
特に私が好きな歌をいくつか。
友達の定義について 話す午後
ゆっくり君が 友達になる
君の吐く
言葉を固めて
飴にして
ときどき舐める 悲しいときとか
どこまでも ひとりであるのは知っている
時々うっかり 忘れるだけで
イラストと文章、余白で完成されているのであまり説明するのも野暮なのですが。
些細な日常の欠片がきらっと光る、そんな内容でした。
恋人、友人、家族、想い人、過去、未来。
読んで思い浮かべるのは誰か。
いつの思い出なのか、未来に思いを馳せるのか。
読むタイミングによって変化するであろうそれを楽しむのも、またおもしろいのかなと思いました。
最後の一句では、タイトルの「100年後あなたもわたしもいない日に」の句を読むことができます。こちら心にくるので、ぜひお手に取った際に確認してみてください。
文 : 土門蘭
絵 : 寺田マユミ
「100年後あなたもわたしもいない日に」
文鳥社、2017年