100年後あなたもわたしもいない日に | 感想
とある田舎の本屋さんで発見しました。
装丁に惹かれた1冊。
「トリミング」がテーマの短歌とイラストの本です。表紙も、このとおり。
この仕掛け、素敵……!
表紙では、前の人の顔と奥の人の手しか見えなかったんですね。
本の中にも、トリミングされている箇所が多くあります。前のページから文字や絵が続き、切り取られ、世界観が造られています。
雨が風船へと変わったり、孤独に佇む人が前を歩く想い人へ変わったり。
凝った装丁、余白の美しいイラストも素敵なのですが、ひとつひとつの短歌がテーマのとおり「日常の風景を切り取る」もので、いろんな世界を角度を変えて見せてもらえるものでした。
特に私が好きな歌をいくつか。
イラストと文章、余白で完成されているのであまり説明するのも野暮なのですが。
些細な日常の欠片がきらっと光る、そんな内容でした。
恋人、友人、家族、想い人、過去、未来。
読んで思い浮かべるのは誰か。
いつの思い出なのか、未来に思いを馳せるのか。
読むタイミングによって変化するであろうそれを楽しむのも、またおもしろいのかなと思いました。
最後の一句では、タイトルの「100年後あなたもわたしもいない日に」の句を読むことができます。こちら心にくるので、ぜひお手に取った際に確認してみてください。
文 : 土門蘭
絵 : 寺田マユミ
「100年後あなたもわたしもいない日に」
文鳥社、2017年