新しい本と出合うこと
閻連科 『年月日』(谷川毅訳 白水社)
新しい本や作家と出合うことは実に心躍る出来事です。
この本と作家のことはnoteでフォローさせていただいているwhitebearさんの投稿で知りました。
恥ずかしながら、私がこれまで全く知らなかった作家です。
whitebearさんの投稿を読んで興味を持ち、図書館で借りてみました。
紹介文によると、閻連科さんは1958年に中国の河南省の貧しい農村に生まれ、飢えと孤独の中で幼少期を過ごしたそうです。
中国兵士の暗黒面や大飢饉の内幕を描いた小説で何度も発禁処分を受けたということですが、魯迅文学賞やフランツ・カフカ賞などを受賞している実力派の作家です。
内容は中国の農村で大日照りが続き、村人が出て行ったため取り残された老人と盲犬がたった一本だけ残ったトウモロコシを守りながら命をつなごうとする物語です。
照りつける太陽、命を守る水を得るために鼠の大群や狼の群れと対峙するというストーリーなのですが、老人の内面の葛藤や大自然の移ろい、作物や生き物たちの描写が素晴らしく、非常に読み応えのある一冊でした。
特に老人と愛犬メナシの心の交流が素晴らしく、ラストは生きることの厳しさと温かさに感動します。
本書を読み終わるとタイトル『年月日』という意味がずしりと重く感じられます。
作者の閻連科さんのあとがきによると、本作は作者にまとわりついているイメージとは違う一面を描いた内容となっているということです。
それまでの作者自身についてまわった禁書作家、凶悪な反骨精神の作家というイメージが自分の全てではないということを読者に知って欲しいと語っています。
私は今回の作品がこの作者を知った初めての小説なので、他の小説とどのような作風の違いがあるのか、その点についてもとても興味を惹かれました。
この作品を読んだあとで、同じ作者が他の小説では凶悪な作風の作者であることを想像することの方が逆に難しいです。
今回は、私がこれまで知らなかった作家の作品をnoteの投稿を通して出会った幸運について書きました。
投稿で本書をご紹介くださったwhitebearさん、ありがとうございます!