アランレモン

読書の記録。特に印象に残った作家や作品について考えたことを書いていきます。 その他日々…

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読書の記録。特に印象に残った作家や作品について考えたことを書いていきます。 その他日々の雑感なども。

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  • 私の小函

    読んだ本、観た映画、私の好きなものなど。

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    投稿を読んで気になった記事、本、映画などの紹介。

  • 今更、大江健三郎

    大江健三郎作品についての感想を載せています。

  • エッセイ

    日々の雑感など、思ったことを綴っています。

最近の記事

金色の目の謎

宮澤賢治作品に登場する金色の目の人とは・・・ 宮澤賢治のお話を読んでいて、時々「金色の目」をした山男が登場することが気になった方はいるでしょうか。 『山男の四月』の冒頭にまずその描写があります。 最初この部分を読んだ時、私は特に注意を払いませんでした。童話にはこのような描写はごく普通のものだと思ったからです。 ところが、『おきなぐさ』という作品を読んだ時、再び次のような金色の目をした山男が出てきたので、ちょっと不思議な感じがしました。 賢治は「金色の目をした山男」という

    • 映画『銀河鉄道の夜』の猫

      先月9月の末、『銀河鉄道の夜』が映画館で公開されているのを知って、観に行ってきました。映画館のスクリーンで鑑賞するのは初めてです。 初めてこの作品を鑑賞した時、登場人物たちが猫になっているところに驚き、「なんで猫?」という違和感がありました。 けれど、鑑賞するうちに全く違和感はなくなり、もうこの映画は猫意外は考えられないと感じるほど自然で優しい気持ちになれました。 ジョバンニやカンパネルラなどの登場人物を「猫」に変えて独特の世界を創り上げた杉井ギサブロー監督の手腕に感じ入り

      • 偶には古典を(芭蕉1)

        私の好きな古典 初めてnoteに投稿をした時、須賀敦子さんの『塩一トンの読書』というエッセイについて触れました。古典を読むとはどういうことか、について書かれた内容です。 私はこれまで古典と言われる作品をあまり多く読んできませんでした。 読んできたものは自分の好きな限られた範囲のものだけです。 そんなごくわずかな古典作品でも、ときどき読み返すとやはり素晴らしいと思います。 私が好きな日本文学の古典の中で、これまで一番多く繰り返し読んできたのは芭蕉の作品です。 高校の授業で

        • 今更、大江健三郎(5)

          『芽むしり仔撃ち』というジオラマ 『芽むしり仔撃ち』は大江健三郎初期作品の中で私が最も好きだった小説です。 他にも素晴らしい作品が多い中で、私がこの小説に特に心を惹かれた理由は、作品の構成や内容の素晴らしさもさることながら、この小説の主要人物が皆年若い少年たちだったことです。 大江作品の初期作品群は殆どが大江自身と等身大(高校生から大学生、20代後半までの青年期)の人物を主人公にした内容になっています。しかしこの作品ではそれよりも若い(現在の中学生くらいの)10代と思われる

        金色の目の謎

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          今更、大江健三郎(4 )

          なぜ再び大江作品を読もうと思ったのか。 第1回目に書き記した大江健三郎初期作品群47作品のうち現在手に出来る45作品をようやく読み終えました。 初期45作を断続的に読み続け、大江ワールドに浸る読書時間を過ごすことができたこの数か月です。 まず初期45作品の中で私が特に好きだった作品、心に響いた作品を挙げてみたいと思います。 『芽むしり仔撃ち』(1958年) この作品は45作品中群をぬいて好きだった作品です。 もし、初めて読む大江作品がこの一作だったら、大江作品に対する

          今更、大江健三郎(4 )

          新しい本と出合うこと

          閻連科 『年月日』(谷川毅訳 白水社) 新しい本や作家と出合うことは実に心躍る出来事です。 この本と作家のことはnoteでフォローさせていただいているwhitebearさんの投稿で知りました。   恥ずかしながら、私がこれまで全く知らなかった作家です。 whitebearさんの投稿を読んで興味を持ち、図書館で借りてみました。 紹介文によると、閻連科さんは1958年に中国の河南省の貧しい農村に生まれ、飢えと孤独の中で幼少期を過ごしたそうです。 中国兵士の暗黒面や大飢饉の内

          新しい本と出合うこと

          ドキュメンタリー&ドキュメンタリー

          ドキュメンタリーを観るのは好きです。 近年は配信でも数多くのドキュメンタリーを観ることができるので好みの作品を選んで観ています。 ここ数か月でも、配信で何本か鑑賞しました。 その中で特に印象深かったドキュメンタリーは次のような作品です。 どれも珠玉の作品でした。(Amazon primeで鑑賞) 『花と兵隊』(監督・松林要樹) 『オキナワサントス』(監督・松林要樹) 『台湾アイデンティティー』(監督・酒井充子) 『クナシリ』(監督・ウラジミール・コズロフ) 『A』(監督・

          ドキュメンタリー&ドキュメンタリー

          今更、大江健三郎(3)

          初期作品群(Ⅲ) 『幸福な若いギリアク人』『犬の世界』 前回、大江健三郎の作品のどういうところに魅力を感じるのかについて少し書いたのですが、今回もその続きです。 私は自分が好きだなあと思う作家に出会うと、その作家や作品についてもっと知りたくなり、作品を読みながら同時並行でいろいろな資料を読んだり、他の読者がどんなふうに評しているのかを調べる方です。 大江文学の愛読者は層が厚いので、その点資料や感想には事欠きません。 大江作品についての様々な紹介や評を読んでいて、何人か

          今更、大江健三郎(3)

          夜のおまけ

          夜、眠る前のちょっとした時間。 一日のやることが大体終わって、家族はそれぞれ思い思いに過ごしている。ほんの少しだけの隙間時間ですが、その静かな時間がとても好きです。 もう相当昔のことだったと思いますが、今は亡き中野孝次さんが、「夜眠る前に、昔読んだ長編を少しずつ読んで寝るのが読書の楽しみ方の一つだ。最近は『白鯨』を少しずつ読んで眠りにつく」というような内容をどこかのコラム(たぶん新聞)に掲載していたことがあります。 それを読んで、「とてもいいなあ、自分もそうしよう」と真似を

          今更、大江健三郎(2)

          初期作品群(Ⅱ) 『セヴンティーン』『政治少年死す(セヴンティーン第2部)』 大江健三郎さんは、読み手によってかなり好き嫌いが分かれるタイプの作家ではないかと思っています。 熱心な愛読者も多い反面、アンチもまた多いという印象があります。 初期の作品群では、扱う題材に性の描写や暴力、殺戮など過激な内容が多いので、私の第一印象がそうだったようにそれを好まない読者もいると思います。また彼の文章が読みづらい、難解、という評もよく見かけます。それから別の大きな理由として、彼の政治的

          今更、大江健三郎(2)

          今更、大江健三郎(1)

          初期の作品群(Ⅰ) 今回は、私がこのところ継続して読んでいる作家、大江健三郎さんについて書いてみようと思います。 2023年3月、大江健三郎さんが世を去ってから約一年一ヶ月が過ぎました。 享年88歳。22歳で最初の短編『奇妙な仕事』を発表してから、最後の小説『晩年様式集(イン・レイト・ワーク)』を78歳で書き上げるまで、50年以上を走り続けた作家です。 大江健三郎作品を私はこれまで殆ど読んできませんでした。 学生時代に初期の作品『死者の奢り』『飼育』『セヴンティーン』など

          今更、大江健三郎(1)

          付箋をつけるか、書き込むか

          今日は4月1日。 毎年、新年度っていいなと思います。 1月元旦を一年の始まりとしてスタートするのは一般的でしょうが、4月1日も新しい年度がスタートする出発の日です。電車の中で新しいスーツに身を包んだ人を見たり、ニュースを見ていて新しい顔ぶれになっていたりするのを見ると、新しい年がスタートしたんだとフレッシュな気持ちになれます。 新年度が始まって、学生の方は新しい教科書や文献などを読み始めるかもしれません。新しい本を読み始める時は、本当に心が躍るようです。 ところで、最近読

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          読書のついて

          突然noteを始めてみようと思いたちました。 私は他のSNSで読書について時々発信しているので、これまで発信する場所は一つで十分だと思っていました。 なぜ二つ目の発信場所を作ろうと思ったかというと、時々SNSでは書ききれない内容を書きたくなってしまうためです。ここでは、SNSのスペースでは書けなかった内容をまとめて書いてみようと思います。読書日記+日々の雑感のような内容にしていきたいです。 このところずっと続けて読んでいるのが大江健三郎さんの作品です。 大江健三郎さんは多作

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