#11 「日本経済新聞社事件」東京地裁
2003年10月29日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第11号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日本経済新聞社(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2002年3月25日)
▽ <主な争点>
私的なホームページで会社を批判したことによる出勤停止、配転命令など
1.事件の概要は?
本件は、N社に記者として勤務していたXがインターネット上の自らのホームページ(以下、HP)において、取材上知り得た事実や同社のさまざまな方針についての批判などを掲載し、本来守るべき記者の鉄則を破ると同時に経営方針、編集方針に反するような行為をし、上司の再三の注意にかかわらずHPへの掲載を継続したことが懲戒処分事由にあたるとしてなした出勤停止処分(14日間)および東京本社編集局資料部への配置転換命令の効力が争われたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Xについて>
★ Xは、平成8年4月、N社に入社して西部支社編集部に配属された者であるところ、X個人のHPの中で記者として感じた報道現場における疑問点やN社・マスコミ全体の問題点、これらを改革するための意見等を公開するようになった。
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<本件懲戒処分、本件配転命令に至った経緯等について>
▼ 9年4月頃、Xは『週刊朝日』の記者から取材を受け、その記事からXがHPを開設していることを知ったM編集部長(Xの上司)はN社への批判等重大な問題を含んでいるHPは全面的に閉鎖するようXに命じた。
▼ これに対して、Xは「HPの開設は表現の自由。ダメなら規則を決めてくれれば、それには従う。基準を作ることを条件にHPを閉鎖する」と反論した。
▼ 同年5月、XはHPを閉鎖したが、M部長はN社の東京本社人事局に対してHPに関する基準の制定を検討するよう求めることはしなかった。
▼ XはN社がHPに関する基準を制定しようとしないことや、議論もないまま閉鎖を命じたM部長の措置に納得がいかなくなり、10年5月にHPを再開した。その際、同部長から問題があると指摘されていた各文書を何らかの修正を加えることなく、改めてHP上に公開した。
▼ 11年1月、M部長はXがHPを再開していることを知り、内容を確認したところ、就業規則に反すること、N社の名誉を毀損する問題があることが認められたため、問題点をXに指摘した上でHPをインターネット上から撤去するよう命じた。
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