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#106 「カンドー事件」東京地裁(再掲)

2005年10月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第106号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【カンドー(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2005年2月18日)

▽ <主な争点>
躁うつ病による休職からの復帰後の再発等を理由になされた普通解雇の効力

1.事件の概要は?

本件は、躁うつ病による休職期間途中に復職が認められ、病気の再発等を理由にK社から解雇されたXが当該解雇は解雇権の濫用であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と過去および将来の賃金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XがK社に入社後、休職するまでの経緯>

★ K社は、ガス管施設ならびに水道衛生、空気調和、冷房工事等を行うことを目的とする会社である。

▼ Xは平成元年4月、K社に採用され、T営業所にて勤務した後、10年9月からM営業所で勤務し、いずれも資材管理を担当していた。

▼ Xは11年夏頃から精神科のY医師の診察を受けるようになり、12年1月、自律神経失調症という病名で病院に入院し、療養のため約1ヵ月間欠勤したが、同年3月、Y医師から躁うつ病との診断を受けた。

▼ 同年4月から6月までの間、Xは早退等により、終業時間前に帰社することが多くなった。同年11月、Xからの病気で休職したい旨の申し入れに対し、M営業所のA所長が休職するのであれば診断書を持参するよう指示したところ、XはY医師が作成した「うつ状態」と記載された診断書を持参したが、その後も出勤を続けた。

▼ 13年1月以降、Xはうつ状態が続いて欠勤することが多くなった。14年8月、K社はXの解雇を検討したが、休職して治療に専念することにより、病気が治癒し、普通に働ける可能性もあったため、K社はXに対し、休職しても一年半の間は傷病手当金等で賃金の90%が支給されること等を伝え、休職を検討するよう申し出た。

▼ XはK社に対して、休職願を提出し、躁うつ病により、14年9月1日から休職した。なお、Xは休職と同時に本社総務部に異動となった。

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<Xが復職してから解雇されるまでの経緯>

▼ 15年3月末、XはK社に対して、病気がよくなったので復職したいと強く申し出るとともに「次第に症状軽快し、現在のところ勤務可能と思われます」と記載されたY医師の診断書を提出し、K社は同年4月7日からの復職を認めた。

▼ K社はXを総務部の総務グループに配置し、補佐的な仕事をさせながら様子を見て、従前の資材管理のポストに空きが出来次第、異動させることにした。

▼ 同年9月、S営業所の資材管理のポストに欠員が出て、K社はXについて、同年6月以降欠勤が減り、病気の再発と見られる事情も見られなかったことから、XにS営業所への異動を勧めた。

▼ しかし、XはS営業所で扱うのはガス器具の資材であり、これまで担当してきた業務とは内容が異なること、Y医師から異動は好ましくないと言われたことを理由に異動を拒んだ。

▼ 16年1月、総務グループのBマネージャーは総務部のC部長から、Xの病状確認とX・Y医師・Bマネージャーによる三者面談の設定を指示されたが、XはBマネージャーと面談した際、自分は正常であると説明し、Y医師らとの三者面談は必要がないとして、Y医師と会うのはBマネージャーだけでよいと主張した。

▼ Bマネージャーは過去の経験から、X同席でないとY医師からは話をしてもらえないと判断し、Y医師と連絡をとることなく、同医師の意見を聞かなかった。

▼ 同年1月末、K社はXに対して、口頭で解雇を通告し、同年3月15日には同月末日をもって、Xを解雇するとの解雇通知書を交付した(以下「本件解雇」という)。

★ K社はXに対する同年3月4日付の「X氏の勤務状況と解雇に至るK社の判断について」と題する書面の「3.総括的評価」において、「(a)病気が完治せず、本来求められるレベルの職務を遂行できない、(b)奇行・暴言を繰り返し、職場秩序の維持が困難となり、外来者に対しての暴言等により、K社に対し、著しく悪影響をもたらしている、(c)本人の適性を考慮し、配置転換等を行いながら指導を継続してきたが、能力に欠け、職務遂行に耐えられない」と記載した。

▼ 同年4月5日、Y医師はXについて、「躁うつ病による軽躁状態のため通院治療中であるが、事務的な作業を行うことに支障はなく、就業規則第28条一項および二項に該当する状態とは言えない」との診断書を作成した。

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<K社の就業規則上の定めについて>

★ K社の就業規則では、休職および解雇事由について、次のとおり定めている。

[休職について]

第16条 1号
休業開始時の勤続年数が10年以上20年未満の者が業務外の傷病で欠勤2ヵ月を超えたときの休職期間は2年とする。

第19条
16条1号により休職となった者が復職しようとするときは、原則として、会社が指定する医師の就業可能であると認める診断書を添え、所定の復職願を提出し、会社の許可を受けなければならない。

第20条
休職期間満了までに休職事由が消滅したときは、次の基準により復職させる。
(ア)原則として、旧職務に復職させる。
(イ)旧業務に復職させることができないときは他の職務に配置換えする。

第21条
復職後3ヵ月以内に再び同一の理由により欠勤するに至ったときは、休職期間は前後通算する。

[解雇事由について]

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