#187 「地方公務員災害補償基金高知県支部長事件」高知地裁
2007年7月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第187号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【地方公務員災害補償基金高知県支部長(以下「C基金K支部長」)事件・高知地裁判決】(2006年6月2日)
▽ <主な争点>
市役所職員のうつ病による自殺と公務との間に因果関係があるか否か
1.事件の概要は?
本件は、南国市(以下「N市」という)税務課市民税係に勤務していたXが、自宅納屋において、縊死(いし)したことについて、Xの妻であるYが公務災害認定請求をしたところ、C基金K支部長が公務外の災害であると認定する処分(以下「本件公務外認定処分」という)をしたのに対し、Yが本件公務外認定処分は違法であるとして、その取消しを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Xおよび本件症状について>
★ X(昭和31年生まれ)は、昭和55年4月、N市役所に採用され、建設課、市民課、同和対策課、財政課を経て、平成8年4月から税務課市民税係(以下「市民税係」という)の配属となった。
▼ 12年7月22日当時、Xは中等度うつ病エピソード(以下「本件症状」という)に罹患し、同日午前11時頃、自宅納屋2階において、本件症状により縊死した。
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<市民税係の業務、Xの勤務態度等について>
★ 市民税係は、県・市民税の額を算出して、納税通知書を発送することを主な業務(賦課事務作業)としていたが、殊に例年2月から3月までの期間については、税務署と同様の確定申告受付業務に日中の時間が割かれ、その他の業務を、確定申告受付業務終了後に行わなければならないため、業務量が激増する状況であった。
★ 12年4月当時、N市役所の税務課に配置されていた職員30名のうち、市民税係には10名が配置されていたほか、例年2月中旬頃から3月中旬頃までの間、臨時職員が4名配置されていた。
★ Xは勤務態度が非常に真面目で、明るくスポーツ好きで人当たりも良いといった人柄であったため、上司から信頼され、後輩職員からも尊敬されており、仕事も速いと評価されていた。また、Xは家庭生活等の私生活において、ストレスを受ける環境にはなかった。
★ Xの12年1月から4月までの4ヵ月間の時間外勤務時間は、1月38時間、2月87時間、3月107時間、そして4月が89時間で、1ヵ月平均80時間を超えるものとなっていた。
★ 現在の医学的知見では、環境由来のストレスと、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神破綻が生じるかどうかが決せられ、環境由来のストレスが強ければ個体側の脆弱性が小さくとも精神障害が起きる一方、個体側の脆弱性が大きければ環境由来のストレスが弱くとも精神障害が起きるものと考えられている(以下「ストレス・脆弱性理論」という)。
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<本件公務外認定処分等について>
▼ 12年11月、YはC基金K支部長に、Xの死亡が公務に基づくものであるとして、公務災害認定請求を行った。これに対し、C基金K支部長は14年6月、本件公務外認定処分をした。
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