#79 「松阪鉄工所事件」津地裁(再掲)
2005年3月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第79号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 参考条文
★ 憲法
第14条(法の下の平等)
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第19条(思想及び良心の自由)
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
★ 労働基準法
第3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
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■ 【松阪鉄工所(以下、M社)事件・津地裁判決】(2000年9月28日)
▽ <主な争点>
思想信条を理由とする差別的取扱
1.事件の概要は?
本件は、M社が従業員であるXを長期にわたって昇格させないことは、Xが日本共産党に所属し、労働組合の大会などで労働者の立場からM社を批判する発言を積極的に行ってきたことに対する差別であるとして、労働契約に基づき同期男性従業員との差額賃金などの支払いを、または不法行為に基づく損害賠償を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびXについて>
★ M社は作業用工具および諸機械の製造販売等を目的とする会社である。
★ Xは昭和19年生まれの女性であり、昭和35年3月にM社に雇用され、工員としてその業務に従事してきた。
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<Xの職能資格等級、共産党入党等について>
▼ Xは、職能資格等級制度が採用された昭和37年に1等級に格付けされ、50年に2等級に、61年に3等級に昇格した。その後、Xは10年以上にわたって昇格しなかったが、平成8年に下位等級長期滞留者救済規定が発足し、同規定の基準に合致したことから4等級に昇格した。
★ Xと同期入社した者は現在全員6等級以上に位置付けられており、その中の一人であるYとXの賃金には年額で約96万円、賞与には約17万円の開きがある。
▼ XはM社に雇用されると同時に労働組合に加入し、その後定期大会や職場集会において、労働者の立場から同社に批判的な意見を積極的に発表してきた。
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