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#594 「欧州連合事件」東京地裁

2023年8月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第594号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【欧州連合(以下、EU)事件・東京地裁判決】(2022年2月2日)

▽ <主な争点>
職種を特定して採用された広報担当職員に対する解雇など

1.事件の概要は?

本件は、EUと雇用契約を締結し、駐日欧州連合代表部において広報業務に従事していたXが、2016年1月27日付でEUがした解雇について、解雇権濫用により無効であると主張し、EUに対し、(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)2016年2月支払分以降の賃金として、同月から本判決確定の日まで、毎月25日かぎり73万7965円およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<EUおよびXについて>

★ EUは、2009年にリスボン条約が発効したことにより、欧州共同体の地位を承継した欧州における国家の統合体であり、駐日欧州連合代表部(以下「代表部」という)は特命全権大使を代表者として、EUを代表する外交使節団の地位を有している。

★ Xは、2008年7月、欧州共同体との間で「雇用期間:期限の定めのなし、職種:広報官、給与:月額:54万8091円」という内容の雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結し、広報業務に従事した外国籍の者である。その後、EUが欧州共同体の地位を承継した。なお、Xの給与額は2016年1月27日までに月額73万7965円に改定された。


<本件解雇に至った経緯等について>

▼ 代表部は2015年11月、Xに対し、職務遂行能力に関する聴聞会を同月26日に開催する旨を通知した。

▼ Xは同月24日、クリニックを受診し、うつ状態の病名で約1カ月の休養加療を要するとの診断を受け、代表部に対し、うつ病を理由として12月20日まで休業する旨を伝え、すでに申請していた有給休暇の取得と併せて2016年1月11日まで出勤しない旨を告げた。

▼ Xは2016年1月12日、上記クリニックを受診し、同月31日まで自宅療養を要するとの診断を受け、同日まで休職期間を延長する旨の申請をした。

▼ EUは同月27日、Xに対し、電子メールにより、就業規則に基づき解雇する旨の意思表示(以下「本件解雇」という)を行い、2月2日付で解雇通知書を送付した。

▼ Xは同月4日付内容証明郵便により、EUに対し、本件解雇が無効であることを通知するとともに、うつ病の治療のために3月31日まで休職期間の延長を申請する旨の通知書を送付した。

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