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#602 「全日警事件」静岡地裁(再掲)

2023年12月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第602号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【全日警(以下、Z社)事件・静岡地裁判決】(2022年4月22日)

▽ <主な争点>
休憩時間の労働時間該当性など

1.事件の概要は?

本件は、AおよびBがZ社に在職中休憩時間もすぐに出動できるよう待機していたから労働時間に該当すると主張して、同社に対し(1)主位的に労働契約に基づく未払時間外手当として、Aは57万2079円、Bは46万2669円およびそれぞれに対する遅延損害金、(2)予備的に休憩時間を自由に利用させるべき労働契約の債務不履行による損害賠償(慰謝料)として、Aは57万円、Bは45万円およびそれぞれに対する遅延損害金の各支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Z社、AおよびBについて>

★ Z社は、企業警備等を業としている会社である。

★ Aは、2015年4月、Z社と期間の定めのない労働契約を締結し、新幹線沿線警備業務に従事してきたが、2021年3月に退職した者である。

★ Bは、2007年4月、Z社と雇用期間を1年とする労働契約(契約社員)を締結し、新幹線沿線警備業務に従事してきた者である。その後、上記労働契約は更新されたが、Bは2021年3月、退職した。


<Aらの勤務内容、休憩時間中の対応等について>

★ AらはZ社から支給された携帯電話を携帯し、責任者および見張り員の2人1組で車両に乗り、静岡エリア区間の新幹線沿線警備業務(JRP:JRパトロール、以下「静岡隊」という)に従事していた。

★ もっとも、JR東海では東海道新幹線沿線全体を20か所の保線所により24時間365日保守する体制が確立されており、Z社の警備業務はその補佐的な役割であった。

★ Aらの所定労働時間は、夜間の午後7時から翌日午前7時15分または午前9時50分までで、休憩時間2時間(午前0時から午前5時の間に取得できる)を除く10時間15分または12時間50分であった。

★ Aらは2時間の休憩時間中、Z社から携帯電話に出動要請があれば、15分以内に現場に到着するよう指示されており、休憩時間中、出動要請に対応した場合は、当該時間分を振り替えて休憩時間としていた。

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