#517 「富国生命保険事件」仙台地裁(再掲)
2020年8月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第517号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【富国生命保険(以下、F社)事件・仙台地裁判決】(2019年3月28日)
▽ <主な争点>
総合職加算および勤務手当が法内残業の対価に当たるかなど
1.事件の概要は?
本件は、F社の総合職として勤務したXが退職後に同社に対し、在職中に時間外労働をしたと主張して、賃金請求権に基づく割増賃金等の支払を求めるとともに割増賃金の不払について労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<F社およびXについて>
★ F社は、生命保険業を主な目的とする会社である。
★ Xは、平成27年4月からF社に雇用され、総合職として勤務したが、29年5月に退職した者である。
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<F社の勤怠管理システム、労基署の是正勧告、Xが提訴に至った経緯等について>
★ Xの所定労働時間は7時間であり、Xに支給されていた総合職加算および勤務手当は給与規定上、「支給対象者は、法内残業時間に対する時間外勤務手当の支給対象外とする。」と規定されていた。
★ F社は勤怠管理を従業員に始業時刻や終業時刻を人事システムの勤務実績入力の画面(以下「本件システム」という)に打刻させる方法で行っている。なお、本件システムは終業時刻を打刻し忘れた場合には、一律に所定終業時刻である「17時00分」と表示するようになっていた。また、従業員が昼の休憩時間以外に私用に従事するなどした場合には、その時間を本件システムに「非労働時間」として入力することになっていた。
▼ F社は始業時刻を午前9時とし、終業時刻を原則として従業員が本件システムに打刻した時刻としていた。そして、この間の時間から昼休みの休憩時間1時間と従業員が「非労働時間」として申告した時間を控除した時間を実労働時間とみなして、時間外労働に対する割増賃金を算定して支払っていたところ、29年7月、このような方法によるXに対する割増賃金の支払に関して、青森労働基準監督署による調査を受けた。
▼ 29年8月、同労働基準監督署はF社に対し、Xに対する割増賃金の支払に関して、終業時刻の打刻のない日についてはログオフ時刻が所定終業時刻より30分以上遅い場合には、ログオフ時刻から所定終業時刻を差し引いた時間に対して割増賃金を支払うのが妥当であるとして是正勧告を行い、これを受けてF社は同年9月、Xに対して、未払割増賃金として11万6387円を支払った。
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