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#229 「日通岐阜運輸事件」岐阜地裁(再掲)

2009年3月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第229号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)

(高年齢者雇用確保措置)
第9条
 定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
 当該定年の引上げ
 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
 当該定年の定めの廃止

 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

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■ 【日通岐阜運輸(以下、G社)事件・岐阜地裁判決】(2008年9月8日)

▽ <主な争点>
再雇用基準を満たしていないことを理由とする会社の再雇用拒否

1.事件の概要は?

本件は、G社の従業員であったXが定年後に、同社がXの再雇用を拒否したことは、高年齢者雇用安定法に反する違法な再雇用規程に基づくもので、しかも再雇用拒否事由が不存在で、不当労働行為意思によるものであるから違法であり、無効であるとして、労働契約上の地位の確認を求めるとともに再雇用期間中の賃金等の支払いを、G社に対し求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<G社およびXについて>

★ G社は、日本通運(以下、N社)の完全子会社であり、貨物自動車運送事業等を行う会社である。

★ X(昭和22年1月8日生)は、G社の従業員として稼働してきた労働者であり、全日本建設交通一般労働組合(以下「建交労」という)の組合員で、建交労G社支部の執行委員長である。

★ G社は、就業規則において、定年を満60歳の誕生日の属する月の末日とすると定めており、Xは満60歳に達した平成19年1月の末日である同月31日をもって、G社を定年退職した。

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<G社の再雇用規程およびXが再雇用を拒否されるに至った経緯等について>

★ G社は、定年退職者の「再雇用規程」を18年4月1日に制定し、同規程は同日から適用されている。再雇用の対象者は「定年後も引き続き働くことを希望する者で、別に定める『再雇用の基準』に該当する者」(同規程第1条第1項)で、「新制度発足から5年間、定年までの勤務内容が一定基準以上にある社員を対象とする」(同条第2項)。

★ 再雇用は、満60歳の誕生日の属する月の翌月1日から開始し(同規程第2条第3項)、その期間は「定年に到達する日の翌日から各自が該当する厚生年金(定額部分)の支給開始年齢到達月の末日の前日まで」である(同条第1項)。また、再雇用契約は1年とされるが、再雇用期間満了までは契約更新が可能である(同規程第3条第1項)。

★ 厚生年金の支給開始年齢は、段階的に60歳から65歳まで引き上げられることになっており、19年4月1日から22年3月31日までの間は、支給開始年齢は63歳とされている。Xの場合、22年1月に満63歳になるので、そのときから定額部分の支給が始まる。したがって、Xが再雇用された場合の再雇用期間は、19年2月1日から22年1月30日までである。

▼ Xは18年10月中旬から11月中旬頃、G社のA部長より再雇用の意思の確認を受け、再雇用されて就労を継続する意思を表明した。しかし、同年11月末、同社のB課長がXに対し、「継続雇用できない」という旨を書面で通知し、再雇用を拒否した。

★ 上記の「通知書」には、再雇用の拒否理由として、以下のとおり記載されていた。
(1)「品質関係基準」をクリアーしない
 ・17年12月車両脱輪事故および18年10月車両間の接触事故を発生させた。
 ・お客様からの苦情として、業務効率面および協調問題で連絡を受けている。
(2)「人事評価基準」をクリアーしない
 ・人事評価(賞与)は、過去2年間のうちで2回(16年冬季、18年夏季)Cランク査定がある。

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<再雇用規程の制定に至る経過等について>

★ G社の平成6年4月の改定による再雇用規程は、「定年退職者で会社が業務に必要と認め、次の条件を満たす再雇用希望者を、審査の上採用し、嘱託とする。(1)心身が健全で、業務に耐えうる者。(2)在職中の勤務態度および成績が良好だった者。(3)会社が業務上必要と認めた者」と規定し、G社には再雇用すべき義務があるものとは規定されず、G社と再雇用を希望するという定年退職者の希望が合致したときに、再雇用がなされていた。

▼ 17年11月、高年齢者雇用安定法が18年4月から施行されることから建交労G社支部は、G社と雇用延長問題についての協定を結ぼうということになった。

▼ 18年6月頃までに、G社は現制度とほぼ同じ再雇用制度の案を作成し、過半数の従業員が加入しているG社労働組合に対して、意見を求めたところ、同組合はこれを受け入れる旨の回答をした。

▼ そこで、G社は同年7月、再雇用規程とその判断基準について、同組合と労働協約を締結した。その際、G社は同組合に対し、再雇用制度について、厳しい経営状態も踏まえ、当面制度発足から5年間定年前までの勤務の内容が一定基準以上である社員を対象とする制度として協定書を定めると説明した。

▼ 同年8月、G社は再雇用規程および再雇用基準を管轄の岐阜労働基準監督署に届け出た。そして、同月下旬から9月まで、本社カウンターにこの規程等の制定を知らせる文書を掲示し、上記規程を就業規則とともに本社事務所に、求めによりいつでも閲覧できるように備え置いた。

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