#559 「ビジネクスト事件」東京地裁
2022年3月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第559号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ビジネクスト(以下、B社)事件・東京地裁判決】(2020年2月26日)
▽ <主な争点>
営業成績不振等による降格・賃金減額、暴行等の言動による解雇など
1.事件の概要は?
本件は、B社の従業員として業務に従事していたXが同社に対し、(1)B社による解雇は無効であるとして、労働契約上の地位確認、(2)解雇から訴え提起日までの未払賃金および在職中の2度の降格に伴う差額賃金ならびにこれらに対する遅延損害金の支払、(3)訴え提起後の各月の未払賃金およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<B社およびXについて>
★ B社は、ITコンシェルジュサービス、CIO支援、内部統制(IT統制)導入支援等を業とする会社である。
★ Xは、2016年5月、B社との間で、「契約期間:期間の定めなし(試用期間3ヵ月)、賃金額:月額36万円、業務内容:人材開発部部長(新規・既存顧客開拓、人材リソース業務、人材開発事業推進)」との内容の雇用契約を締結した者である。
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<本件降格処分、本件暴行、本件解雇に至った経緯等について>
▼ 2016年12月、B社はXに対し、Xに求める職務遂行能力について、指導書により通知した。その内容は(1)入社から7ヵ月の売上・利益が0、契約件数(基本契約)0件、機密保持契約1件であり、人材開発部部長として、計画され、設定された目標到達がされていないことから、売上、利益を上げるための行動を実施すること、(2)営業活動の検証と報告がなされていないこと等を指摘するものであった。
▼ B社は2017年1月23日、Xに対し、「(1)人材開発部部長としての営業成績に対する不振(売上0、利益0)、(2)弊社部長としての信頼を損ねる振舞い(会社が潰れると大きな声で怒鳴る、社長のYに対して名誉毀損ともとれる言動)」を理由として、同年2月1日をもって、人材開発部部長の任を解き、同部勤務を命じる旨の辞令書を交付した。これにより、Xの月額給与は36万円から28万円に減額された(以下「本件降格処分1および賃金減額」という)。
▼ 同年2月、XはB社に対し、(1)同社従業員のZに対する恫喝的な言動をしたこと、(2)上記言動について注意した上長の腕をつかみ、業務を妨害したこと、(3)Zに対し、セクハラまがいの言動を行ったことについて認めるとともに、これらの行為が就業規則に違反するものであるとする始末書を提出した。
▼ 同年4月、XはB社に対し、パートナー会社からのクレームが来るような強引な依頼の仕方をしたことを認め、当該行為が就業規則に違反するものであるとする始末書を提出した。
▼ B社は同年5月1日、Xに対し、「(1)従業員に対するハラスメント行為を行い、注意後、反省文を提出してもなお、同様の行為を繰り返す、(2)パートナー会社からのクレームを受けるほどしつこい対応、(3)人材開発部部長としての営業成績に対する貢献(売上0、利益0)」を理由として、同日をもって、職務等級・グレードを引き下げる旨の辞令書を交付した。これにより、Xの月額給与は28万円から22万9950円に減額された(以下「本件降格処分2および賃金減額」という)。なお、本件降格処分2は、Xの職責や職務内容に変更をもたらすものではなかった。
▼ 同年5月1日、B社本社において、XはYに対し、手拳でその顔面を複数回にわたって殴打し、加療1カ月を要する顔面皮膚欠損創、鼻骨骨折、顔面打撲擦過創、頭部打撲、右手関節挫傷等の傷害を負わせた(以下「本件暴行」という)。
▼ 同月5日、B社はXに対し、本件暴行につき処分を検討するとして、同月8日からの自宅待機命令を出した。
▼ 同年7月1日、B社はXに対し、(1)本件暴行、(2)同僚、上司、取引先への粗暴な対応、(3)売り上げ未達成を理由として、同年8月1日付で普通解雇する旨通知した(以下「本件解雇」という)。
3.元社員Xの主な言い分は?
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