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#144 「国(新宮労基署職員国家賠償)事件」和歌山地裁(再掲)

2006年7月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第144号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【国(新宮労基署職員国家賠償)事件・和歌山地裁判決】(2005年9月20日)

▽ <主な争点>
労災請求窓口の対応と違法性/公務員個人の責任

1.事件の概要は?

本件は、Xが、勤務中にクモ膜下出血を発症した夫Kの労災申請の相談のために訪れた労働基準監督署(以下「労基署」という)の窓口で担当者であるYから、Xに労災申請を断念させようとして、労災申請は認められない旨誤った内容の教示をされた上、侮辱的言辞を浴びせられたため、うつ状態に陥った旨主張し、国に対しては国家賠償法第1条* 、Y個人に対しては民法709条(不法行為による損害賠償)にそれぞれ基づき、治療費、慰謝料および弁護士費用の賠償を求めたもの。

* 国家賠償法 第1条
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

2.前提事実および事件の経過は?

<X、国およびYについて>

★ Xは死亡したKの妻である。Kは長年、Nホテルに料理長として勤務していたが、平成12年3月、会議中にクモ膜下出血を発症して倒れた。その後、Kは意識を回復することなく、14年7月に死亡した。

★ 国は労働全般の安全、衛生および労働条件の改善を図るため、厚生労働大臣をして労働行政を担当せしめ、また、Yを雇用しているものである。

★ Yは国に雇用されている国家公務員であり、Xが労災申請の相談に労基署を訪れた当時、同署の第2課長であった者である。

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<本件相談から本件労災認定までの経緯等について>

▼ 12年7月、XはKの労災申請のため1人で労基署を訪れ、応対したYらに対して、「Kが会議中に倒れたこと、Kの毎日の出勤および帰宅時刻」等の事情を説明したが、Yは「Kの発症の前日および前々日が休暇であったこと、定例会議中の口論は異常な出来事とはいえないこと、出勤および帰宅の時刻についてのXの説明だけからではKの労働時間を確認できないこと」等を理由として、労災認定の見通しについて否定的な見解を示した(以下「本件相談」という)。

▼ 同年9月、社会保険労務士のAがXに代わり、労基署に対し、Kの労災給付の申請を行った。Xは同年10月頃、労基署から申立書を作成するよう言われたため、同年11月、労基署へ申立書を提出した。

▼ 14年11月、労基署長はKが当時の認定基準において業務と発症との関連性が強いと判断される基準(1ヵ月当たり80時間)を超えて、発症前の4ヵ月間において月平均81時間39分の時間外労働を行っていることから、特に過重な業務に従事していたものと認め、Kのクモ膜下出血が業務による発症である旨認定した(以下「本件労災認定」という)。

★ 本件相談がなされた時期と本件労災認定がされた時期との間である13年12月に脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され、本件労災認定は改正後の認定基準に基づき判断された。 >>> http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

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