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#305 「インフォプリントソリューションズジャパン事件」東京地裁

2012年2月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第305号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【インフォプリント ソリューションズ ジャパン(以下、I社)事件・東京地裁判決】(2011年3月28日)

▽ <主な争点>
業務指示命令に従わないこと等を理由とする解雇など

1.事件の概要は?

本件は、I社と労働契約(期間の定めのない労働契約)を締結したXが同社から受けた解雇は無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の地位の確認(請求1)、解雇無効を前提とする未払賃金(請求2)、未払賞与(請求3)および遅延損害金の支払いを求めるとともに、I社の従業員の行為を不法行為であると主張して、不法行為に基づく損害賠償等の支払い(請求4)を求めたもの。

なお、I社はXに対し、勤務時間に関する虚偽申告、時間外手当の不正受給、出張規程違反の交通費受領、貸与した携帯電話の私的利用、労働時間管理の手続を命じる業務指示命令の不服従を理由に、平成21年7月に普通解雇を通告している。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成19年9月、I社との間で営業職として期間の定めのない労働契約を締結し、営業本部第2営業部に配属され、小型プリンター等をビジネスパートナーであるT社を通じて顧客や他のビジネスパートナーに売るための営業活動に従事していた。

★ 当初Xは「営業報酬制度」の適用対象で、勤務時間の多くを事業場外で勤務し勤務時間が算定し難いとして事業場外みなし制が適用され、原則として所定勤務時間勤務したものとみなされ、厳格な労働時間管理はなされなかった。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ Xは20年8月、I社の組織変更に伴い、営業推進部に異動となった。その後、21年1月、営業統括本部第2営業本部MM営業部(上司はA部長)に異動となった。

▼ 上記異動後、Xは主として新規客先開発の仕事をするようになり、報酬や労働時間管理に変更が生じ、「営業報酬制度」の適用対象外となったことから、時間管理によって時間外手当が支給されることになった。

▼ 同年2月、XはA部長に対して、1月分の勤務ファイルを提出し、同部長はこれを承認したが、この勤務ファイルでは所定外労働時間が55時間30分、法定時間外労働時間が47時間30分となっており、36協定(I社の時間外限度時間は45時間)に反することが人事部より指摘された。

▼ 同年3月、Xは2月分の勤務ファイルを提出したが、これには事前申請のない時間外労働が6日間、所定外労働が56時間記録されていた。A部長はXに事前申請のない時間外労働の具体的な内容を報告することを指示したところ、Aはミーティングやプレゼンテーションのための資料作成であり、残業を認めないのであれば、サービス残業の強要に該当するから、労働基準局および組合等に提出すると回答した。

▼ A部長はXに対し、Xが上記指示に従わないとして、就業規則上、I社が必要とする手続、届出、報告を拒んだ場合は、服務規程違反になる旨の注意書を、さらに、上記報告をしなかったとして、改善が見られないときは就業規則に照らして、相応の措置をとる旨の警告書を出した。

▼ Xの勤務管理、交通費の支出や携帯電話の私的利用等についての問題が生じたため、同年4月および5月の2回にわたり、XとI社との面談が行われた。

▼ 同年5月末頃、XはI社の親会社の内部通報制度に対し、I社において、上司および人事担当者からハラスメントの被害を受けているとの通報を行い、上記通報制度の調査担当となったサービス技術本部長のBはXおよび人事部長らから事情聴取を行った。

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