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#313 「日通岐阜運輸事件」岐阜地裁

2012年6月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第313号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「法」という)

(高年齢者雇用確保措置)
第9条
 定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
 当該定年の引上げ
 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
 当該定年の定めの廃止

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■ 【日通岐阜運輸(以下、N社)事件・岐阜地裁判決】(2011年7月14日)

▽ <主な争点>
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項の私法的強行性など

1.事件の概要は?

本件は、N社の従業員で平成19年1月31日をもって満60歳の定年退職日を迎えたXが同社に対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしたところ、N社がこれを拒否したため、同拒否の意思表示は解雇権濫用法理の類推適用によって無効であるから、同社との間において従前と同様の雇用契約を延長する契約が成立したなどと主張して、N社に対し、同年2月1日以降22年1月31日までの間、雇用契約上の権利を有する地位のあることの確認を求めるとともに雇用契約上の賃金請求権に基づく19年2月1日以降の賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、貨物自動車運送事業、貨物自動車利用運送事業等を業とする会社である。

★ X(昭和22年生)は、平成4年6月、N社との間において、従事する業務内容をコンテナー集配業務、基本給与額を日給8200円(家族手当1万6000円)などとする内容の社員労働契約を締結した。

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<N社における継続雇用制度の導入等について>

▼ N社は、平成18年7月頃、法の改正を受けて、同社の労働者の過半数で組織する労働組合であるN社労働組合との労使協定により、法9条1項2号所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る事項を定めた「再雇用の基準に関する協定書」(以下「本件協定書」という)を締結した。ただし、本件協定書においては、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は定められなかった。

▼ N社は本件協定書に基づき、再雇用規程および「再雇用規程1条の『再雇用の基準』ならびに同3条の『契約更新基準』」(以下「再雇用基準」という)を制定し、同年8月、これらを労働基準監督署に届け出た。

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<本件協定書、N社就業規則等について>

★ 本件協定書には、以下の定めがある。なお、再雇用規程にも以下とほぼ同一の定めがある。

第1条(再雇用制度)
N社は定年後も引き続き継続的に働くことを希望する者で、別に定める『再雇用の基準』に該当する者について、この規程ならびに就業規則の該当部分にもとづき再雇用する。ただし、第5条にもとづき、短時間勤務者として再雇用する場合がある。

第4条(再雇用の労働条件)
再雇用の労働条件は、下記のとおりとする。
賃金:定年時の賃金にかかわらず、再雇用後の職務内容等を勘案し個人別に時間給で定める。(略)

第5条(短時間勤務者)
N社は再雇用を行う場合に、次に掲げる場合には短時間労働者として再雇用することがある。
(2)再雇用基準を満たす者のうち、本人の定年前の勤務実態や経営環境等を踏まえ、N社の判断にもとづいて短時間勤務を指定した場合

第6条(再雇用の手続き)
(1)N社は再雇用を希望する者に対し、定年予定日の2ヵ月前までに再雇用の基準に関する事実を本人に示し、再雇用の可否を判断の上、結果を本人に通知するものとする。

★ 再雇用基準には、以下の定めがある。

第1条 『再雇用の基準』は、勤務意欲基準、勤務態度基準、品質関係基準、健康関係基準、職場配置基準、人事評価基準の6項目とし、すべての基準をクリアーする者を再雇用(短時間勤務を含む)の対象者とする。

★ N社就業規則には、以下の定めがある。

第29条 N社は社員が次の各号の一に該当したときは退職とする。

1.定年に達したとき。定年は満60歳とし、退職日は年齢計算に関する法律の規定により計算して定年に達した日の属する月の末日とする。
ただし、N社が業務に必要と認めた場合にかぎり、再雇用規程に基づき再雇用とする。

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<本件再雇用拒否等について>

▼ Xは定年後も引き続きN社において継続的に働くことを希望していたが、同社は18年11月、Xに対し、「通知書」と題する書面をもって、以下の理由で継続雇用できないことを通知した(以下「本件再雇用拒否」という)。
(1)品質関係基準をクリアーしない。
18年9月26日および同年10月7日の業務命令(運行前点呼)を拒否した。
お客様からの苦情として、業務効率面および協調問題で連絡を受けている。
(2)人事評価基準をクリアーしない。
人事評価(賞与)は、過去2年間のうちで3回(16年冬季、17年夏季、18年夏季)Cランク査定がある。

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